INTERVIEW

監督・吉田大八と音楽・渡邊琢磨が語る、映画『美しい星』―行間を縫い、密度を促す音楽。映画が蹂躙される歓喜さえ…

映画『美しい星』 対談:吉田大八×渡邊琢磨

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  • 2017.05.23
(左から)吉田大八、渡邊琢磨
 

 原作・三島由紀夫/監督・吉田大八/音楽・渡邊琢磨。三つの文体が併走し、やがて一つの歌を奏でる話題の新作映画『美しい星』。「聴いて、染み込ませてから観るのも一考」(監督談)というOST盤。制作をめぐる大八×琢磨の切磋ぶりを当人同士がduoで語る!

渡邊琢磨 美しい星 melodypunchrecords(2017)

吉田:最初に編集室でラッシュを観てもらって、まだ迷いながら編集してる最中だったから具体的な発注はできなくて、2時間近く話したけど、お互いに言葉尻を捉えられないようにって、なんか“慎重なお見合い”みたいだったよね(笑)。ここで約束しちゃったらまずいぞ…って。「ではこの先はお楽しみに」という感じで別れたような記憶があります。

渡邊:ラッシュを拝見した最初の段階から音楽をとてもよく想起できました。もちろん、出来たラフを大八監督に投げた後に、いくらか厄介なハードルがありましたが(笑)。

吉田:僕は、琢磨さんの出す答えをまず聴いてみたかったんですね。とにかく一回預けますので、何か好きな服を着せてみて下さい、みたいな。でも、ここまで途中の答えを見せてもらえないことになるとは(笑)。

(c)2017「美しい星」製作委員会
 

渡邊:音楽作業の折り返し地点の頃に、監督が「目隠しをされてるようだった」と仰ったんですよ。同様に私のほうでも「どう着地するんだろうなぁ…」という良い意味で“先が見えない感”があった。とにかく、今回は時間がなかったもので…。

吉田:そんなに短い方じゃないと思うよ(笑)。

渡邊:体感としてね(笑)。ただ、その少々タイトな過程においても“自分にはこの場面はこう視える、こう演出してみたい”という野望もあって、それを敢えて強調して突っ走りたい気持ちもあった。とくに大杉家の覚醒シーンは音楽的に場面不相応というか、ダンス・ミュージックというかな。あれも、とにかく“こう視えてます!”という、自分の先走っている感じをして、ああいう結果になったと思うので。

吉田:ダダダッ…kickって言うんですか? あれにはとにかく驚きました。あそこは当初、琢磨さんの『ローリング』(監督:冨永昌敬)のサントラに合わせて勝手に編集してて、ほぼ完璧に仕上がってたんですよ。

渡邊:あそこは尺は長いけどセリフがない。シークエンスが次から次へと繋がってゆくので、劇伴的にここは一つの大きなポイントになると思ってました。気負いはなかったけど、ラッシュを観て、ここに『ローリング』の劇伴がテンプトラックとして当たってると、金沢の海岸にみえる円盤というより、水戸の荒野を想起してしまうので(笑)、反旗を翻す意味で「大八監督、ここはUFOですよ! 覚醒ですよ! 」って、もう意地でもという思いはありましたね。

吉田:そのひっくり返される感じが痛快でした。まさかああいうもの(《Awakening》)が上がってくるとは。あれを聴いた瞬間、「そうか、この曲がかかるような映画を創ってるんだ!」って、たどり着くべきステージが見えたような気がしました。大袈裟じゃなく、それくらいの高揚感がありましたね。当然、編集はやり直さなきゃいけなかったけど。

渡邊:ただ、独断でこういう今回のような音楽を捻りだすことはないと思うので。そこはやはり監督のアイディアとか、やりとりの中から出来た“共同作業の凄み”だと思うし。「まだ、何かあるはずだ」という監督のダメだしも新鮮だったし。実際に「まだ、あった!」「ここまでやっちゃってもいいんだ」というような、自分ではあまり作らないタイプの音楽も出てきて、それが結果的に“音楽が立っている”ようなシーンに繋がったという面もありますよね。

吉田:今回はホント、音楽に映画が気持ちよく蹂躙されたと思っています。でもその蹂躙されっぷりがこの映画の持ち味になってると思いますね(笑)。

渡邊:でも、明らかに仕掛けたのは大八監督のほうですからね(笑)。《Messenger》にしても独断では民族音楽的に作らないですよ。

 


映画『美しい星』

監督:吉田大八
原作:三島由紀夫「美しい星」(新潮文庫刊) 
音楽:渡邊琢磨
劇中曲:「金星」 作詞・作曲:平沢進/歌:若葉竜也、樋井明日香
出演:リリー・フランキー/亀梨和也/橋本愛/中嶋朋子/佐々木蔵之介/ほか
配給:ギャガGAGA★ (2017年 日本 127分)
(c)2017「美しい星」製作委員会
gaga.ne.jp/hoshi/ 

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