大人が真面目に遊んだ結果……とでも総括すべきか。『Morning Phase』(2014年)でグラミーの最優秀アルバム賞を獲る前に着手し、アルバム3枚相当分の音源を作った末にようやく完成したというのがこちらの新作である。しかも内省的だった前作から一転して、今回のベックは徹底してポップ。かつてなくポップ。楽観モードの簡潔な表題が並ぶトラックリストを眺めているだけで気分もアガるが、軽くディスコなタイトル・トラックや“Seventh Heaven”然り、ネプチューンズと組んだと言われても驚かない“Wow”然り、ファンキーでアップビートなナンバーが並ぶ。何たって彼がコラボ相手に選んだのは、引く手数多のグレッグ・カースティン。2人で膝を突き合わせ、1曲ごとに数十曲分のアイデアを詰め込み、無数の音の層を重ね、時にはサイケな衣で包んだ楽曲群はキャッチーなのに掴みどころがなく、複数の物語が同時進行しているかのようにマジカルな体験を提供してくれる。
完全無欠のポップアルバムが遂に! 3年半ぶり通算13作目のニューアルバム。すでに昨年からゲームのサントラやCMなどでも使用されており、まだベックを知らない方もこのアルバムで虜になるはず。前作『Morning Phase』では第57回グラミー賞にて最高賞の〈最優秀アルバム賞〉を含む全3部門を獲得したが、多くのファンがリリースを切望していた今作には、“Dear Life”をはじめ、お馴染み超ポップな“Dreams”のニュー・ミックス、主要メディアが軒並み絶賛した“Wow”など、濃すぎる一枚。しかも今回は日本先行リリース。これは嬉しいの一言!