あらかじめ欠落を抱えての始まりが4人を否応なく強くした——過去を振り切って変わり続ける宿命があるからこそ、新生したBiSが放つ瞬間ごとの輝きを見逃すな!

 マスへの侵攻を進めるBiSHを先頭に、WACK所属アクトの躍進がいよいよ目に見える形になってきた2018年……オリジネイターのBiSは思わぬ転機に瀕しています。3月の両国国技館で創始者プー・ルイを送り出し、6人で臨んだメジャー・デビュー・シングル『WHOLE LOTTA LOVE /DiPROMiSE』をオリコン過去最高の4位(これは旧BiSの“FiNAL DANCE”と並ぶ数字です)に叩き込んだのも束の間、同月には〈WACK合同オーディション〉を合格した5名が新たに加入。さらにEMPiREからYUiNA EMPiREが完全移籍するというサプライズ人事もあり、極めつけはその12名を1st/2ndに分割して投票で入れ替えを行う〈BiS.LEAGUE〉開催の発表でした。そんな衝撃も冷めやらぬなか、4月には合格者のガミヤサキ(仮)が活動を辞退、そして47都道府県を回る〈I don't know what will happen TOUR〉初日の公演を最後にももらんどが脱退……。それでも残った5人はツアーを続け、6月2日から10名/2チーム制での活動に移行したばかり。この試みは単なるサヴァイヴァル競争なのか、次の展開への布石なのか、いずれにせよ痛みを伴う構造改革の始まりです。

 

実感が追いついてなかった

——BiS1stは4人組になりました。

パン・ルナリーフィ「私はそもそも分かれるイメージができてなくて、前の6人……ももが辞めてからは5人体制に意識が集中してて、間にBiS1stでのPV撮影とかはあったんですけど、その時もまだピンときてなかったです。5月31日が5人体制でラストのライヴだったんですけど、1stの4人で集まれたのがその3日前ぐらいっていう、ホントにギリギリになってしまって」

ゴ・ジーラ「5人のツアーで地方を回っていたりして、私たちも時間がなくて」

パン「やっぱり違うグループを並行してやるのが初めてなので、ギリギリまでBiS1stをやることに実感が追いついてなかった。脳味噌ではわかってても、実際は5人で動いてたから……6月2日にお披露目のライヴをして、やっと切り替えができた感じです」

——4人というのもハンデでしたね。

パン「未知の世界でした。6人だとフォーメーションのテンプレがあるんですけど」

ゴジ「そう、〈4人、やったことねえ!〉って不安もありながら、まあ、いちばん最初のBiSも4人だったし、おもしろいからいいかと思って、はい(笑)」

——そんな状況に新メンバーの2人が入って。ハナさんは、そのまんま東さん的というか、めっちゃ良い名前じゃないですか。

トリアエズ・ハナ「はい。名前は自分でもいくつか考えたんですけど、どうも良くなくて。渡辺(淳之介:WACK代表)さんに相談したら考えてくれてたみたいで、何か〈トリイソギ・ハナ、トリアエズ・ハナ……それイイじゃん〉みたいに決まりました」

ゴジ「覚えやすい」

パン「ハナは正統派美少女というか、真面目な優等生というか、大人しそうに見えるじゃないですか? でも喋ると一気に印象が変わるほど、騒がしい、愉快な性格で」

——合宿オーディションを観てたので、うるさいのは把握してます(笑)。

パン「そう、うるさいんですよ(笑)。でも、とても歌が上手で、パフォーマンス中の表情とか気持ちを表現するのも上手い。凄くポテンシャルが高くて、かつ真面目で練習の時とかも、より良くしたいって気持ちがめっちゃ伝わってくるんです。うるさいのはアレですけど(笑)」

——うるさいのも良さですからね。ネル・ネールさんは?

