INTERVIEW

fox capture plan 『UИTITLƎD』 果敢な挑戦によって進化し続けるピアノ・トリオから、早くも届いたニュー・アルバム!

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  • 2017.10.05
fox capture plan 『UИTITLƎD』 果敢な挑戦によって進化し続けるピアノ・トリオから、早くも届いたニュー・アルバム!

この一年、かつてないペースで作品を届けてきたピアノ・トリオから早くも新作が! 成熟と挑戦のあとが刻み込まれた新しい彼ら、新しいジャズの形がここにあり!

慌ただしい時間のなかで冴え渡る感覚

 1月にアルバム『FRAGILE』を発表したばかりだというのに、fox capture planのリリース・ラッシュが止まらない。3月には劇中音楽を担当したドラマ「カルテット」のサントラを、7月にはディズニー音楽のカヴァー・アルバム『ROCK IN DISNEY~fox capture plan』をリリースし、間髪入れずに届いたのが6作目のフル・アルバム『UИTITLED』。ちなみにその間には、現在NHKでオンエア中のドラマ「この声をきみに」の劇中音楽も作っている。〈いつ何を録ったか覚えていない〉と笑いながらも、これまで以上に充実の日々を過ごす3人に、最新作の手応えを訊いてみた。

fox capture plan UИTITLED Playwright(2017)

 「〈カルテット〉のテーマ曲を再録して入れようとか、ざっくりとしたヴィジョンはあったんですけど、ゆっくりアルバムの構想を考えようかと思った時に、ディズニーのカヴァーやNHKのドラマの話が来て、それどころではなくなった(笑)。すべて同時進行で、ディズニーの曲を録りながら、余った時間にアルバムの曲を録ってました。『FRAGILE』の時に作ったストックが結構あって、一曲一曲にすごく強い個性があったので、それを軸に〈他にこういう曲があったらいいな〉というものを足していった感じです」(岸本亮、ピアノ)。

 「それって2枚目の『BRIDGE』と作り方が似てるんですよね。あの時も録り貯めていた曲があって、新曲を録って合わせたので」(井上司、ドラムス)。

 「そうそう。『BRIDGE』は悪く言えば〈繋ぎ〉の作品とした作ったアルバムだったんですけど、結果的にすごく好きな作品になって、ライヴでのキラー・チューンがたくさん入ってる。『UИTITLED』もそういうアルバムになっていくんじゃないかな?という予感がします」(岸本)。

 前作『FRAGILE』は、プログラミングされたビートやシンセサイザー、エフェクトを大胆に取り込んだ野心作だったが、今作の1曲目“Cross View”では生楽器と電子音の精密なアンサンブルをさらに推し進めている。fox capture planらしさ全開の疾走感漲るジャズ・ロック・チューン“行雲流水”“繰り返される時空のワルツは千の夢を語り”がそれに続き、過激でエフェクティヴなドラム音が印象的な“No End”、ループするタイトなビートが陶酔感を誘う“seafrost”“UNTITLED SCENES”など、さながら過去と未来のfox capture planが共存しているかのような力強い楽曲がずらりと揃った。

 「いままでっぽい曲もありつつ、チャレンジングな曲もあって、都会的なシーンに合いそうなアーバンな雰囲気の曲もある。おもしろいアルバムになりました。ヴァラエティーに富んでるし、時間的には無理やり作ったんですけど、そうとは聴こえないところがいいなと思ってます(笑)。新しい試みとして、ドラムにもエフェクターをかけてるんですよ。『FRAGILE』の時もちょっとやってるんですけど、今回はもっと大胆に」(カワイヒデヒロ、ベース)。

 「“No End”のスネアとか、ミックスの時にがっつり音を変えてます。“UNTITLED SCENES”も、シンバルをスネアの上に乗せて機械っぽい音にしてますしね。考えて音を作るタイプの人間じゃないので、直感で全部やってるんですけど、うまくいったと思います」(井上)。

