INTERVIEW

Taiko Super Kicks × yumbo × mei ehara鼎談―〈事件〉があるから音楽ができる

(左から時計回りに)mei ehara、Taiko Super Kicks、yumbo
 

『Fragment』――〈断片〉というタイトルを掲げたセカンド・アルバムのリリースを発表したTaiko Super Kicks。伊藤暁里(ギター、ヴォーカル)のコメントによれば、それは「今の生きていく態度を表明する言葉」だという。その言葉は、誰もが共有できる〈ポップなもの〉がなくなったと言われて久しい音楽やカルチャーを取り巻く環境への感懐のようにも感じられる。けれども、ばらばらに散らばったように見える断片どうしがその深い核心の部分で共鳴し、ふいに繋がり合うこともあるはずだ。

Taiko Super Kicksは、1月20日(土)に東京・渋谷WWWで開催するイヴェント〈オープニング・ナイト〉の共演者にyumboとmei eharaを選んだ。昨年、辻村豪文(キセル)のプロデュースによる力強いポップ・アルバム『Sway』を上梓したmei ehara とTaiko Super Kicksとは、 彼女が〈may.e〉を名乗っていた頃から5年近い協力関係にある。一方、両者が深い共感を寄せる澁谷浩次を中心としたyumboは、宮城・仙台を拠点とした20年にわたる活動によってインディー・シーンにおいて広く支持を受けている。2枚組の大作『鬼火』(2016年)はいまも静かな衝撃を聴き手に与え続けている。

近いようでいて遠い、遠いようでいて近い3組が共演する〈オープニング・ナイト〉。イヴェントへ向けた前哨戦として、Taiko Super Kicksの伊藤とこばやしのぞみ(ドラムス)、yumboの澁谷(Skypeでの参加)、そしてmei eharaの4人による特別対談をおこなった。音楽と人生や生活との関係性、楽曲制作への向き合い方、あるいはライヴというものの捉え方など、多岐にわたるテーマでそれぞれの意見や思いが交わされた。そんな一夜の記録からは、表面的な共通性ではない、深奥の部分で3組が確かに共振し合っていることが確かに感じられるはずだ。

 


「完璧なものが正解だというのではないものが僕は好きなんです」(伊藤暁里)

――澁谷さんはTaiko Super Kicks(以下、Taiko)のことはイヴェントに誘われる前からご存知でしたか?

澁谷浩次(yumbo)「みなさんのことはよく知らないので……。ごめんなさい」

一同「いやいや(笑)!」

澁谷「僕は大体のことをよく知らないんです。ATMの使い方とかよくわからない」

一同「(笑)」

澁谷「視野が狭いので、自分の見えている範囲のものしかよくわからない。色々な音楽がありますけど、自分で積極的に調べて聴いたりしてないんですね。そういうことをやってたのはたぶん、ザ・スミスがいた頃くらいまでで」

――(笑)。情報がないなか、なぜ出演しようと思ったんですか?

澁谷「基本的に断らないんです。来る話は大体受けるので。すみません……」

――謝らないでください(笑)。Taikoとmeiさんの音楽を聴いてどう思われました?

澁谷「大抵のバンドは自分より上だと思ってるので、あっ、また僕が見上げる人たちが現れたなと」

伊藤暁里(Taiko Super Kicks)「そんなことは全然ないです(笑)」

左からmei ehara、伊藤暁里(Taiko Super Kicks)
 

――聴いてみて、良いなと思った点はありますか?

澁谷「2組ともイントロを作るのが非常にうまいです。曲が始まるごとにハッとする。ポップ・ミュージックにおいてはイントロってすごい大事だと思うんですよ」

伊藤シラオカの小池喬さんとの対談で1曲目が大事だとおっしゃっていましたよね」

澁谷「そうですね。CDやレコードを買ってきて、1曲目の音を聴いて、〈ああ、これは買ってよかった〉って感じを与えるイントロは成功だと思うんです。その割に、自分はイントロを作るのがさっぱりダメだと思います。meiさんは歌い出しも良いですよね。……大抵の人は僕より歌がうまいので」

一同「(笑)」

――meiさんはyumboを前から聴いてました?

mei ehara「もちろん。yumboの音楽は本当に素晴らしいと思っています。大先輩ですし、今回、ご一緒にできるのは本当に嬉しいです」

――Taikoはどうですか?

伊藤「yumboを好きだったのはドラムののぞみん(こばやしのぞみ)なんです。僕はのぞみんに聞かせてもらって、すごく感動しました」

こばやしのぞみ(Taiko Super Kicks)「そうなんです」

伊藤「yumboは演奏がめちゃくちゃうまいとか、歌がめちゃくちゃうまいとかっていうバンドではないと思うんです。そういうのもひっくるめたところで良さが生まれている。マジック感みたいな」

こばやし「うんうん」

伊藤「もちろん、曲がすごく良いからなんですけど。でも、完璧なものが正解だというのではないものが僕は好きなんです」

――こばやしさんはyumboをどうやって知ったんですか?

こばやし「ミュージシャンのダニエル・クオンっていう友達から飲みに誘われて、そこでyumboの芦田(勇人)さんに初めてお会いしたんです。それが去年(2016年)の夏だったかな。その後に『鬼火』とファースト(『小さな穴』のリイシュー)が出て、それを買って聴いたらすごく良くって。それが10月。11月には7thでライヴがあって、そこで他のアルバムも買いました。Taikoのツアーの時、ずっと聴いてましたね」

※2016年11月26日に東京・渋谷7th FLOORで開催された〈yumbo『鬼火』リリース・パーティー〉

――yumboの何に心を掴まれたんですか?