ネル・ネール「もともとネット民で、その時に使ってた名前から持ってきたっていう感じです。上京してくる時、地元で繋がってた数少ない親交のある人たちに何も言えずに来たので、どこかで名前を見つけて気付いてくれたら嬉しいなって。ダイナマイト担当というのは、他のメンバーとかにも私のイメージを訊いて、自分で考えたんですけど。破壊して新しいものを創造していく役割になれたらなと思って決めました」

ゴジ「ネルは、見た目が凄い可愛いんですけど、喋ったら……頭がおかしい(笑)。変わった子ですね。でも、凄く頭がいい。身体を動かすのは苦手で、踊りもすぐできる子ではないんですけど、その日に言ったことは次までに練習してくるので、不器用だけど真面目。うん、良い子です」

 

 
左から、ゴ・ジーラ/怪獣担当、パン・ルナリーフィ/メロメロ担当

昔のBiSとは違うものになれる

——そんな4人での初ライヴはどうでした?

ゴジ「イケるぞって思いました。4人で練習した時間は少なかったけど、ネルもハナも一生懸命デビューまで毎日ずっと練習してきたし、初めてなのでミスも多かったけど、みんな自信を持ってやれました」

パン「先に2ndのライヴを観て、自信を持ったんですよね。2ndがダメだったという意味じゃなくて、1stとはまったく違うなと思って。BiSとしての目標は同じかもしれないけど、実際にライヴして、1stはいままでのBiSとは違うものになれる予感がしたし、そうならなければいけないのも確信しました。何かBiSの概念? BiSらしさ/BiSっぽさとか言われるじゃないですか。それがよくわかんなくて。うちらBiSなのに」

ゴジ「BiSなのに〈BiSらしく〉とかね」

パン「PVとかライヴとか〈2ndのほうがBiSっぽい〉って本人たちも公言してて、それは認めたとしても、1stはそうじゃないからこそ真っ白な状態から、これまでを知ってる人も知らない人も、BiSを知れる新たな機会をうちら4人で作りたいと思ってます」

ゴジ「うん。2ndっていう時点で〈1stに勝つ〉っていうセオリーみたいなのがあるし、2ndが〈BiSっぽい〉としたら、そういう立場が用意されてるからなんじゃないかな?って。まあ、ここでバチバチすると〈BiSっぽいね〉とか言われると思うんですけど(笑)、私たちには私たちの道があるはずだから、それを4人で作り上げないといけない」

パン「視野を広げないと」

ゴジ「私たちは最初のライヴから各々が自信持ってできたので、それを大事にしたいです。やっぱり新メンバーの2人が凄かったんですよ。リハーサルでは〈どうしよう、場所がわかんない〉みたいな雰囲気を出してたんですけど(笑)」

パン「本番になった瞬間、〈何この2人?〉みたいな。ビックリしたよね?」

ゴジ「〈間違えても気にしねえ!〉〈私の立ってるところが私の場所だから!〉みたいな感じで、間違えても堂々としてて、おもしろかった(笑)。私も様子を見てたんですけど、2人が1曲目から楽しそうだったので、私も〈もういいや〉と思って楽しくやれました」

ネル「2ndのライヴを観たら、超えたいとか勝ちたいとかじゃなくて、自分は自分だなと思って。ホントに私は能天気でして(笑)、初めてだからこそ楽しめたんじゃないかな?って思います。ライヴ前に〈4人体制の正解は誰も知らないから、自分が自信を持ってれば、それが正解になるんだよ〉みたいな話をしてもらって、それが凄く支えになったんですよ」

——それは良い言葉ですね。

パン「言葉がめっちゃ美化されてます。〈4人では初めてだから間違えても大丈夫〉みたいな話はしたけど」

ゴジ「そう、うちらたぶん〈大丈夫、大丈夫〉しか言ってない」

パン「言ったことにしといてください(笑)」

ハナ「私は……合宿オーディションで目立って個性とかを残せたタイプではなくて、歌が良いってところをちょっと評価していただいてただけに、そこをがんばらなきゃって焦って、ガッチガチに緊張してました。マジ胃が痛すぎてヤバかったんですけど、ステージに出てみたらもうずっと楽しくて。会場の雰囲気も優しかったです。初めてなのに名前を呼んでもらえたり、新メンバーのことも、分かれたBiS1stっていうものも受け入れてくれる空気を感じました」

