NaturaRhythm

まるで家具の一部のように、暮らしの中に自然に溶け込み心地よく流れるヨーロピアン・プレミアム・サウンド。今現在ヨーロッパで流行となっているオーディオストリーミングの普及とともに一大ムーブメントとなっている、ポスト・クラシカル、エレクトロニック、アンビエントなどのアーティストを日本に紹介する“NaturaRhythm(ナチュラリズム)”キャンペーン開催中!

 


■ポスト・クラシカル ~静かなムーヴメントをおこすアーティスト達に世界が注目!~

 ここ数年、ポスト・クラシカルのシーンで活躍するアーティストたちの多くが、続々とドイツ・グラモフォンやデッカからアルバムをリリースしている。マックス・リヒター、ヨハン・ヨハンソン、ルドヴィコ・エイナウディ、オーラヴル・アルナルズ、ユップ・ベヴィン……いずれも従来のクラシック音楽とは一線を画す作品たちが、歴史と伝統を誇る名門レーベルからリリースされ、若い世代の音楽家たちにも影響を与えながら、いまやクラシック界のメインストリームのひとつと言えるほどに存在感を増している。

 そんな彼らの音楽をひとことで説明すると、現代的なエレクトロニクスの手法と、アコースティック楽器によるサウンドを融合させたインストゥルメンタル・ミュージックということになるだろう。ひんやりとしたデジタル・ミュージックならではの肌触りと、あたたかみのある弦楽器やピアノの美しい響きが織りなす静謐な世界観に、私たちは魅了される。「家具の音楽」を提唱したのはサティだが、彼らの音楽は21世紀における「家具の音楽」と言えるかもしれない。日々の暮らしの何気ない風景の中に溶け込み、ふと気づくとそこにあって、心に安らぎを与えてくれる音楽。その佇まいから「ナチュラリズム(自然派)」ともカテゴライズされ、ヨーロッパを中心に静かなムーヴメントとなっている。 (文 原典子)

 

LUDOVICO EINAUDI
9月公開の福山雅治主演・是枝裕和監督作「三度目の殺人」の音楽を担当!

(C)Decca/ Ray Tarantino

 ヨーロッパでは既に絶大な人気を誇る作曲家/ピアニスト、ルドヴィコ・エイナウディの音楽性と特異なポジションについてまずは少し触れておきたい。ルチアーノ・ベリオに師事し、現代音楽作曲家としてキャリアを始めたエイナウディだが、クラシックの作曲の範疇に留まる事は彼の理想とする音楽像からはかけ離れていた。特に少年時代に触れたビートルズには非常に感銘を受け、忘れられない記憶として刻み込まれていた様だ。クラシックの正統な教育を受けながら、自らの興味の対象を自在に取り入れて行き(ライヒらのミニマルや民族音楽といった要素にも及ぶ)現在の独自のスタイルに辿り着いた。コンポーザーピアニストであり、様々な音楽要素を独自にブレンドしていった点、また映画の世界でもひっぱりだこという点でもマイケル・ナイマンとある種近い存在と言えるかもしれない。

 様々なリスナーから愛されるエイナウディの音楽は、配信売上がCD売上をはじめて上回った作曲家として、さらに世界で最もストリーミングされたクラシック作曲家として知られている。また特筆すべき事として、エイナウディの音楽はダニエル・ホープを始め、オランダの注目すべきハーピスト、ラヴィニア・マイヤーや指揮者シャイーの妹、チェチーリア・シャイーといったクラシックの演奏家にも度々取り上げられており、その音楽は正に垣根を超えた広がりを見せている。映画の仕事として特に有名なのは、フランス映画『最強のふたり』だろう。日本でも非常に大きな話題となったが、この映画はエイナウディの音楽無くして語る事はできない。

 そんなエイナウディの音楽に初めて触れる方はぜひ『エッセンシャル・エイナウディ』をお手に取ってみて欲しい。HQCDの高音質で2枚組に渡って多くの代表作品を愉しむ事が出来る。そして『時の移ろいの中で』は日本に於いてもポスト・クラシカルシーンや、耳効きの間で非常に注目された1枚だ。精緻な楽曲構成と、抑制された美しい旋律、様々な民族音楽のエッセンスが融合したエイナウディの面目躍如たる存在感を示している。

