INTERVIEW

スカート 『20/20』 新しい一歩を踏み出した澤部渡が語る、〈視界良好〉な現在の気持ち

スカート 『20/20』 新しい一歩を踏み出した澤部渡が語る、〈視界良好〉な現在の気持ち

今までのどのアルバムよりひらけている新作の指針を決めたのは“視界良好”という曲だった。

21世紀のポップソング・メイカー澤部渡ことスカートがついにメジャー・デビューを果たす。通算4作目のフル・アルバム『20/20』は、そんな澤部の見渡す未来を音にしたような、これまで以上にひらけた空気の楽曲が詰まった、気持ちのいい傑作だ。新しい一歩を踏み出すスカート澤部に、まさに「視界良好」な現在の気持ちを聞いた。

 

――去年リリースした3rdアルバム『CALL』で評価、セールスともにしっかりとした手応えを得ましたよね。その好調さを維持したまま、早くも通算4作目のアルバム『20/20』をPONY CANYONからリリースするわけですが、そのモチベーションはどういうものだったんですか?

澤部「『CALL』の手応えをちゃんと反映するには、短いスパンで出すのが絶対いいだろうと思っていたんですよ。『次のアルバムは絶対に次の年には出さなきゃダメだ』と思ってました」

――16年11月にシングル・リリースされた“静かな夜がいい”、山田孝之主演の『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系列/2017年1~3月)のエンディングテーマだった“ランプトン”、映画『PARKS パークス』(2017年3月公開)のサントラに提供した“離れて暮らす二人のために”と、『20/20』の骨格を担う曲も、その好調さの中で生まれたものでしたよね。ちなみに、アルバム・タイトル『20/20』という言葉の意味はどこで知りました?

澤部「鴨田潤さんの小説『てんてんこまちが瞬かん速』(ぴあ)で知りました。もともとビーチ・ボーイズのアルバムで『20/20』というのがあることは知ってたんですけど、その意味をちゃんと知ったのは鴨田さんの小説です」

――英語では〈よく見えるという意味ですよね。

澤部「そうですね。じつはもともと“視界良好”という曲が“20/20”というタイトルだったんですよ」

――“視界良好”が行き先を決めたという部分も大きいでしょうね。

澤部「アルバム全体の指針を決めたのは、そこでしたね。今までのどのアルバムよりもひらけていると思います」

――そして今回、何より〈あたらしい季節がスカートに来た!〉と声を大にして言えるのは、この新作がPONY CANYONというメジャー・レーベルからのリリースとなるからでもあります。

澤部「うれしいです。ようやく自分の音楽に社会性が身について来たと思いました(笑)」

――PONY CANYONといえば80年代にはT.E.N.Tレーベルがあって、澤部くんが敬愛するムーンライダーズともここでつながることになりました。

澤部「工藤静香さんともレーベルメイトになります(笑)」

――新作は、いいポップスに必要な“微熱感”がしっかりあるアルバムだと思います。心がぐっと高まっているんだけど、拳を上げているわけではない。

澤部「でも、熱を持っている状態ということですよね」

――そう。さみしげな曲やせつない曲も、後ろ向きではなく前を向いている。

澤部「ただ、アルバムを作る前は、今までにはないくらいのプレッシャーがありました。メジャーの話が来る以前から、自分自身に対して〈下手なものは作れない〉という気持ちがありましたから。僕のシンガー・ソングライター的な資質の部分での曲作りって、アルバムの『CALL』でいったん終わってるんですよ。今までに蓄積はあそこですべて使い果たしたと思ってるので、これから先は、今までやってこなかったことをやらなきゃいけないし、今までやってきたこととも向き合う作業が必要だと。そういう意味でも結構しんどかったですね」

――『20/20』というタイトルを冠したこと自体も、何かしら見えてきているという意識があってこそでしょうしね。これまでしてきたことを継続しながら、新たな場所に飛ぶための覚悟を感じます。

澤部「そういう予感を歌っているアルバムだという感じがします。でも、〈今は幸せだけど、いつかなくなってしまう〉みたいな感覚は相変わらず自分の中では通底はしてるし、今回のアルバムでも、なくなってしまったもののことを歌ってはいます。“さよなら!さよなら!”って曲は、僕が昔ずっとバイトしていた本屋さんが閉店していたことを知ったことがきっかけでできた歌なんですよ。やっぱり〈自分にとってあるべきはずのものがない〉という不在を歌わないといけないと思って、一気に書き上げました」

――いいソングライターは失恋体質だという笑い話のようなたとえがありますけど、澤部くんの場合は身近なものがなくなるということがひとつのキーになっているんですよね。それは同時に、スカートの楽曲が、ラブソングとラブソングじゃないところの境目で絶妙に響く魔法の鍵でもある。

澤部「そうですね(笑)。ラブソングはいまだに書けないです。難しいですね。いつになったら書けるんですかね(笑)」

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