ミミキキ・トレイニーズ・ダイアリー

人里離れた地で異端のテクノ・エピックを編み上げたGLMYGLMの話

以前にこのブログで取り上げた青森・平川のプロデューサー/DJ、GLMYGLM。彼が完成させた新作『Enigma,Stigma,Stigmata,Errata,Eraser』があまりに破格、あまりにも強烈で、この一週間ぶっ飛ばされ続けています。

この新作、盟友・DIZOとのHELLA GOODNESS名義で発表したアルバム『Exodus』から約1年ぶり、GLMYGLM単独では初の作品で、なんと5曲+ボーナス・トラック1曲をミックス形式で繋いだ約45分のテクノ・エピック! 謎めいたタイトルはアナーコ・パンクの代名詞的存在であるクラスへのオマージュで、人里離れた土地に暮らす彼自身の思想や心情を反映させることにコンセプトが置かれているのだそうです。テクノ/ハウス・シーンを俯瞰しても、特異なスタンスで制作された一枚と言えるのでは?

厳しい冬の間に制作されたという本作は、暗い山間にちらちらと舞い始める雪のような“Enigma”のアンビエンスで幕を開けます。長い冬の始まりを思わせるダークなトーンを維持しつつ、少し早めのキックが差し挟まれることで徐々にギアが上がり、突如として現れる狼の牙のようなウォブル・ベースに身体が反応! 通常はEDMブロステップといった派手なパーティー・ミュージックで使われることの多いこの手のサウンドを、ある意味その対極に位置するような音楽でこれほど有効に活用してみせるとは。ジャンルは違えど、oOoOO(オー)のウォブル・ベース使いを思い出す暗黒世界のアグレッション。

続く“Stigma”は、丹念なシンセのパンニングとリアルタイムで変化するフィリタリングの音響彫刻が、聴き手をぐいぐいと瞑想的な領域へと引き込んでいくディープ・テクノ。派手な仕掛けがあるトラックではないけど、これはフロアで爆音で浴びたらズッポリいきそう……。

そして森の最深部“Stigmata”へ到達。僕はこの曲を聞いた瞬間、レジデント・アドヴァイザーの2013年度ベスト・アルバムにも選ばれていたジェイムズ・ホールデンの名盤『The Inheritors』がすぐさま脳裏に浮かびました。“Stigmata”の呪術的なヴォイス・サンプルやパーカッション類とエレクトロニクスのブレンド具合が、古代の異教徒の儀式にインスパイアされた『The Inheritors』のアプローチに繋がっていて、そうか、ここを攻めるのかと勝手に納得。

吹雪をしのぎながら洞穴で暖を取るかのようなテック・ハウス“Errata”を挟み、本編ラストの“Eraser”へ。実際はそれほどエディットされているわけではないのですが、アクセル・ウィルナーフィールドが得意とするループの魔術が目の前をよぎり……気が付けば永遠に続くかとも思われた計5トラックに渡るミュージック・ジャーニーは終わりを迎えます。

ボーナス・トラックは前述のブログにも書いた大好きな曲“Further”のリミックス! 同郷のシューゲイザーガレージ・ポップ・バンド、THE EARTH EARTHAyako Harada(ご結婚された?)によるポエトリー・リーディングはそのままに、タナトスの存在感たっぷりだったオリジナル・ヴァージョンをインダストリアルな鉄の世界に改変。無機質で無慈悲なビートが安直なカタルシスを回避して、結果的にボートラ含め1枚のアルバムとして聴き通したような読後(聴後)感が後を引きます。ビートで思い出したけど、GLMYGLMが本当に凄いのは、テクノ/ハウス方面のプロデューサー(それもユニークな)の顔を持ちながら、ビートメイカーとしての一面も持っているということ(ようはアンドレスDJディズばりの怪傑)。HELLA GOODNESSの“斜陽”はファスト風土以降のサバービアを描いた広く聴かれるべきハイプなしの名曲ですよ! こっち方面のフル・アルバムもいつか聴きたいなぁ。

最後に大事なことを。この作品、今回貼った音源はあくまで7分弱のティーザー。本チャンのフィジカル(CD-R)は彼の地元メインで蒔かれているようですが、ウェブでも販売する模様なので、気になった方はぜひ彼のSNSなどチェックしてみてくださいね。というかどっかのレーベルからアナログで出してほしい!

熱が入り過ぎた……今週はこのへんで。

【プロフィール】
船越 太郎

船越 太郎 (ふなこし たろう)

Mikiki編集部員。タワーレコード入社後、店舗バイヤーを経てオンラインのニュース担当となり、このたび〈耳利き〉への第1歩として編集部で勉強することに。ラーメンより蕎麦派。ジャズが流れているシャレオツ蕎麦屋より断然老舗派です。

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