 最新アルバム『エレメンツ』はエイナウディの自宅スタジオで制作された。エイナウディ・バンドのメンバーやダニエル・ホープといった奏者達と共に、ロバート・リポックがエレクトロニクスでクレジットされているのも注目したい。リポックはエレクトロニカ~ポスト・ロックのトゥ・ロココ・ロットのメンバーとしても知られており、エイナウディの音楽性の幅広さを伺い知る事ができる人選と言えるだろう。土、水、空気、火という自然の四大元素をテーマとし、カンディンスキー、クレー、クリムトらの作品からもインスパイアを得た本作はプライヴェートな空間で制作された事もあってか、これまでの作品と異なるアンビエンスや音響構成を聴く事が出来、またも新境地を見せてくれている。

最新アルバム『エレメンツ』収録曲“Night”

 この4月に来日公演も終え、ここ日本でもいよいよエイナウディの音楽が大きな話題となることだろう。  (タワーレコード新宿店 池田敏弘)

 

ルドヴィコ・エイナウディ LUDOVICO EINAUDI
1955年イタリア生まれ。映画、CMなどでエイナウディの名前を聞かない日はないと言えるほどヨーロッパでは絶大な人気を誇る知的コンポーザー。日本で は、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督作映画『最強のふたり』(2011)のスコアを担当したことで有名。

 

OLAFUR ARNALDS
【坂本美雨インタヴュー】 故郷アイスランドへの旅から生まれた新作~坂本美雨が惹かれる「暮らしの中の音楽」~

(C)Marino Thorlacius / Mervury Classics

 ポスト・クラシカルのアーティストを数多く輩出し、シーンの中核をなす土地、アイスランド。今回は、そんなアイスランドの音楽が大好きだという、シンガーの坂本美雨さんにお話を伺うことができた。なかでもオーラヴル・アルナルズやヨハン・ヨハンソンがお気に入りとのこと。アルナルズといえば、坂本龍一のヨーロッパ・ツアーでフロント・アクトを務め、東日本大震災の被災地支援プロジェクト「kizunaworld.org」にも曲を提供している。

 「父が一緒に活動をしているのを知らず、普通にiTunesで見つけて、いいなあと思って聴いていました(笑)。はじめて聴いたのは、2011年の『Living Room Songs』というEP。オーラヴルのアパートメントのリビングルームで録られた音楽で、その親密な空気感がよく出ています。ピアノの音色がなんとも言えずいい味わいで、すごく好き。彼は自分でミュート・ピアノを作っているんですよ。安いピアノを買って、弦とハンマーの間に布を挟んで、ぬくもりのある音が出るように加工しているんですって」

OLAFUR ARNALDS Island Songs ユニバーサル(2016)

 アルナルズの最新作『アイランド・ソングス』には、故郷アイスランドを旅し、それぞれの土地で出会ったアーティストたちとのコラボレーションから生まれた音楽が収録されている。アーティストといっても、引退した教師や地元のブラス・トリオなど、「普通の人々」とのコラボレーションである点がユニークなアルバムだ。

坂本美雨

 「アイスランドに行ったときに感じたのは、一般の人とミュージシャンとの境目があまりないということ。誰もがみんな趣味で音楽をやっていて、そのレベルがとても高いんです。特別な楽器を持っていなくても、ムームのように身の回りにあるものを楽器にしたり。芸能界みたいなものがなくて、音楽業界も小さいので、ビョークやシガーロスといった有名なミュージシャンはほんの一握りいるものの、そのまわりにたくさんの無名なミュージシャンたちがいて、日々新しい音楽を作り続けている。アイスランドはクラシック音楽の伝統がないぶん、新たな解釈や、新たな音楽を取り入れて融合させることに抵抗がないのかもしれませんね。そこから今、クラシック音楽の新たなシーンが生まれたということは、とても興味深いです」

 アイスランドの音楽は、坂本さんが聖歌隊のCANTUSとともに作っている音楽とも共通したものを感じさせる。

 「サウンド・プロデュースをしていただいているharuka nakamuraの感性ともつながるのかもしれません。アイスランドと日本、どちらも島国で独自の文化を持っているという点で似た部分がありますよね。私はアイスランドのカルチャーがほんとうに好きなので、彼らような音楽を作ってみたいと憧れています」 (取材・文 原典子)

 

