(C)ANDOLFI – GRANIT FILMS – CINEKAP – NEED PRODUCTIONS - KATUH STUDIO - SCHORTCUT FILMS / 2017

 

世界で最もカオスな都市、コンゴのキンシャサの空気感とごった煮感と生命力が詰まったサントラ!

 コンゴ民主共和国の首都キンシャサを舞台に、フェリシテ(幸福)という名を持つひとりの女性を取り巻く人間模様を描いた映画「わたしは、幸福」。セネガル系フランス人のアラン・ゴミスが監督を務めたこの映画は、キンシャサの路地裏まで深く入り込みながら、この町の闇と光、愛と憎しみ、喧騒と静寂を描き出す傑作だ。キンシャサの暗部をセンセーショナルに切り取るのではなく、人々の生活を淡々と見つめるこの作品のなかで重要な役割を担っているのが劇中音楽。日本公開に先駆けて、そちらの音源を収めたサウンドトラックがリリースされた。

KASAI ALLSTARS Around Felicite Crammed/プランクトン(2017)

 本作では2種類の劇中音楽が使用されている。ひとつは異形の電化伝統コンゴ音楽を鳴らすカサイ・オールスターズによるもの。もうひとつは、キンシャサのアマチュア交響楽団、キンバンギスト交響楽団によるオーケストラ演奏で、取り上げられているのはエストニアの作曲家、アルヴォ・ペルトの《Fratres》など。

 ゴミス監督は海外版プレスのインタヴューのなかで、カサイ・オールスターズについてこう話している。

 「彼らの音楽は伝統的でありながら都会化されている。油の匂いもすれば、森の香りもする。形而上学的で、エレクトリックで、ほとんどロックやエレクトロニック・ミュージックに近い感覚がある。彼らの音楽は伝統と現代性を結びつけ、キンシャサという都市を体現していると思う」

 映画本編は、リケンベ(親指ピアノ)などを擁するカサイ・オールスターズの破天荒な演奏で幕を開ける。〈伝統と現代性〉が混ざり合うキンシャサの空気とリケンベの音色が溶け合い、なんともいえぬ高揚感を生み出す。キンバンギスト交響楽団による荘厳な演奏は、そんな高揚感をある種の瞑想状態へと持ち込む効果も持つ。

 なお、サウンドトラック版のDisc2にはデイデラスやクラップ!クラップ!らによるリミックスも収録。こちらもなかなかおもしろい内容だ。

 


FILM INFORMATION

映画「わたしは、幸福」
監督&脚本:アラン・ゴミス
音楽監督:ブノワ・ド・クレルク
出演:ヴェロ・ツァンダ・ベヤ/ガエタン・クラウディア/パピ・ムパカ/カサイ・オールスターズ
配給:ムヴィオラ(フランス・セネガル・ベルギー・ドイツ・レバノン 129分)
◎12/16(土)ヒューマントラストシネマ渋谷&ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開!
www.moviola.jp/felicite/