INTERVIEW

西中島きなこ+吉田靖直『西中島きなこ+吉田靖直』 個性派トラックメイカー&ヴォーカリストが、ポップなグルーヴと弛緩した空気を増幅させたコラボ盤を完成!

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  • 2017.12.06
西中島きなこ+吉田靖直『西中島きなこ+吉田靖直』 個性派トラックメイカー&ヴォーカリストが、ポップなグルーヴと弛緩した空気を増幅させたコラボ盤を完成!

個性的な歌い手と組んできた大阪のトラックメイカーが今回指名したのは……!? ポップなグルーヴとキャッチーなパンチライン、弛緩した空気が増幅されたコラボ盤!

 「ボクは大阪に住んでいるので、せっかくなら地域に密着した名前にしたいと思ったんです。〈西中島〉に決まるまでは、〈太融寺〉や〈堂山〉などが最終候補に挙がっていました」――自身のアーティスト名についてそう語るのは西中島きなこ。かねてより〈音に敏感〉という名義で活動してきた音楽家だ。PCは一切使わず、古いサンプラーやシンセサイザーといったアナログ機材のみで作られるダブやシンセ・ポップの要素を含むサウンドは、どこか牧歌的で郷愁を誘う耳触り。大滝詠一、サイモン&ガーファンクル、荒井由実、JUDY AND MARY、うしろゆびさされ組、スピッツ、筒美京平といったポップ・アクトをルーツとしつつ、「大阪のディープなエリアや京都の花街からも強い影響を受けました。独特の空気感がたまらないんです」という言葉にも頷ける、少し浮世離れしたような雰囲気が、彼の音楽の魅力と言えるだろう。

 音に敏感の頃から「基本的には歌唱力よりも聴いていて落ち着く感じの声の人だったり、トラックより前に出すぎない味のある声の人」という基準でゲスト・ヴォーカリストを迎え、コラボすることの多かった彼。今回、そんな感性にビビッと刺さった歌い手は、トリプルファイヤーのフロントマン、吉田靖直だ。

 「トリプルファイヤーってオフィシャルサイトのプロフィールに〈だらしない54-71〉って書いてますよね? もともと僕は54-71のファンだったので、まずその時点で気になっていたんです。2012年あたりに僕が企画した大阪のイヴェントにもお誘いして、そのときは諸事情で実現しなかったんですけど、それからもトリプルファイヤーというか、吉田さんの存在は気になっていました。吉田さんなら僕が以前からテーマにしたかった世界観を違和感なくポップに表現してもらえると思い、コンタクトを取ったんです」。

西中島きなこ+吉田靖直 西中島きなこ+吉田靖直 BINKAN(2017)

 

 その思惑通り、吉田特有のいい意味で気の抜けた歌声は西中島のサウンドメイクと見事にハマり、今年5月には吉田との初作品『ナイスなヤング』を配信でリリース。さらに6月には「バービーボーイズみたいな男女ツイン・ヴォーカルの曲をリリースしたかった」とのことで、音に敏感の過去作に参加したこともある井手ちよの(3776)を迎えたゆらめきダンス・ポップ“EDMはポップコーン”を発表した。今回の新作『西中島きなこ+吉田靖直』は、それらのナンバーに新曲を加えて全11曲の作品としてまとめたもの。同時に登場する配信アルバム『コミックパッション』はメロディアスな歌モノが中心だが、こちらはラップ風の楽曲がメインになっている。

 「人生そんなに浮かれてる場合じゃないし、けっこうみんな大変だけど、とりあえず無理せず毎日を少しでも楽しく生きていけたらいいねっていうのがこの作品のコンセプトです。平凡な日常を飾らずポップにアウトプットしてみました」と本人が語るように、西中島が書く歌詞はどれも日々のふとした情景やクスリと笑えるような思いを徒然なるままに綴ったような内容。吉田が〈そうざい売り場でクシャミはNG/揚げたての春巻きはジューシー〉と残響音たっぷりにのたまう“ジューシー”は、その最たるものだろう。

 「“ジューシー”は最初に吉田さん単体のヴォーカルをトラックに混ぜた曲で、ボクの中で何かがバチッとハマる気がした記念すべき一曲です。〈カップルPOPなペアルック〉は自分でもお気に入りのフレーズで、普段の僕は暗めの歌詞が多いのですが、吉田さんのおかげで愉快な言葉を紡ぐことができました!」。

 他にも、ハウシーなトラック上を〈カラオケでゲットアップルーシー/今夜ひとりで回転寿司〉というパンチラインが躍る“Bボーイ”、トーキング・ヘッズ『Remain In Light』を彷彿とさせるエスノ・グルーヴと〈地元の不良メンタル豆腐〉という歌詞のギャップが凄まじい“地元の不良”など、ユーモラスだがなぜか哀愁も帯びた楽曲が並ぶ。

 「プラスチックスやディーヴォみたいなニューウェイヴの人たちからも影響を受けたので、遊び心のある表現は好きなんです。だからといって、ウケばかり狙って作る感じはあまり好きじゃないんですけど」。

 もともと吉田が手品のパフォーマンスをするときに流していたBGMをアレンジしたという終曲“地獄の魔術師”に至るまで、一貫してポップなグルーヴ感を保ちながらも、どこか弛緩した空気が流れる本作。だが、そのことが他では得難い心地良さを生んでいるのは間違いない。

 「たぶん自分自身、聴いていてしんどい音楽が苦手なので自然とそうなっているんだと思います。ボクの中では今回の作品はかなりエネルギッシュだと思ってるんですけどね(笑)」。

 最後に。今後コラボしてみたいアーティストを訊いてみたところこんな回答が返ってきたので、興味がある人はぜひ!

 「最近はゆうゆ(岩井由紀子)の卒業コンサートの映像をよく観てるので、タイムマシンがあれば当時のゆうゆとコラボしてみたいです。コラボ相手は募集中なので、もしヴォーカル希望の人がいたら、Twitterとかでメッセージいただけたらと思います」。

 

関連盤を紹介。

 


【リリース・イヴェント〈笑美天〉も開催!】
日時/会場:1月27日(土)/大阪ロフトプラスワンWEST
OPEN/START:11:00/11:30
出演:西中島きなこ+吉田靖直、曽我部恵一、バレーボウイズ、印象派、オオルタイチ、ぱいなっぷるくらぶ、オカザえもん
詳細はオフィシャルサイト〈http://soumei.wixsite.com/otonibinkan〉もしくはTwitter〈@otonibinkan〉にて!

 

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