オーラヴル・アルナルズ OLAFUR ARNALDS
1986年アイスランドに生まれ、2007年にデビュー・アルバム『Eulogy for Evolution』をリリース。国際的なファンを獲得し、クラシック、ポップ、アンビエント/エレクトロニカの影響を独自の音楽言語に昇華し、ジャンルレスに活躍している。2011年、坂本龍一のヨーロッパ・ツアーでフロント・アクトを務め、東日本大震災の被災地支援プロジェクト、 kizunaworld.orgのために新作を提供している。

 

JOEP BEVING
“ポスト・クラシカル界最大の新人”の登場!~複雑な感情のためのシンプルな音楽~

 2メートルを超える巨躯と立派に蓄えられた髭。しかしその容貌からはあまりにかけ離れた、繊細にして美麗なピアノの音楽。「ジェントル・ジャイアント(優しき巨人)」の異名を取るオランダのコンポーザーピアニスト、彼の名はユップ・ベヴィン。

 アムステルダムの世界的CM制作会社で働く傍ら、ネオ・アコースティック・フュージョン・バンドのスキャリマティック・オーケストラでキーボードを担当という経歴を持つ。しかし長女誕生を機にバンドを脱退。脱退後は自宅での創作活動へと転向。エレクトロ的な作風を経て現在のピアニズムに行き着く。

 彼の音楽の特徴は、極めてシンプルであり内省的なピアノ音楽であるということ。最小限にまで剥ぎ落とされたシンプルな音構造は聴く者の心を捕え涙を誘う。時にセンチメンタルに、時にメランコリックに、あるいは時に激情的に奏でられるピアノの調べ。その美しさはSpotify上でも高く評価され、2015年に自費リリースした1stアルバムは異例の6000万再生を記録。瞬く間に世界中で高い評価を獲得し、二晩に渡るコンセルトヘボウでのライヴも完売するなど次々と成功を収める。

JOEP BEVING Prehension ユニバーサル(2017)

 そしてこの2017年4月、名門ドイツ・グラモフォンと契約し2ndアルバム『プリヘンション』を引っ提げ、満を持してのメジャー・デビュー。名実ともに(あるいは文字通り)、ポスト・クラシカル界“最大の新人”の登場だ。美麗ピアニズムがオランダからついに世界へと羽ばたく。

 彼の瞑想的で癒しのピアノはヨーロッパにとどまらずおそらく世界中の人々の耳に届き、その全ての人々を感動させることだろう。

 間違いない、このメジャー・デビューはまさに世界規模の大事件なのである。 (タワーレコード本社 板谷祐輝)

 

ユップ・ベヴィン Joep Beving
新世代をリードするストリーミング・アーティストとして注目のオランダ人。Spotifyのピースフル・ピアノ(230万フォロワー)など世界のメジャー・プレイリストでその存在を確立。今ヨーロッパ一の癒しのピアノと言えば、彼と言えるほど人気のコンポーザー。よどみなく紡がれた音空間は、幅広い人々の心を瞬時にとらえ、とてもリラックスできる瞑想的な音楽を展開。

 

JOHANN JOHANNSSON
『メッセージ』に続き、『ブレードランナー』の続編の音楽を担当することが決定!

 突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船と人類とのコンタクトを描いた米作家テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」。この原作をもとに従来のSFの枠組みを超える重厚なドラマに仕立て上げられた映画『メッセージ』の劇中音楽を手掛けたのがアイスランドを代表するポスト・クラシカルの旗手、ヨハン・ヨハンソンだ。

 これまでも様々な映画/演劇音楽を手掛けてきた彼の出自は、他のポスト・クラシカルの作曲家と比べると少し異質なもので、自身のキャリアをロックバンドのギタリストから始めている。アイスランドという特殊な音楽土壌で、自身の主宰するレーベル「キッチンモーターズ」を通じて様々な音楽に触れてきた彼は、2002年に発表したソロ・デビュー作『Englabörn』以降、クラシック音楽とエレクトロニカ/アンビエントを折衷した独自の音楽性と情感の機微を捉えるような表現で、ジャンルを越えた現行のアーティストにも大きな影響を与えている。

JOHANN JOHANNSSON Orphee Deutsche Grammophon(2016)