際立つ2つのピアノ・バラード

 なかでもひときわ耳を引くのは、コールドプレイ“Viva La Vida”のカヴァー。これまでもアルバムに1曲ずつ、アークティック・モンキーズやミューズ、レディオヘッドらロックのカヴァーにトライしてきた3人が、この超有名曲を流麗なピアノ・バラードへと昇華させている。これはカルト的人気を集めたTVドラマ「カルテット」からのセルフ・カヴァー“Theme from quartet”と並んで、fox capture planを新たに知る人のための最適な入り口のひとつになるはずだ。

 「コールドプレイは以前からカヴァー候補に挙がっていたんですけど、改めて“Viva La Vida”を聴くと、メロディーがすごくきれいだなと思ったので。イントロやリフが印象的な曲で、そのままやるのはおもしろくないから、バラードっぽく変えてみました」(カワイ)。

 「カヴァーする時って、リズムを含めてその曲のアイデンティティーを尊重する場合と、むしろ変えたほうがいいだろうっていう場合の2パターンあって、“Viva La Vida”は完全に後者ですね。『カルテット』はドラマの反響がすごく大きくて、それがきっかけで僕らを知ってくれた人も多いみたいで、関われて本当に良かったと思います。原曲はホーンやギターが入ってるんですけど、今回はストリングス・クァルテットで再録しました。僕らの代表曲のひとつになり得る曲だし、オリジナル・アルバムにも入れるべきだなと思ったので」(岸本)。

 アルバム後半には、肩の力を抜いたジャム・セッション“PLASTIC JAM”や初期の代表曲“疾走する閃光”に通ずる要素を持つ“Real, Fake”と、めまぐるしくシーンが変わってゆく。そして最後に待ち受けているのは、前作の制作時に録音してストックしておいたというピアノ・バラード“Pain”だ。従来のfox capture planにはなかったダークでエモーショナルな感情がふつふつと湧き上がる、オルタナやラウド・ロックのリスナーにも訴求力抜群の壮絶に美しい一曲。これは彼らが新たな可能性を切り拓くうえで、重要な曲になるはずだ。

 「“Pain”はナイン・インチ・ネイルズの『The Downward Spiral』というアルバムの最後に入っている“Hurt”にインスパイアされて。ああいう曲を作りたかったんですよね。メロディーがすごくきれいなバラードなんだけど、やたら暗くて裏がありそうな、〈病んでる感〉を出してみました。特に何もないんですけど(笑)、いまの自分ならそういう曲を書けるんじゃないか?と思ったので」(岸本)。

 

新しいジャズの形を求めて

 ジャズとロック、伝統と革新、お茶の間とクラブ、知性と野生など、対照的なものの間を激しく揺れ動きながら、ものすごいスピードで楽曲を量産してゆくfox capture planの歩みは、現代のピアノ・トリオのひとつのロールモデルと言ってもいい。イージーリスニングとしての聴きやすさと精神的な深みを兼ね備えた、その音楽が持つ可能性は無限大だ。

 「数年前に比べると、ピアノがメインでいるバンドはすごく増えましたよね。でも僕たちのやり始めたことが先頭だとして、それをやり続けるのは違うのかなと。同じような人たちが後ろに続いてきて、もう一回後ろに並び直すような感じになっちゃうのは嫌だし、違うレーンに移りたいなと思うんですよね。今回はこんなにシンセを使う人たちはまだいないかも知れないなというぐらいガッツリ入れた曲もあるので。新しいサウンドに聴こえてくれたら嬉しいです」(カワイ)。

 「周りと同じことをやると、飽和して、自分たちだけじゃなくてシーン自体が衰退してしまうので。ジャズを演奏する技術が、自分たちのベーシックのひとつにあるんですけど、それプラス他のジャンル、打ち込みの音楽やロックや、そういうものをヒントにしながらいかにおもしろい音楽を作っていくか。それが新しいジャズの形なんじゃないか?って、日々考えてます。まだまだやりようはあると思うし、引き続きおもしろいことを考えていきたいと思いますね」(岸本)。

fox capture planの作品を一部紹介。

 

fox capture planが参加した近作。

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