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映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」 歴史に刻まれたキューバのミュージシャンたちによる最後のツアー

©2017 Broad Green Pictures LLC. All Rights Reserved.

歴史に刻まれたキューバのミュージシャンたちによる最後のツアー
「人生の花は誰にでも必ず訪れる…」

 2016年のハバナ、夕焼けに染まるマレコン通りを乗り越えて打ちつける荒波。映像に重なって流れる、フィデル・カストロの訃報を伝える声。今しも、ひとつの時代が終わりを告げようとしていた。

 キューバ音楽の黄金期とも呼ぶ1950年代を、身をもって知る重鎮アーティストらが招集され、世界中に大きな衝撃と感動をもたらしたプロジェクト『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。1997年グラミー賞に輝いたアルバムと、さらなる破格の成功を決定づけた99年の映画から、早20年近い歳月が流れたことになる(※国内盤CD発売は97年10月、映画日本初公開は2000年1月)。

 老アーティストを再び第一線へと引っ張り出し、最高の花道をつくったブエナ・ビスタ。キューバ音楽の、とりわけ“ソン”の価値を再認識させたブエナ・ビスタ。その後CDは400万枚のセールスを上げたとも言われる。98年アムステルダム公演をきっかけに、2ヵ月後にNYカーネギー・ホールでの歴史的公演が実現。ワールド・ツアーはロングランを続け、世界を駆け巡る(※分割形式ながら2000年8月に来日)。かくして、プロジェクトは最終局面、アディオス(さよなら)・ツアー期を迎えた(※2016年3月に日本公演を終えるも、今年6月初旬までツアーがブッキングされていた)。

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 最新ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』は、社会現象を巻き起こした『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の続編だ。ただし、先の作品を補完するという大切な意義がある。老アーティストらの後の人生を追いつつ、個々の出自や“ソン”のルーツに迫り、歴史的背景も貴重なフィルムを交え回想されているのだ。

 前作が完全にライ・クーダー&ヴィム・ヴェンダースの視点で、キューバ音楽への憧憬をアピールする映画に仕上がっているとしたら、最新作はよりキューバの内奥へ、歴史のさまざまな局面へと観る者に興味を喚起させるに足るドキュメントと言えるだろう。なんといっても各方面のアーカイブから掘り出された、あまたの秘蔵映像にきっと気圧されするはずだ。最新作でヴィム・ヴェンダースは製作総指揮に回り、ロンドン出身のルーシー・ウォーカーが監督を務める。当プロジェクトの発起人の一人、ライ・クーダーは裏方のように主役たちのやり取りを静かに見守り、ワールド・サーキットのプロデューサー、ニック・ゴールドは感動の瞬間を見届けた証言者の役回りに徹する。そして、もっとも重要なプロジェクトの推進者であるバンド・リーダー、フアン・デ・マルコス・ゴンサレスの存在に、今回ようやく光が当てられた。

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 実質この最新作の進行役は彼で、彼が全メンバーを繋いだ要の人物であることは火を見るより明らかだ。88年シエラ・マエストラの一員として初来日し、ブエナ・ビスタ以降もアフロ・キューバン・オール・スターズ等で活躍。パーフェクトな英語によるフアン・デ・マルコスの発言や、厳格なリーダーシップぶりが、懐古の美談に彩られがちな作品に真実味を添えてくれる。

 前作では語られなかった、社交クラブ(生演奏付きダンスホール)の内実。1932~62年に実在したブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブが、キューバ革命前の人種差別を象徴する場であったこと。往時の有名なトロピカーナやナシオナルとの違いや、“ソン”という音楽の来歴。キューバと米国の関係性の変化が、音楽シーンに何をもたらしてきたのか。それら命題を解く鍵は、老メンバーらの証言と自然とオーバーラップしてくるのだった。

 老メンバーの独白はそれぞれあまりに個性的で、パフォーマンスにも増して芳醇だ。胸を突かれるシーンにも遭遇することだろう。コンパイ・セグンド翁が自慢げに漏らす、自作曲《チャン・チャン》にまつわる苦笑を禁じ得ぬ秘話。名花オマーラ・ポルトゥオンドが語るルーツや、名ボレロ《20年》を選んだ理由、姉アイデーとの別れ。「恨みで歌が嫌いになり、音楽にすっかり幻滅していた」と、不遇の時代を振り返るイブライム・フェレール。そんなイブライムとオマーラの旧交が窺い知れるシーンの数々は、本作のハイライトシーンに違いあるまい。

 98年のアムステルダム公演に先立ち、97年英国のジャズクラブ、ロニー・スコッツで行ったライヴで、彼らはその後の成功を確信していたという事実。米国カーネギー・ホール公演で大喝采に包まれた際、キューバ国旗をステージ上の彼らへ手渡した人物は誰だったのか。またあの時、メンバーたちは何を思ったか……。

 今は亡き面々の最期の活動が紹介され、2015年米国ホワイト・ハウスに招かれた折の映像、2016年ハバナはカール・マルクス劇場でのアディオス・ツアーの模様が、本作を力強く締めくくる。始まりがあれば、終わりもまた訪れるのだ。人生最後の花を咲かせた珠玉の歌と演奏、言葉を噛みしめるとしよう。

 前作未見の方は、DVD等でご覧になってから本作に臨まれるようお薦めする。前作もこの最新作も、今後1世紀、記憶に刻まれる作品なのだから。

 

映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」
製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース他
監督:ルーシー・ウォーカー
出演:オマーラ・ポルトゥオンド(ヴォーカル)/コンパイ・セグンド(ヴォーカル、トレス)/ルベーン・ゴンザレス(ピアノ) /マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール(トランペット)/バルバリート・トーレス(ラウー)/エリアデス・オチョア (ギター、ヴォーカル)/イブライム・フェレール(ヴォーカル)
配給:ギャガGAGA★(2017年 イギリス 110分)
©2017 Broad Green Pictures LLC. All Rights Reserved.
gaga.ne.jp/buenavista-adios/
◎7/20(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー!

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