INTERVIEW

憧れを音楽にすることがポップス―ポニーのヒサミツ×岡田拓郎がアメリカーナに魅了される理由

ポニーのヒサミツ『The Peanuts Venders』

(上から)岡田拓郎、前田卓朗(ポニーのヒサミツ)
取材協力:吉祥寺・よろずの稀間
 

カントリー・フレイヴァー溢れるポップ・ソングで、東京インディー・シーンで異彩を放つ前田卓朗のソロ・ユニット、ポニーのヒサミツが、セカンド・アルバム『The Peanuts Venders』をリリースした。雷音レコードからの先行シングル“そらまめのうた”と、カクバリズムから2016年にリリースされた“羊を盗め”の2枚の7インチ・シングルが収録された本作は、シャムキャッツの大塚智之やyumboの芦田勇人らここ数年活動を共にしてきたバンド・メンバーや、ゲストのザ・なつやすみバンドの中川理沙らに支えられて完成。そこに前田が細野晴臣と並べて敬愛するポール・マッカートニーの遺伝子を受け継いだポップ・センスがキラリと光る、胸躍るカントリー&ポップな作品に仕上がった。

そこで今回は、アルバムのリリースを記念して、森は生きているの頃から交流がある岡田拓郎との対談が実現。昨年、岡田は初のソロ・アルバム『ノスタルジア』をリリースしたが、そこにはポニーのヒサミツと同じようにアメリカーナな匂いが漂っていた。アメリカのルーツ・ミュージックの影響を受けながら独自の世界を生み出してきた二人は、果たしてどんなふうに過去の音楽に向き合い、それを作品に昇華させていったのか。いつも会う時は呑んでいるという二人が、今回も吉祥寺の酒場でビール片手にそれぞれの作品について語ってくれた。

ポニーのヒサミツ The Peanut Vendors なりすコンパクト・ディスク/ハヤブサ・ランディングス(2018)

「この時代に〈カントリー色を出さないと!〉って焦るなんて珍しいですよね(笑)」(岡田)

――初めて二人が会ったのはいつ頃ですか。

前田卓朗(ポニーのヒサミツ)「森は生きているのファースト(2013年)が出た頃ですね。その頃、増村くん(森は生きているのドラマー、増村和彦)と出会って、レコ発ライヴを観に行ったときに初めて岡田くんに会って。後日、増村くんを交えて一緒に呑みに行ったんだよね」

岡田拓郎「そうでしたね。その後も会った時はだいたい呑みに行ってますね」

前田「(会うときに)シラフのときってあまりないかも」

岡田「いちばんひどかったのは、正月にノアルイに行ったときですよ」

※東京・下北沢のレコード・ショップ、ノアルイズ・レコード

前田「ああ、行ったね! ビールを持ち込んで、ずっとレコードを掘ってた」

岡田「昼間から夕方まで粘ってましたよね。途中でビールが足りなくなって、店長の阿部さんがビールを買いに行ってる間、僕らが店番してた(笑)」

前田「誰も来なかったけどね(笑)」

――前田さんは、増村くんに会う前から森は生きているのことは知ってました?

前田「会う直前に音源を聴いたんじゃないかな。どんな人達が作ってるのか見当がつかなくて、僕と同い年くらいか、上なんじゃないかと思ってたんです。でも、実際会ってみたら、岡田くんは僕より10くらい年下でびっくりした」

岡田「そんな離れてないですよ。ポニーちゃんは増村と同い年だから6つ上です。当時、増村の家に泊まりに行くと、朝は必ず『休日のレコード』(ポニーのヒサミツのファースト・アルバム、2013年)がかかっていて。〈ああ、いい朝だな〉って思ってました(笑)。でも、増村はポニーちゃんのこと、どこで知ったんだろう」

前田「謎なんだよ。『休日のレコード』のトレーラー映像を気に入ってくれたみたいで、Twitterで呟いてくれたんだよね。それで〈誰だろう?〉と思って調べたら、森は生きているの人だとわかった。もう、4年前だよ。懐かしいなあ」

『休日のレコード』トレーラ―
 

――その後、二人が共演したことはありますか?

前田「『休日のレコード』のレコ発のときに森は生きているを呼んだんですけど、共演はそのときだけですね」

――じゃあ、もっぱらお酒とレコードの付き合い?

岡田「完全にそうですね」

――そんななか、早速ですが、岡田さんは『The Peanut Venders』を聴いてみていかがでしたか?

岡田「そうだなあ、これまでよりカントリー寄りになった気がしました。バックのメンバーも、みんなカントリーっぽくなってる。アルバムのなかで1曲カントリーならわかるんですけど、全曲それで揃えてきたっていうのが新鮮でした。芦田さん(ギターの芦田勇人)、カントリー・リックが巧くなってるし、サボテン楽団さんが弾いてる曲でもすごいのがありましたね」

前田「サボテン楽団の服部くんはもともとカントリー的なフレーズが得意な人だったからね。例えば“夜の飴玉”は、彼が好きなジェリー・リードみたいな曲を作ってジェリー・リードみたいに弾いてもらおうと思った」

――今回はカントリー色より強く出すことが目標としてあったんですか?

