COLUMN

全国を循環する、ジャズ熱 ―東西南北、日本ジャズフェス前線を聴く― 首都圏だけじゃない。地方のジャズフェスが面白い。

南郷サマージャズフェスティバル2018より

全国を循環する、ジャズ熱 -東西南北、日本ジャズフェス前線を聴く-

首都圏だけじゃない。地方のジャズフェスが面白い。

 コンサートに出かけるには結構なエネルギーがいる。だからある程度の年齢にでもなると、ついつい腰が重くなるのは否めない。でもそれに任せていると、聴き手としての感性は劣化せざるを得ない。だから音楽好きな方には、たまにはフェスに出かける事をお薦めしたい。何故って?そこには日常から隔離された非現実空間があり、ちょっと頑張って出かけるだけの楽しみがあるからだ。コンサートホールのように椅子に座っていなくとも、席を立って客席の周辺でブラブラしながら聴いたっていい。野外フェスなら寝っ転がって聴いていたって誰も文句は言わない。演奏する側も非現実を含んでいる。突然のセッションが生まれたり、とんでもないハプニングが起きたり。突然の豪雨だって見方を変えれば絶対に屋内のホールでは起こらない演出だと思って濡れてしまえばいい。フェスならば許される。

 ここまで読んで、夏の風物詩ともいえるロック&ポップスのメガフェスが頭に浮かび、そんな元気はもう無いよとあきらめるのはちょっと早計だ。例えばジャズを主体としたフェスや街を丸ごとジャズ浸けにするジャズ・ストリート的な企画も沢山開催されている。好景気の時代にはリゾート地で世界の名手たちを集めたメガフェスも行われていたが、いまはそんな時代ではなく逆に地方自治体やジャズ・ファンの共同体がほぼ手作りでつくり出す企画が増えている。そして夏に集中せず春から晩秋にかけてまんべんなく開催されるのも特徴だろう。夏は野外フェスが多いが街中にミニステージを用意したり地元の飲食店を巻き込んで開催するジャズ・ストリート型のイヴェントは春や秋が多いようだ。そこでここから先はそんなフェスのなかでも地方で開催されているものを紹介していこう。

 地方系ジャズフェスの老舗といえば、まず名前を挙げるべきなのが青森県八戸市で開催される南郷サマージャズフェスティバル(7/28、前夜祭7/27)。今年で29回目となるこのフェス。開催当時は八戸から内陸部へ入った南郷村で開催される「村のフェス」でありながら、豊かな緑に囲まれたステージにトップクラスのアーティストが登場することで注目された。そのクオリティは維持されていて、今年も前田憲男トリオやマンハッタン・ジャズ・クインテット、ヴィンセント・ヘリング&エリック・アレキサンダーなどの出演が予定されている。しかも客席を取り囲むように地元の産物を使った屋台や出店が並ぶのも地方フェスならでは。主演前のプレイヤーたちがパラソルの下で乾杯していることも珍しくない。そしてなんと小学生以下は無料だから、家族旅行の一部として出かけたり、ここから東北の夏祭りをはしごするのもいいだろう。

 次にご紹介するのは長野県の斑尾高原で開催される斑尾ジャズ(8/18、19、前夜祭8/17)。斑尾といえば2003年まで開催された「ニューポートジャズフェスティバル in 斑尾」を思い出すが、それが終了した4年後の2007年に地元有志や全国のジャズ・ファンが手作りで立ち上げたのがこのフェスだ。若干のプロのプレイヤーも出演するが、メインとテラスの二つのステージに登場するのは全国から集まったアマチュアプレイヤー達。トリオからビッグバンド、さらにはゴスペル・クワイアも登場するが、どのグループもレベルの高い演奏を聴かせてくれる上になんと入場無料。高原の爽やかな風を感じながらノンビリ楽しめるだろう。