ゴジ「お披露目は気持ちだけでやりきって、そこはいちばん大事ですけど、やっぱり振りがキレイに揃うところは揃ってて、自由なところは自由に爆発して、みたいにクォリティーを上げていくことが今後の課題ですね。もともと気持ちは強いし、ライヴを重ねてどんどん強くなっていくと思うので、その強さをグループのパフォーマンスとして合わせていけたら、もっと良いものになる」

 

これはこの4人の曲

BiS1st Don't miss it!! CROWN STONES(2018)

——今回のニュー・シングル“Don't miss it!!”は同じ曲を1st/2ndそれぞれの歌や振付けで披露されるわけですよね。

ゴジ「はい。引き続きゴリゴリのロックで」

パン「“SOCiALiSM”以降だんだんこういうジャリジャリ?……ギャンギャン(笑)したロック調の曲が定着してきて、サウンドがとてもカッコイイなと思ってます。歌詞もね?」

ゴジ「おもしろいよね。〈いきなりの報告怖いよ 希望は聞かれない〉とか、〈その通り!〉と思って」

パン「〈止まんない 意味プー現象〉も、〈それな!〉って(笑)」

ゴジ「〈中身は何ですの?? 開けて食べてお楽しみです!〉とか、開けてみないとわからない感じはいまの私たちに合ってますね」

パン「あと、2ndはサビを2人で歌ってたりしてるんですけど、1stは全部1人ずつ歌ってその子にしか出せない色が出てるし、4人の色をブッ込んだ印象深い曲になったと思います。まあ、また投票でメンバーは変わるとしても、これは〈この4人の曲だな!〉と言えるくらいの曲です」

ハナ「ちゃんとしたレコーディングが初めてで、“TiME OVER”みたいな曲調は馴染みがなかったので、大丈夫かな?って不安でした。でも、“Don't miss it!!”もどっちも楽しかった。語彙力がないけど(笑)良い曲です!」

——ハナさんは合宿で歌の印象も強かったんですけど、ネルさんの歌声はこんななんですね? いきなりネジが外れた感じというかカッコ良かったです。

ゴジ「暴力的ですよね(笑)」

ネル「合宿の時は全然こんな感じじゃなかったです。でも、いま考えたら、期待を裏切る感じで逆に良かったかなって」

パン「ネルは“TiME OVER”のほうが天才。何か、歌の輪郭を変えられるんですよ」

ゴジ「コロコロ個性たっぷりのネルと、ホントに実力があって良い声してるハナなんで、2人の違いが凄い現れてておもしろいですね」

——カップリングの“TiME OVER”は2ndのペリ・ウブさん作詞ですけど、状況的には1stにハマる内容でもありますね。

パン「1stは2人もいなくなってしまったので」

ゴジ「そう、始まる前からネガティヴなニュースが続いて、観てくださってる皆さんを不安にさせちゃったのは残念だったなって思うんですけど。いつも取材していただく時って、〈次は誰かいないかもしれないんで〉とか言ってて……」

パン「毎回こうやって言うからいけないのかな?」

 
左から、トリアエズ・ハナ/カンパイ担当、ネル・ネール/ダイナマイト担当

——ただ、投票結果を受けて9月からは5人ずつに分かれるようなので、この4人組そのものが次はないんですよね。

ゴジ「はい、だからいまの4人をいま観てほしいです」

——チーム感を育てないといけない状況と、実際は個人の競争だという前提を、どう心の中に共存させてますか?

パン「ですよね、確かに。でも、〈BiS.LEAGUE〉も始まってはいるけど、結果が出るのはまだ先だし、ちょっと実感が湧いてない。いまはこの4人で、って考えていますね」

ゴジ「それでいいんじゃないかな。まとまりがなくなったらBiS自体が伸びていかないし、いまはこの4人でがんばることが、それぞれが目立つことにも繋がると思うので、いまはこの4人がいちばん大切です。それしか考えてないです」

パン「どうしよう、次のインタヴューで3人になってたら……って、言っちゃいましたね(笑)」

ゴジ「わかんない、BiS3rdができてるかもしれない(笑)」

パン「ソロもあるかもしれない」

ゴジ「かもしれない。何が起こるかわからないけど、それを何か楽しんでいただけるものにするのが私たちの仕事なので、自分たちも楽しんでいきたいですね」

BiSの近作。