オスカー最有力と名高いギレルモ・デル・トロ新作の、もはやトロ映画では恒例となった日本版アート・ブック。詳細なキャラクター解説や、クリーチャー〈半魚人〉の造形過程など、今回も監督の想像力が辿った起伏豊かな道のりを追体験することができる。「ヘルボーイ」二作で志半ばに終わったエイブのラブストーリーを、さらに深みと詩情を持ったものとして成就させたかったという、トロイストにとっては嬉しい背景も。しかるに、今作は〈愛〉の物語であるが、その水の如き実体のない、ゆえにあらゆる形を包容するものを、どうリアルに魅せるか――工夫に富んだ創造のすべてを明かす一冊。

※初出はintoxicate2月20日発行号