INTERVIEW

the pillows山中さわおのブリーダーズ愛が炸裂! オルタナ中のオルタナと惚れた理由を語る

the pillows山中さわおのブリーダーズ愛が炸裂! オルタナ中のオルタナと惚れた理由を語る

90年代のUSオルタナティヴ・ロックを代表する人気バンド、ブリーダーズが10年ぶりとなる新作『All Nerve』を発表した。中心人物のキム・ディールを筆頭に、93年の代表作『Last Splash』のメンバーが再集結し、盟友スティーヴ・アルビニがプロデュースということで、大きな注目を集めている。

そんなブリーダーズについて、かねてから〈世界一好きなバンド〉と公言してきたのがthe pillowsの山中さわお。とりわけキム・ディールへの愛情は筋金入りで、"Kim Deal"という直球のオマージュ・ソングも作っている。

しかも、the pillowsはUSオルタナに決定的な影響を受けた〈第3期〉を象徴する2枚の人気作『RUNNERS HIGH』と『HAPPY BIVOUAC』(共に99年)の再現ライヴ・ツアー〈RETURN TO THIRD MOVEMENT! Vol.2〉を5〜6月にかけて控えているほか、彼らの人気を海外まで広げたアニメ『フリクリ』の続編も9月に上映決定。ブリーダーズについて語ってもらうなら、これ以上のタイミングはない――その一心で企画されたインタヴューに、山中も〈当然でしょ〉と言わんばかりに、ブリーダーズのTシャツ姿で現れた。そこまで好きだったのかと驚かされる、本気の語り口とエピソードの数々を楽しんでほしい。

THE BREEDERS All Nerve 4AD/BEAT(2018)

 

たぶんキム・ディールは僕の曲を好きにならない

――そもそもブリーダーズを知った経緯は?

「僕のレーベル(DELICIOUS LABEL)にいるnoodlesが、アンプスの“Pacer”(95年)を登場SEに使っていたんですよ。世界観にも惹かれたし、声がいいなと思って。誰なのって訊いたら、〈アンプス、ブリーダーズのキムがやってるバンド〉と言われたけど、そのときはブリーダーズをまだ知らなかった。それで〈ピクシーズでベース弾いてたキムが……〉と教えてもらって、ああそうなんだと。98〜99年頃の話かな」

――聴きはじめたのは遅かったんですね。

「僕っていつも、世の中と5年くらいズレてるんですよ。大好きになった音楽は何度でも聴くんですけど、ものすごく情報に疎くて。調べたり覚えたりしようという習慣もないので、大好きなバンドでも曲名が曖昧だったりする。

91年にニルヴァーナが出てきた時なんて、ロンドンでレコーディングをしていたから、MTVで観てロンドンのバンドだと思い込んでいたくらい(笑)。当時は僕自身の作詞作曲がジャズやソウルの方に向いていたので、そんなにハマらなかったけど、そこから5年くらい経って、スタッフの車でかかっていたのを聴いたときに〈あれ、こんなにカッコよかったんだ〉と気づいたんですよね。ずっとイギリスの音楽ばかり好きだったのに、アメリカの音楽もおもしろいんだって、そのとき初めて知りました」

――the pillowsはバンド名も『Pillows & Prayers』(82年)から取られているように、初期はモッズとかUK色が濃かったですもんね。

※英レーベル、チェリー・レッドがリリースした伝説的なネオアコ・コンピ。エヴリシング・バット・ザ・ガールやモノクローム・セット、フェルトなどを収録

「そうそう。ピクシーズも同じような感じで、ストーン・ローゼズにどハマりしている時に友達から聴かされたけど、しばらくピンとこなかった。だけど、何年かしてから同じようなバンドに飽き飽きしていた頃に、はじめてカッコよさがわかったんです。そんな感じだから、ピクシーズのベーシストが別のバンドをやっているのも全然知らなかった。教えてもらってすぐ、『Pod』(90年)と『Last Splash』(93年)を一緒に買ったのを覚えてます。最初は『Last Splash』ばっかり聴いてましたね」

――『Last Splash』のほうに惹かれた理由は?

