INTERVIEW

KiliKiliVilla設立から3年、安孫子真哉はいま何を考える? MILK × odd eyesと語った〈レーベル第一期の終わり〉と2018年のパンク

松原正成(MILK)、カベヤシュウト(odd eyes)、安孫子真哉

 

KiliKiliVilla(以下、キリキリ)を創立させて1年目だった安孫子真哉が、現在進行形のパンク・カルチャーへの興奮や既存メディアへの違和感などを赤裸々に語ったロング・インタヴューを、Mikikiが公開したのが2015年の10月。以降、同レーベルはNOT WONKやCAR10、SEVENTEEN AGAiNといった当初から看板として掲げていたバンドの躍進をプッシュしつつ、Penny ArcadeやDebonaireら歴史の陰に埋もれたインディー・ポップの立役者たちの音源をリイシュー。さらに、Gezan やLEARNERSといったシーンのフロントラインから、Have a Nice Day!やEccy、Jappersらパンクという括りでは捉えきれない才能までをレーベルのカタログに加えてきた。

さまざまなトライブを意識的に攪乱していくような意欲的な活動を、3年間にわたって続けてきたキリキリだが、安孫子曰く、昨年の12月にリリースしたMILKの初作『ALL ABOUT MILK』と、先日リリースされたばかりで、Illicit Tsuboiがミックスを手掛けたことでも話題のodd eyesによるセカンド・アルバム『SELF PORTRAIT』を機に、〈KiliKiliVilla第一期の終わり〉を感じているという。この両バンド――ペナペナな音を突き詰めながら最短距離での一点突破をめざすMILK、ハードコア・パンクのみならずヒップホップやハウス、エクスペリメタルからフォークまで多岐に渡るサウンドからの影響が混沌と渦巻くodd eyesは、レーベル最初のコンピ『WHILE WE'RE DEAD. : THE FIRST YEAR』(2014年)にも収録されていた2組。しかもMILKのアルバムに関しては設立当初よりリリースが予定されていたため、これらの両作が陽の目を見たことで時代が1周した感慨は、確かにある。

この節目の季節に、安孫子真哉は何を思っているのか? かつて彼を音楽シーンへとカムバックさせた着火剤となったアンダーグラウンドのパンク・カルチャーは、いまどんな状態にあり、そしてどこに向かっているのか? MILKの松原正成とodd eyesのカベヤシュウトの両フロントマンも迎えて(2人はskypeでの参加)、話を訊いた。

 


MILKやodd eyesを聴いて、自分もこの時代に追いつきたいという気持ちになった

――まず安孫子さんと、松原さん&シュウトさんとの出会いから教えてください。

安孫子真哉「最初に会ったのは、僕がずっと言っている〈2014年の最高の夏〉っていうあれなんですけど、SEVENTEEN AGAiNのツアーに連れて行ったもらったとき、名古屋で松原くん、京都でシュウトくんと出会っているんですよ」

――同じタイミングだったんですね。

安孫子「正直、その頃の日本のバンドについて僕はすごく不勉強で、ホントに申し訳ないことにodd eyesもMILKも存知なかったんです。まず名古屋で松原くんからMILKの7インチ『MY E.P.』(2014年)とZINEをいただいたんですよ。だけど、いろんな方に音源をいただきすぎて、その場でガッツリ松原くんと話したわけではないから、やや印象はボンヤリしていて。でも、翌日に行った京都で、ひたすら話をまくしたててくる眼力の強い強烈な男がいて、そいつがシュウトくんだった。ずっと捕まえられていて、周りの人から〈odd eyesの子に絡まれてませんでした?〉と言われるくらい(笑)。こいつ、すげえパワーだしおもしれえなと感じました。何物にも媚びない感じでズケズケと入ってきて。odd eyesのファースト・アルバム『thinking ongaku union local 075』(2012年)も渡してくれて、〈あー、あいつのバンドならなんだかヤバそうだな〉とは思いましたね」

――実際にMILKとodd eyesの音源を聴いたときの感想は?

安孫子「松原くんにメールしたよね。そのとき何十枚といただいちゃったんですけど、聴いてみてそのなかでもとりわけ〈マジでヤバイ〉と思ったいくつかのバンドにメールしたんですよ。MILK、odd eyes……」

カベヤシュウト(odd eyes)「いや、僕にはメールきてないですね」

安孫子「ウソー! メールしたっしょ?」

シュウト「いや、きてないっす。だから、マジヤバくないバンドの代表、その他の代表です」

安孫子「メールして、〈(同じタイミングで音源をもらった)Homecomingsというバンドもヤバいね〉みたいなやりとりしたじゃん?」

シュウト「〈Homecomingsがヤバかった〉というメールはきましたね。〈確かにHomecomingsはヤバいな〉と思いました」

一同「ハハハハ(笑)!」

松原正成(MILK)「僕は人に音源を渡すとかは、めったにやらなくて。いままで渡したのは、ロス・クルードスのマーティンと安孫子さんだけなんですよ。マーティンからはいまのところ無視されてるんですけど、安孫子さんはそのときメールくれて、メンバーみんなめちゃくちゃ喜んでいました」

※シカゴのハードコア・パンク・バンド

安孫子「ありがとうございます。あそこからすべてがはじまっていますからね。ホントににカルチャー・ショックだったんです」

――安孫子さんは、それぞれのどういったところに衝撃を受けたんですか?

