名作アルバム2作を再現したライヴをCDとDVDに完全収録

 新作を発表する一方で、アルバム再現コンサートで過去の作品を再構築してきたムーンライダーズ。そんななかでも画期的だったのが、2022年12月25日に開催された『アンコールLIVEマニア・マニエラ+青空百景』だ。テクノロジーを大胆に導入した実験的な『マニア・マニエラ』、アコースティックでポップ・センスが際立つ『青空百景』。共に82年に発表しながら性格が違うアルバムを、一晩で全曲演奏するという大胆な試みを収録した2枚組CDとDVD/ブルーレイがリリースされた。

ムーンライダーズ 『moonriders アンコールLIVEマニア・マニエラ+青空百景』 コロムビア(2023)

ムーンライダーズ 『moonriders アンコールLIVEマニア・マニエラ+青空百景』 コロムビア(2023)

 ファースト・ステージはDISC-1に収録された『マニア・マニエラ』で、メンバー全員が科学者のような白いコスチュームを着て登場してテクノなイメージ。しかし、当時のようにテクノロジーの新しさを打ち出すのではなく、ストリングスやホーンを加えた生演奏と巧みに融合させたアレンジにバンドの実験精神が光る。ゲストのOpen Reel Ensembleの生み出すノイズも効果的だ。また、演出も当時のコンサートを再現。プラカードに記された図形で観客に指示を送ったり、謎の言語で語りかけたりとパフォーマンス的な趣向も楽しい。

 DISC-2『青空百景』では、ジャケットをイメージしたヨーロッパ風の衣装にチェンジ。『マニア・マニエラ』とは対照的にシンプルなバンド・サウンドを展開するなか、近年のライヴに欠かせないサポート・メンバー、澤部渡(スカート)や佐藤優介(カメラ=万年筆)の演奏はメンバーの一員のような安定感があるし、『マニア・マニエラ』に続いてゲスト参加した矢口博康のサックスも活躍する。映像作品では複数のカメラを通じてプレイヤーの演奏を間近に見ることができるが、今年亡くなった岡田徹の手元がアップになり、“青空のマリー”のイントロがキーボードで奏でられる時は胸が熱くなる。

 商品化にあたって丁寧なミックスが施されて細かい楽器の音色もしっかり聴けるので、実際にライヴを見ていても発見は多い。どちらのライヴも過去を題材にしながら、そこに広がっているのは新しい風景。ライヴ・バンドとしてのムーンライダーズの魅力が詰まった作品だ。