前田「実は、アルバムを作り始めた頃、録音初日に録った曲は総じてあんまりカントリーっぽくはなかったんです。でも、ここ数年〈カントリーやってます〉っていうのを前に出してきたんで、〈もっとカントリーに寄せていかないとダメだな〉と思って(笑)、急遽カントリーっぽい曲を足したりして、結果的にこうなったというか」

岡田「あ、逆なんだ。でも、この時代に〈カントリー色を出さないと!〉と焦るなんて珍しいですよね(笑)」

前田「もちろん、無理矢理カントリーをやったわけじゃなくて、〈カントリーをやりたい!〉というのは、ずっと前から思ってたんだけど、いざ曲を並べたら意外とそうでもなかったんだよね。実は1枚目もそんなにカントリーっぽくないし」

岡田「(ポニーのファーストは)カントリーというより、ポール(・マッカートニー)の一枚目みたいな雰囲気でしたね」

前田「うん。ちょっと変なアルバム。それは時間や予算に制限があったっていうこともあるんだけど。だから今回は自分がやりたいことを、もっと前に出したいと思って。それがカントリーだった」

ポール・マッカートニーの70年のファースト・アルバム『McCartney』収録曲“Maybe I'm Amazed”

 

「細野さんのシンプルな極地にはなかなか辿り着かない」(ポニー)

――そもそも、前田さんがカントリーに興味を持ったきっかけって何だったんですか?

前田「細野(晴臣)さんの『FLYING SAUCER 1947』(2007年)ですね」

岡田「ああ。僕も一緒だ」

前田「あれを聴いてカントリーに興味を持ったんです。あとは、40年代とか50年代の曲のカヴァーがたくさん入っていて、そういう音楽をどんどん掘っていくきっかけになりました」

岡田「細野さんが久し振りに歌モノを出すっていうので聴いてみたら、カントリーだったというのは大きかった。僕らの世代は、あのアルバムを聴いてカントリーを聴きだした人が多いと思いますね。バンジョーとかマンドリン、ペダルスティールを買ったりして。でも、ポニーちゃんほどカントリーに取り憑かれた人は、そんなにいないと思うけど(笑)」

――カントリーのどんなところに惹かれたんですか。

前田「なんだろうな。古い音楽だけど新鮮だったんですよね。コードも2つくらいしか使っていないのにカッコいいし、アレンジもシンプルだけどおもしろくて。あと、細野さんがライヴのMCで〈カントリーは誰でもできますよ〉みたいなことを言ってて。それを真に受けて、僕もやってみようと思ったんです」

――カントリーを自分なりに消化するにあたって、気をつけていることってあります?

前田「細野さんくらいキャリアがあって説得力があればいいけど、僕が2コードの曲を作っても、つまんなくなっちゃうような気がして。だから、コードも結構多めに使って複雑にしてしまう。本格的なカントリーというよりは、自分のできる範囲のカントリー。それを僕は〈なんちゃってカントリー〉とか〈カントリー・ポップス〉って呼んでいるんですけど」

岡田「確かに、コードの使い方や進行はカントリー的じゃないですよね。カントリーとかブルースみたいに2コードとか3コードの曲を日本語で歌うと、めちゃくちゃヤバくなるじゃないですか」

前田「そうなんだよね、野暮ったくなることが多くて。英語で歌っているからかっこいい」

岡田「そうならないためには、多彩なコードを使わないといけない。このアルバムって、一見シンプルに聴こえるけど、結構ヤラしいコードを使ってるな、と思いながら聴いてました(笑)」

前田「そこは、心配で詰め込んじゃうんだよね(笑)。〈これだとつまんないんじゃないか?〉とか思って、どんどん展開させちゃうし、コードもたくさん使っちゃう。だから、アルバムが出来上がった時、〈情報量が多いな、このアルバム〉って思った。やっぱり、細野さんのシンプルな極地にはなかなか辿り着かない」

――細野さんくらいの年齢になって、ようやく辿り着けるのかもしれないですね。

前田「まだ細野さんの年齢の半分にもなっていないですからね」

――そういえば、アルバムの1曲目“遠吠え”は、細野さんの“ろっかばいまいべいびい”(細野の73年作『HOSONO HOUSE』収録)を意識して作った曲だとか。

前田「そうなんです。ライヴの最初にやるような曲を作りたいと思って、“ろっかばいまいべいびい”とか“三時の子守唄”(細野の75年作『トロピカル・ダンディー』)を意識して作りました」

岡田「トランペットが良かったです。“ろっかばいまいべいびい”でいくのかと思ったら、トランペットを合図にバンドが入ってきてハッとしました」

前田「あれ、良い音だよね。演奏してる本人(芦田)も意図せずに出た音らしいんだけど、巧い人が枯れた音を出してるみたいに聴こえるでしょ。〈良い感じに枯れてるよね〉って本人が自画自賛してた(笑)」

岡田「すごく柔らかくて、やたら良い音でしたね。あと、全曲通してオルガンの使い方がおもしろかった。テックスメックスみたいな、ぺたっと貼り付くようなオルガン。〈これは細野さんもやってないじゃないか〉って思いました」

前田「あれ、YAMAHAのミニ・キーボードなんだよ」

岡田「オルガンじゃないんですか?」

前田「そう、オモチャみたいな大きさのやつで。弾いてくれた佐藤(洋)くんは、ちゃんと鍵盤習ったことないんだけど、レイスコ(レイモンド・スコット)とか電子音楽が好きで、昔はひとりでそういうのをやっていた人だからカントリー畑の人ではないんだよね」

岡田「確かにいわゆる鍵盤奏者っぽくなくて、それが耳に残ったんです。あと、たにぴょん(谷口雄)がアコーディオン弾いてた曲(“健忘症”)も良かった。〈ドクター・ジョンみたいに弾いて〉って言ったんでしたっけ?」

前田「それは“Walking Walking”でピアノを弾いてもらったとき。アコーディオンは自由に弾いてもらった」

岡田「あ、そうなんだ。彼はドクター・ジョンっていうより、レオン・ラッセルなんですよね。昔、ピアノの教本を持ってきて弾いてくれたことがあるんですけど」

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