「僕は基本的にポップでキャッチーなもの、ダウナーな曲よりロックンロールのほうが好きなので。その好みからいうと、『Last Splash』のほうが入りやすかった。アルバムとしての流れもあるし、“Drivin' On 9”みたいなカントリーもいい。“No Aloha”のような度肝を抜くアイデアもあるし、わかりやすくオルタナ感が出ていますよね。今でも『Last Splash』が一番好きかな」

――度肝を抜くアイデアというのは、具体的にはどういうところですか?

「“No Aloha”はドラムとバッキング・ギターが入ってくる前のオープニングみたいなところで(再生開始〜1分10秒まで)、何拍子でどういう歌メロなのか、どういうバックボーンが鳴っているのかを想像しにくいトリックがあって。そのあとドラムが入ると、想像を上回るほどポップでキャッチーな感じになりますよね。最初は背景を変えて難解なものに聴かせているけれど、ドーンと来た瞬間に答え合わせができる、みたいな。他では聴いたことのないポップ・ミュージックだという衝撃がありました」

――『Last Splash』収録曲であり、彼女たちにとって最大のヒット曲である“Cannonball”も、あらためて聴くと変わった曲ですよね。

「このアルバムって、ひとつのバンドがやってるように思えないんですよね。技術的にかなりしっかりしてる人と、〈これ、どうしたんだろう……〉っていう人が混在しているというか。こんなことあるはずないだろうって(笑)。音もハイファイなものとローファイなものが両方あるし、それも計算されたローファイというよりは、わりと勢いで録ったようなものだったりする。緻密なところもあれば、そうじゃないところもあって、不思議なアルバムですよね。わけがわからないけど、なぜか惹かれるっていう」

――当時、USオルタナでは他にどのあたりを聴いてました?

「ペイヴメントやウィーザーみたいな、みんなが聴いてたやつですね。なかでも、ザット・ドッグは好きだったな。the pillowsと相性がよくて真似しやすかったから。イールズやベックもかなり好きでした」

――the pillowsの音楽性で〈ザット・ドッグがいちばん好き〉と言われたら簡単に納得できるんですが、そこでブリーダーズがトップになるのが、逆にブリーダーズの特殊さを物語っている気もします。

「たぶん、ザット・ドッグの人たちに僕の曲を聞かせたら〈いい曲だ〉と思ってくれそうな気がするんですよ。あと、僕はオアシスみたいな曲を作るのが得意だし、これは妄想だから怒らないでほしいけど、ノエル(・ギャラガー)は僕の曲の良さを理解してくれると思う。だけど、キム・ディールは絶対好きにならないだろうなって。こちらも逆に、彼女がフロント・アクトに起用しているバンドとか、まったくどれも好きじゃないし(笑)。だからもう、絶対的に敵わない人って感じなんです」

――そんなに大きくて複雑な愛情だったんですね(笑)。

「僕は天然ではないんですよ。確信犯であり、音楽的な知識を駆使してオルタナをやっているタイプ。でも、キムやブリーダーズは、そもそもオルタナなんて意識してないんじゃないかな。普通にいい曲を作り、カッコイイことをやろうと思っていて、それを世間は勝手にオルタナと呼んでいる。きっと本質的には、〈あたしたちロックンロールでしょ〉みたいな人たちなんだろうなって。そういうところがもう……天然と養殖は違うなと(笑)」

――山中さんにとってキムの最大の魅力は?

「まず声が世界でいちばん好きってこと。圧倒的なヴォーカリストは声だけで個性を放つというか。リアム・ギャラガーとかもそうだけど、他の人が歌ってもいい曲に聴こえないのに、その人が歌うと見違えるようになる」

――彼女の声はオンリーワンですよね、ピクシーズの“Gigantic”(88年)で歌ってた頃から。

「あとは、〈めっちゃセンスのいい高校生〉で止まっている人だと思うんですよね。普通はだんだん音楽的な知識が積み重なっていくものだけど、彼女はたぶんそうじゃない。ヘンに常識が身につくと、〈これはルール違反だ〉っていう制限が何かしら染み付いてくるものじゃないですか。でも、キムはスレてないというか、無邪気に音楽と戯れている気がする。そんな想像をしています」

 

他の誰かに作られる前に!と思って“Kim deal”を書いた

――山中さんはキムに、ご自身のCDをお渡ししたことがあるんですよね?