こばやし「ライヴを観て、私はドラマーなので、ドラムっていうか、パーカッションのサウンドが自由ですごいなあって思いました。パーカッションの方がフレーズを全部考えてるんですか?」

澁谷「基本的にはそうですね。楽曲のイメージが明確にあれば、伝えてやってもらっています。それを基本に、山路(知恵子)さんのやりやすいように調整しながら、相談し合ってやってる感じですね。山路さんは小学生の頃からブラスバンドでパーカッションをやってたんです。ずっとブラスバンドで楽曲に縛られていたから、反動で即興に興味を持っていたのかもしれません。

その頃はyumboって即興しかしないバンドだったんです。それで、やってみたら最初からああいう感じで、音がすごく面白かったんです。人間的にも未だに山路さんみたいな人に会ったことないっていうぐらいちょっと独特な方で、そこもすごく面白い」

――なるほど。一方で、meiさんとTaikoの関係は長いですよね?

伊藤「もう5年くらいかな? バンドを始めて半年くらいの時にライヴに誘ってくれたのがmeiさんだったんです」

こばやし「ライヴをするきっかけになったのがmeiちゃんが企画してたイヴェントなんです」

mei「そうなんです。その後も関係が続いて、『霊感』のアートワークを描いたり、バンド・ロゴを作らせてもらったり。最初のアーティスト写真を撮影したり、Taikoが初めて企画した〈o m a t s u r i〉というイヴェントのサイトやフライヤーを作ったりと、色々とやりました」

――なんでTaikoにそこまで肩入れしたんでしょう?

mei「当時の私には、〈音楽をやっていこう〉という気持ちはまだなくて、イヴェントの企画もデザインも写真も、色々なことがやりたいと思っていて。頼んでもらえて、やれる機会があるならやりたかったんです。それに、友達という以前にTaikoの音楽がすごく好きなんです。Taikoが自分たちで出来ないことを手伝うことで、みんなに聴いてもらうきっかけになればいいなという気持ちがあって、協力していたかな」

こばやしのぞみ(Taiko Super Kicks)
 

――meiさんのアルバム『Sway』が素晴らしい形で出たわけですが、Taikoのお2人はどう思われました?

伊藤「宅録でやっていた頃と気概が違うのを感じました。すごく頼もしいアルバムだなって。音楽に腰を据えてやっていこうって雰囲気があるし、そういう意志を歌詞にも感じる。それはすごくmeiっぽい。本人の人間性が出ているアルバムだと思いました」

こばやし「覚悟を決めた感じだなと思いました。名前もmay.eからmei eharaになって」

――meiさんはなぜ音楽をやろうと決めたんですか?

mei「音楽をやめていた期間が2年半くらい前にあったんです。理由はいくつかあったんですが、周囲にも〈もう音楽はやめます〉と宣言していて。曲も作らず、ライヴもせず。私生活で色々な事件があって、心的にも身体的にも疲れて悩んでいたりしていたんですけど、そうしている間にふと、私は一番のめり込める大切なことをやめようとしているということに気がついて。それからやっと音楽に本腰を入れて、今回のアルバムを出すことにしたんです。だから、一回やめていてよかったのかな」

 

「『鬼火』と『霊感』と『Sway』は同じなんですね」(mei ehara)

――澁谷さんは失恋で現代詩に限界を感じた、惨めな詩ばっかりを書くようになって、それに曲をつけたら不思議な広がりが生まれたと書いていらっしゃいましたね。それはちょっとmeiさんと通じるものがあります。

澁谷「その時は詩に関しては何かできるかもしれないと思ってて、音楽をやる能力があると思ってなかったんですね。ところが、実生活でそういう事件があって、そうすると詩も変わっていった。それまで書いていたものがどんどん変化していって、それはどちらかというと音楽のための詩に近いものになっていったんです」

――音楽が詩を補完してくれた?

澁谷「そうでしょうね。詩と音楽の関係がちゃんと結べていなければ曲にはならないと思います」

伊藤「そうですね。さっきから〈事件〉っていう単語が出てきますけど、生きているなかでうまくいかないことや悩みがある時、それがきっかけで曲ができることがあって。さっきの澁谷さんと小池さんの対談で〈鬼火〉っていう言葉が今後の人生を象徴するものとして自分のなかに出てきたとおっしゃっていたんですけど、その感覚はわかります。

Taikoで最初に『霊感』ってアルバムを作ったんですが、その時はまさにそういう感じで。人生が行き詰まっている状態で、今後の生き方を象徴するような言葉として〈霊感〉っていう単語が出てきたんです」

――meiさんの“冴える”もそういう曲に感じたんですが。

mei「“冴える”はアルバムのなかでテーマを象徴している曲のひとつですが、今回はアルバムを通してひとつのことを表現しようとしていたので、どちらかというとアルバム・タイトルの『Sway』――〈揺れる〉という言葉が、澁谷さんや暁里が言っている、まさにそれだと思います。面白いね。『鬼火』と『霊感』と『Sway』は同じなんですね」

伊藤「そうかもしれないですね。今後の人生を象徴する言葉がふっと心のなかに出てくることは誰もが誰もそうではないと思うので、澁谷さんと近いのかもしれないって僭越ながら思いました」

澁谷「言葉を〈見つける〉って感じですよね」

伊藤「そうですね」

澁谷「曲作りもそういうところがありますね。言葉とセットで合うメロディーを探しながら作っているところがあるので」

伊藤「曲と詞が同時に出ると良いものになる時が多いですね」

mei「ほんとにそうだよね」

澁谷「それこそ〈霊感〉みたいなもので、自分だけの力じゃないって感じがします」

伊藤「インスピレーションですよね」

 

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