 この数年、寺久保エレナを筆頭に多くの若手プレイヤーを輩出している北海道。それを裏付けるのが2007年から開催されているサッポロ・シティ・ジャズだ。夏だけでなく冬期のほか、年間を通じて様々なイヴェントを展開。さらに札幌市南区の「札幌芸術の森」で活動する小中学生対象の「札幌ジュニアジャズスクール」との連携など、多方面の展開を見せているのが大きな特色だ。夏場のイヴェントは200人を超えるプレイヤーによるジャズ・パレード(7/14)から始まり、全国から集まった300組を超えるプロ・アマが札幌市内10カ所のステージで奏でるパークジャズライブ(7/14、15)。そして夏期のフィナーレとなる札幌芸術の森野外ステージでのNorth JAM Session(7/22)。今年は綾戸智恵、上田正樹、熱帯JAZZ楽団ほかの出演が予定されている。初夏の札幌は訪れるのに絶好の季節。この街のジャズ熱の高さを体感したい。

 9月に入るが九州地区で開催のフェス二つをご紹介しよう。まずは九州最大の繁華街として知られる福岡県博多・中州を舞台にした中州JAZZ(9/14、15)。2010年からの開催だが昨年は2日間で都合19のステージに一流どころのプレイヤーが登場。その全てがなんと無料で楽しめるという太っ腹なフェスだ。ステージにはそれぞれスポンサー企業がつくところなど究極の都市型フェスだといえるだろう。このスタイルをどうして東京で実現できないのか甚だ疑問だ(墨田区・錦糸町でやはり無料開催しているすみだストリートジャズフェスティバル(8/18、19)という例外はあるが)。もう一つは鹿児島で昨年から開催している鹿児島ジャズフェスティバル(9/8、9)。ピアニストの松本圭使が実行委員長で、30名を超えるプロ/ミュージシャンが参加してここだけのセッションを繰り広げる予定だが、こちらもこうした全てのステージの観覧が無料だというから驚きだ。

 さて、結局野外ステージがある大きなフェスばかりになってしまったが、地元のホールなどを利用した小規模フェスも沢山ある。例えば写真の街としても知られる北海道・東川町で開催のTAISETSU JAZZ FESTIVAL(7/7)。こちらは地元の自家焙煎珈琲店TAISETSU COFFEEが企画運営するものだが、イギリスからこの地に移住したオーナーの想いが結実して、今年第一回開催に漕ぎ着けた。出演者の中には2月にECMからアルバムをリリースした福盛進也も来日して出演するという。どんな人脈を持っているのか大いに気になるところだが、とても面白そうなラインナップだ。

 さぁ、ネットで情報が行き交う現在。探してみればまだまだ大小様々なフェスが見つかることだろう。そもそもチケット代もリーズナブルだし、先述したようにもっと沢山の人に音楽を楽しんで欲しいからと無料開催を実現する主催者も少なくない。是非是非出かけてみたい。

 


■サッポロ・シティ・ジャズ2018

SAPPORO CITY JAZZ 2018 夏
7/14(土)-22(日)
会場:札幌芸術の森野外ステージ、札幌市教育文化会館、札幌市内中心部ほか
主要プログラム:パレード、パークジャズライブ、パークジャズライブコンテスト、ノースジャムセッションほか
〈North JAM Session〉
7/22(日) 12:00開場 13:00開演 雨天決行
会場:札幌芸術の森 野外ステージ
【出演】
○綾戸智恵
○熱帯JAZZ楽団 ゲスト:エリック・フクサキ
○上田正樹
○ストックホルム・ジャズ・オーケストラ・クインテット
○ジミー東原オールスターズ
○マーサー・ハッシー楽団
オープニングアクト:札幌ジュニアジャズスクール

SAPPORO CITY JAZZ 2018 冬
12/16(日)-22(土)
会場:札幌市民交流プラザ
主要プログラム:THEATER JAZZ LIVE、ビッグバンド・ネクスト、ジャズシンポジウム、音楽体験ワークショップ、ジャズライブラリーほか

sapporocityjazz.jp/

 