­安孫子「MILKでいうと、パンクの歴史のなかでもポイントポイントで確信犯的にスカスカの音でやることに挑戦してきたバンドはいたんですよ。ただ、全方位な巻き込みにはならなかったんですよね。どれもそのシーンの異端みたいな感じから抜けられていなかった印象があって。でも、MILKはバンドのムードも含め、この手のひとつの完成型に思えたし、7インチと一緒にもらったZINEは周りの友達だけじゃなくECDさんが寄稿していたりと、すでにいろいろな人を巻き込んでいる感じだったんです。あと、MVもお洒落で格好良かった」

odd eyesは 『thinking ongaku union local 075』に収録されたスタジオ・ヴァージョンもそうでしたけど、 “うるさい友達”のライヴ映像でも松原くんや他のバンドの人がマイクリレーをしているじゃないですか。その映像を観たとき、いろんなところからのアイデアが詰まっている気がして、僕がしばらく注目していなかったところで、すごくおもしろいことになっているんだなとビックリした。自分もこの時代に追いつきたいという気持ちになりましたね。それで、これはライヴを観たいなと思っていると、odd eyesとMILKがちょうど名古屋で一緒にやる日があったんですよ」   

ュウト「ロンリーのレコ発(2014年11月)ですね。シラオカというバンドとodd eyesとMILKとロンリーの4組で名古屋の金山ブラジルコーヒーでやった」

安孫子「MILKはそれ以前にライヴを観ていたんですけど、odd eyesは初めてで〈あのシュウトくんがどんなパフォーマンスをするんだろう〉と期待していたんです。で、実際にライヴを観たら、もう最高だった。ブラジルコーヒーは普段は喫茶店として営業をしているところで、ハードコアのバンドでもモッシュピットとかは作れない場所なんです。にもかかわらずodd eyesは軽やかにやっていたし、なんか自分の新しい扉を開かれた感じがしたんですよ。岡村(基紀)くんのギターヒーロー感にもやられました」

シュウト「ただ、その頃はバンドとしていちばん悩んでいた時期ですね。ベースが抜けて、サポートを入れてやっていたんですけど、なかなか思うようには動けてなかった。その頃にMILKの7インチ『MY E.P.』が出て、ロンリーは7インチ『楽しいvoid』(いずれも2014年)を出して、自分の周りの格好良いバンドが音源を作った。だけど、自分たちは最初のアルバムを出してから3年くらい経っていて、僕はそれですごくイライラしていたというか、もっとがんばりたいなーと思っていた時期。暗中模索じゃないですけど、自分も最高の音源を作りたいなって」

※2タイトルともカベヤシュウトが関わっているレーベル、Summer Of Fanからリリースされた

安孫子「思い出した。初対面のときに、〈安孫子さんベース弾いてよ〉と言われました(笑)」

シュウト「……ホントすみません。よく対バンしていたHomecomingsやCAR10も音源を作ってライヴして、みんなが規模とか関係なくちゃんとやっていたのに、自分たちは何かやりたくても動けずで、その時期のことを言われてもあんまり覚えてないですね」

安孫子「そうだよね。現ベーシストの誠也(森岡/she said)くんが入るまで長かったもんね」

――そんな状態を経て、odd eyesは2015年に7インチ『A love supreme for our brilliant town』をリリースしましたね。

シュウト「あれはもう悩みが極まったというか(笑)。僕らはファーストの頃からそうだったんですけど、周りの人を誘って音源を完成させてきたんです。あの7インチもとにかく当時知り合った人――ceroの髙城(晶平)さんやVIDEO(TAPEMUSIC)くんに協力してもらって。もちろん、作品としてはめちゃくちゃ気に入ってます」

『A love supreme for our brilliant town』収録曲“クーリングオフ・ファックオフ”

 

〈このハードコア・バンドはどこから来たんだ?〉というサウンド

odd eyes SELF PORTRAIT KiliKiliVilla(2018)

――では、リリースされたばかりのodd eyesのニュー・アルバム『SELF PORTRAIT』は、バンドのメンバーもようやく固まり、盤石の編成で完成させられた作品ということでしょうか?

