サウス・ロンドン・ジャズ・シーンの新たな潮流をつくるメンバーが結集!

 再生した瞬間に色々な表現が思い浮かび、あれこれと例えてみたくなる。フェラ・クティの猥雑で漆黒の、グレゴリー・ポーターの優しく深く、そして真直ぐな、かつ4ヒーローの流麗で洗練されたグルーヴを兼ね備えた、そう、間違いなくキラー・チューンだ。このジョー・アーモン・ジョーンズという鍵盤奏者が初めて放ったアルバムの1曲目にしてタイトル曲だ。

JOE ARMON-JONES Starting Today BROWNSWOOD RECORDINGS/Beat Records(2018)

 ジャイルス・ピーターソンがブラウンズウッドからザラ・マクファーレンを登場させた時の興奮を今でも覚えている。そして2018年初頭、そのブラウンズウッドから、ザラが拠点とするロンドンのジャズ・シーンを俯瞰するコンピレーション『We Out Here』がリリースされた。ディレクションは、カマシ・ワシントンへのUKからの回答と称され一躍脚光を浴びたテナー奏者シャバカ・ハッチングスである。シャバカが率いる幾つかのプロジェクトのうちサンズ・オブ・ケメットはインパルス・デビューを控え、今後ますます注目を集めていくのだろうが、その彼がレペゼンするシーンを俯瞰できる非常に画期的で意味のあるリリースだ。そのコンピレーションにエズラ・コレクティヴのメンバーとしてだけでなくソロ名義でも登場するのがジョー・アーモンだ。つまり彼もまたキーマンなのである。そして、満を持してのこのリーダー作『Starting Today』だ。当然このアルバムに参加する面々は今後このシーンから続々と名を上げていくだろうから、クレジットは隅から隅まで見ておいて欲しい。

 ところで、アートワークからザッパの『万物同サイズの法則』を連想したが……ザッパ? 関係ないでしょう、と思いきや、このメロウネスや流麗なグルーヴはジョージ・デュークか! とすると合点が行くし、敢えてマザーズを引用しスペイシーにし、ファンカデリック風味のタッチにして…シーンのヴァラエティ豊かなサンプリングセンスを思えば強ち見当違いでもないのかも??