■TAISETSU JAZZ FESTIVAL
7/7(土) 13:30開場 14:30開演 19:15終演予定
会場:東川町複合交流施設せんとぴゅあⅠ内コミュニティーホール
FB:www.facebook.com/events/398456453962853
【出演】
○Nilo&ふかまちけい
 Nilo(g,p)/ふかまちけい(g)
○The Ben Janson Trio
 板谷 大(p)/Masaki Kai(b)
○Nilo Band コテンポラリーJAZZ
 Nilo(vo)/酒井雅子(p)/甲斐正樹(b)/八巻志帆(cl)/福盛進也(ds)
○Thierry Le Gall
 Masako Sakai(p)/Masaki Kai(b)

 


■南郷サマージャズフェスティバル2018
7/28(土)雨天決行 12:00開場 14:00開演 20:30終演予定
会場:カッコーの森エコーランド 野外ステージ(八戸市南郷)
一般5,000円(当日券 6,000円)/中高生2,000円(当日券 3,000円)/小学生以下無料
FB:www.facebook.com/NangoJazz
Twitter:@NangoJazz

【出演】
○Vincent Herring and Eric Alexander The Battle
 ビンセント・ヘリング(a-sax)/エリック・アレキサンダー(t-sax)/小林陽一(ds)/中村健吾(b)/泉川貴広(p)
○Dock In Absolute
 デヴィッド・キンツィガー(b)/ジャン・フィリップ・コッホ(p)/ネイト・ウォン(ds)
○泉沢果那 ニューオリンズピアノカルテット
 泉沢果那(vo/pf)/篠原裕(g)/大石竜輔(per)/奥村将和(ds)
○前田憲男トリオ
 前田憲男(p)/加藤真一(b)/山田玲(ds)
○Manhattan Jazz Orchestra
 デビッド・マシューズ(p,leader)/セネカ・ブラック(tp)/ターニャ・ダービー(tp)/デイヴ・スミス(tp)/マイケル・ロドリゲス(tp)/ジョン・フェチョック(tb)/ラリー・ファレル(tb)/ジム・ピュー(tb)/デイヴ・テイラー(b.tb)/クリス・ハンター(a.s,fl)/ボブ・マラック(s.s,t.s,fl)/スコット・ロビンソン(b.cl,b.s)/ジョン・クラーク(fr.h)/ビンセント・チャンシー(fr.h)/マーカス・ロハス(tuba)/マイク・ホール(b)/テリー・シルバーライト(ds)
○オープニング:西園小ジャズバンド&中沢中学校ジャズバンド部&スウィングベリージャズオーケストラ

〈前夜祭〉
7/27(金) 18:30開場 19:00開演 20:45終演
会場:カッコーの森エコーランド野外ステージ
入場料:一般500円(高校生以下無料) ※一般の方でも本祭入場前売券をお持ちになると無料で入場できます
【出演】
○SKATIC INVADERS (スカティックインベーダーズ)
○八戸JAZZ楽団

 


■斑尾JAZZフェスティバル
8/17(金)16:00開演
   18(土)10:00開演
   19(日)10:00開演
会場:新潟・長野県 斑尾高原特設野外ステージ(県境)/斑尾高原ホテルテラス/まだらお山の家(交流パーティー)
入場無料
【出演】37バンド(300人以上)ビッグバンド、コンボ
【ゲスト】瀬川昌久(ジャズ評論家)福井ともみ(ジャズピアニスト)
www.madaraojazz.com

 


■NAKASU JAZZ 2018
9/14(金) 15(土)
会場:博多・中州周辺(屋内/屋外特設ステージ)
入場無料
nakasujazz.net/

 


■鹿児島ジャズフェスティバル2018
9/8(金) 9(土)
会場:WELCOME STAGE、MAIN STAGE、SATELLITE STAGE
入場無料
www.kagoshimajazzfestival.com/