「そうなんです。noodlesがブリーダーズのフロント・アクトを務めたのにかこつけて(2003年の大阪公演)、楽屋に入れていただき、〈あなたのお名前を勝手に使わせてもらった曲があります〉と(『HAPPY BIVOUAC』を)キムに渡しました」

――実際にお会いしてみてどうでした?

「明るくてファンキーな人でしたね。それに、かなりダサイ服を着てました(笑)。〈ステージで汗だくになったその服、着替えないんだ!〉〈そのまま呑みに行く感じなんだ!〉みたいな。なんとなくですけど、オルタナの人はスターを気取るタイプがそんなにいなそうですよね。ベン・クウェラーと呑みに行ったことあるけど、彼もそんな感じだったし」

――なんかわかります。

「あと、そのときCDにサインをもらったんですよ。自分が書く側でもあるからわかるけど、あんまり昔の作品を持ってこられると〈そういうことか〉ってなるじゃないですか(笑)。だから、本当は『Last Splash』に書いてほしかったけど我慢して、当時の最新作である『Title TK』(2002年)を持っていったんです。それでキムとケリー・ディールに書いてもらって」

※キム・ディールの実姉。92年からブリーダーズに加入

――よかったですね。

「さらに、僕は女性にモテるタイプなので(笑)。ちゃんとケリーのソロ作のCDも持っていったわけですよ。そしたら、ケリーがキムに渡して、キムがサインを書いてるんですよ。キムは参加していないのに! 意味わかんないじゃないですか。渡すほうも渡すほうだし、書くほうも書くほうだなって(笑)」

――(笑)。『HAPPY BIVOUAC』のブックレットには山中さんがキムのTシャツを着た写真が載っています。

「それ、〈Tシャツくん〉を使って自分で作ったんですよ(笑)」

――『HAPPY BIVOUAC』に収録された“Kim Deal”は、どういうふうに生まれたんですか?

「ウェストンが“Liz Phair”ってタイトルの曲を作ってたんですよ。それが斬新だなと思ったし、じゃあキム・ディールは誰かに取られる前に出さなきゃって。そのうちラヴソングっぽい断片がなんとなく出来てきたんです。そこからスイッチが入って、ギター・ソロは『Last Splash』に入っている“Devine Hanmar”みたいにしてほしいって伝えました」

※90年代を中心に活動していたUSのパンク・バンド

――そうやってオマージュも挿みながら、オルタナ愛を炸裂させていたんですね。『HAPPY BIVOUAC』には、ピクシーズの“Here Comes Your Man”を意識的になぞった“Back seat dog”も収録されてましたし。

「“Funny Bunny”は、ラーズの“There She Goes”みたいな曲を作ろうと思ってたのに、プロデューサーの吉田仁さんから〈今そういうのはおもしろくないよ〉と言われて、リズ・フェアの“Whip-Smart”みたいなイントロを入れたんです。あと、“Beautiful morning with you”(の元ネタ)はダイナソーJrだったかな。リズムが途中で大胆に変わるのは、彼らの得意技だったので」

――あらためてブリーダーズのなかで特に好きな曲を教えてください。

「滅茶苦茶ありますよ。『Pod』だったら“Doe”が好きだし、“Happiness Is A Warm Gun””のカヴァーや“Fortunately Gone”もいい。『Last Splash』はさっきも話した通りで、もういい曲ばっかり。『Title TK』だったら“Son Of Three”と、アンプスでもやってた“Full On Idle”が好きですね。ロックンロールというかカントリー調で、アップテンポなんだけどギターが歪んでなくて緩くやる感じ。それをthe pillowsで真似したのが“Calvero”という曲なんです。

あと、ずば抜けて解読できないのは“London Song”。何度聴いても何拍子なのかわからないし、ドラムもわざとなのかマジで下手なのかわからない。僕らのなかでもマニアックな“Voice”という曲で真似してみたんですけど、〈このリズムはドラムスじゃ叩けない〉と言われました(笑)」

――想像以上に、ブリーダーズの影響を反映してきたんですね。

「そうですね。ただ一方で、どうしてもポップでキャッチーなものが好きだし、僕らにはロックンロールな熱さもあるので、着地点は変わってしまうのかなと。ブリーダーズはもっとクールですよね、熱唱とかしないし。僕はライヴでロックバラードを熱唱するのとかも好きなので、憧れるし真似もするけど、自分たちの本質的なところは変えられないので」

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