 そんな彼の最新アルバムが昨年、クラシックの名門であるドイツ・グラモフォンからリリースされた『オルフェ』。ギリシャ神話の原典のひとつである詩人オウィディウスの『変身物語』をモチーフにした今作は、6年もの歳月をかけて素材の脱構築/再構築を繰り返し、楽曲そのものに変化/成長を与えることを止めなかったという。弦楽四重奏、弦楽オーケストラ、エレクトロニクス、ドローン、オルガン、ピアノ等で構成された楽曲は荘厳でスタジオ録音ならではの臨場感溢れるものである一方、ジャン・コクトーの映画『オルフェ』にインスパイアされたというラジオの短波放送のようなノイズも時折挿入され、単なる室内楽で着地していないところが彼らしい。また、フレーズのループを用いている事で、作品に通底して感じられる「悲しさ」のようなものが強調され、最終曲である『シアター・オブ・ヴォイセズ』の讃美歌でついにそれが報われる大きな流れは、ヨハン自身の抒情詩を受け取ったかのような印象を受ける。 (渋谷店 山岡弘明)

 

ヨハン・ヨハンソン JOHANN JOHANNSSON
1969年アイスランド生まれ。数々の受賞歴に輝く作曲家/ミュージシャン/プロデューサ。電子音とクラシックのオーケストラ・サウンドを融合させたヨハ ンソンの音楽は多種多様。映画音楽も数多く手がけジェームズ・マーシュ監督『博士と彼女のセオリー』(14)でゴールデン・グローブ最優秀作曲賞も受賞している。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と4本目のコンビ作となる『ブレードランナー』の続編(2017年10月全米公開予定)の音楽も担当、映画界でも活躍する人気コンポーザーである。

 

MAX RICHTER
新作アルバムをリリースするたびに斬新なアプローチに挑む、ポスト・クラシカルの最重要作曲家

 テクノやアンビエントにとってクラシックは欠かせない。なんて言うと「何言ってんだ、コイツ」と思われる人もいるかもしれない。だがしかし、彼らが用いるミニマルやドローンといった手法はクラシック(現代音楽)の作曲家が編み出した新しい手法だった。それらが生み出されてから半世紀以上が過ぎ、既にクラシックと電子音楽の垣根は無いに等しい。そんな現代と古典の融合による音楽の最新形態が“ポスト・クラシカル”というジャンル。その生みの親の一人が、ここで取り上げるマックス・リヒターだ。(ポスト・クラシカルという用語を使い始めたのも彼が最初)リヒターは現代音楽の奇才ルチアーノ・べリオに師事したクラシック畑出身。ストリングス(弦楽合奏)とエレクトロニカ(電子音楽)の融合が核となるポスト・クラシカルの申し子ともいうべき境遇で学び、その道を切り開いてきた。クラシックの基礎知識(和声法)と電子楽器の再生技法を共に熟知した彼ならではの高性能な音楽は、西洋音楽の轍に沿ったものといえる。が、リヒターの評価はクラシック音楽が連綿と引き継いできた“静謐”をテクノに持ち込んだ事にこそあるといっていい。これまでスタンディングで聴くモノであったテクノをじっくりと“聴き込む”音楽に昇華させた彼のスタイルは、瞬く間にヨーロッパ中を席巻。映画『シャッター・アイランド』での音楽担当やレディオヘッドにも影響を与えるなど、今なお影響は広がりを見せている。そんな彼の最新作は、英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンで上映されるバレエ「ウルフ・ワークス」のために書かれた音楽をまとめた1枚だ。

 ここまで読むと何やら難しそうな音楽か…と思われるかもしれないが、一度耳にしていただければ、その“人に優しい”音に癒されること請け合い。おそらく、これまで人類が体験した音楽でも、最も間口の広い音楽であることは間違いない。奥もトコトン深いが。 (渋谷店 大場健)

 

マックス・リヒター MAX RICHTER
1966年ドイツ生まれ。 新作を発表するたびに斬新なアプローチでリスナーから根強い人気を獲得する世界で最も売れているコンポーザー、マックス・リヒター。村上春樹の英訳テキストを用いた『Songs From Before』(2006)、携帯電話の着信音を変奏曲形式で作曲した『24 Postcards in Full Colour』(2008)などの作品の他、映画やバレエのシーンにも楽曲を提供するなど活躍の場は限りなく広い。