安孫子「今回、odd eyesのアルバムは、基本的にノーゲストだしね。ただ、ミックスをやってもらったIllicit Tsuboiさんにはその意味合いもあるんじゃない?」

シュウト「今回、演奏はメンバーだけでやりたかったんですよ。毎回なんか驚きがあったほうがいいとは思っていて、〈今回はゲストなしがおもしろいっしょ?〉くらいの感じですかね。そういう意味でもミックスはいままでと違う人が良かったし、自分がいちばんやりたいのはツボイさんだった。ちょっと変わったことをやろうというわけではなく、ツボイさんが有名だから、ヒップホップの人だからとかでもない。ツボイさんがいちばん良かったってだけです」

安孫子「シュウトくんからツボイさんにミックスをお願いしたいと聞いたとき、〈あー、こいつはおもしれえことを考えるなー〉と思いつつ、実際にミックスがあがってきたときの仕上がりは想像を超えていたんで、めちゃくちゃブチあがりましたよ。一般的なリスナーから見たらodd eyesはハードコア・バンドじゃないですか? でもシュウトくんや岡村くん――メンバーのみんなはいろんな音楽を好きだし、その多様な背景をサウンドで説明してくれている感じがして。音の配置とかちょっとしたエフェクトとかで、odd eyesのイメージをものすごく拡げてくれるミックス。ホントに素晴らしいなと思いましたね」

『SELF PORTRAIT』収録曲“熱波”
 

シュウト「今回、ツボイさんのミックスがあがってきて、めちゃくちゃ肉体的でハイブリッドだったんだけど、はっぴいえんどの『風街ろまん』(71年)ぽいなと思ったんですよ。あのアルバムの音もすごく分離しているじゃないですか? アメリカン・ロックというのは自分たちのキーワードとしてもあったし、ミックスを聴いたとき、はっぴいえんどやバッファロー・スプリングフィールドを思い出しました。まったく違うって怒られるかもしれませんけど(笑)」

安孫子「やっぱりハードコアのイメージってギター炸裂でズドーンみたいな音じゃないですか? 今回、メンバー間でもそれぞれ意見があって、ディスカッションも重ねたんだけど、シュウトくんは〈すべての音が分離している感じにしたい〉と言っていたんですよね。結果的に〈このハードコア・バンドはどこから来たんだ?〉というサウンドになった。いままでも曲のタイトルやバンドの雰囲気から匂わせていたとは思いますが、今回はサウンドとしてodd eyesのおもしろさを出せているんじゃないかな。違う?」

シュウト「そのとおりだと思います。まったくそのとおり……なんですけど、いまの話を聞いていて、MILKにめちゃくちゃムカついてきて(笑)。だって、MILKはそんなことで悩んだりしなさそうじゃないですか? なのに、新しいアルバム『ALL ABOUT MILK』はミックスも含めてすごくカッコイイ。音楽の良いところは努力と比例しないところですけど、MILKはそれを体現していて最高ですね。最小限の努力で最大の効果を得る。逆に僕らは最大の努力で最少の効果を得るみたいな」

MILK ALL ABOUT MILK KiliKiliVilla(2017)

安孫子「MILKのアルバムをどうするって話したときに、松原くんが〈猛烈に行きたいです!〉と言っていて、その一言でもう決まっちゃったもんね。〈猛烈〉というキーワード、出たねーって」

シュウト「もしodd eyesが、〈猛烈に行きたいです!〉と言ったら、安孫子さんは〈え? どういうこと?〉って訊くと思うんですよ。MILKはワン・キーワードで通せるけど、odd eyesは説明しないといけない。それは両バンドの燃費の違い。MILKだったら一回録って最高となるわけじゃないですか?」

松原「いや(笑)、録り直しもしたよ。自分が好きなハードコア・バンドの音源と自分が録った音を聴いてみると、これじゃぜんぜん足りてないなって」

シュウト「好きなハードコア・バンドってたとえば?」

松原「固有名詞をあげるのは、いつも迷っちゃうんですけど、なんだろうな……。G.L.O.S.S.とかはよく聴いていたし、家で聴いているものと近い、同じくらいのテンションのものを作りたいとか、そういうふうに思っていた」

安孫子「電話をしたとき、〈録音前だからヴォーカルに注目して聴いているんですけど、やっぱりヘンリー・ロリンズは猛烈っすね〉と言ってたもんね」

シュウト「僕はむしろ録音中にはハードコアを聴かないんです。これは昔、坂本慎太郎さんが言っていたんですけど、坂本さんの好きな日本の音楽家に布谷文夫という“ナイアガラ音頭”で歌っている大瀧詠一門下のブルース・シンガーがいて。その人がやっているDewというバンドを、僕はすごく好きなんですよ。日本語って発音とかが湿っぽいから英語みたいに軽くならないんですけど、布谷さんは一音一音をブチブチ切れるよう、喉から絞り出すように歌っている。それは結構意識しましたね」

安孫子「布谷文夫なんだ! それをふまえて聴き直してみる」

シュウト「まあ、いまのはかましですよ。ただ、僕と松原くんは真逆で、MILKはハードコア・パンクを純化させていると思うけど、odd eyesはハードコア以外からハードコア・パンクにぶつかっていくんです。松原くんは内から、僕は外からハードコアに接近していく」

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