INTERVIEW

BIM『The Beam』 着飾ることなく自分自身と対話した、自然体のソロ・デビュー作を語る

BIM『The Beam』 着飾ることなく自分自身と対話した、自然体のソロ・デビュー作を語る

 「いままでやってこなかったことで言うと〈自分との対話〉がテーマだったところはありますね。自分で目をつぶってた部分に目を向けるというか」。

 BIMの初ソロ・アルバム『The Beam』は、非常にプライヴェート感の強い作品だ。『The Beam』というタイトルは、彼がTHE OTOGIBANASHI'Sの活動を始める前に名乗っていたMCネーム〈BEAM〉にあやかったもの。ジャケットも川崎にあるBIMの実家の外で撮影され、同じく実家のリヴィングでジャケを撮影したというグループの初作『TOY BOX』(2013年)との繋がりを持たせている。

 「これは後付けで言うと〈部屋から飛び出たぞ〉って感じです(笑)。自分が4人いるのは〈自分との対話〉をイメージしてて、ボンネットの上にいるのは普段の地元にいる俺、車に乗ってるのはBIMで、それを見てる俺は嫉妬してる感じ、キメてる奴は雑誌に出てる時のBIMみたいな(笑)」。

 本作にも収録された昼下り系チル・トラック“Orange Sherbet”(2016年)をはじめ、以前から単発的にソロ曲を発表してきたBIMだが、アルバムの制作を意識しはじめたのは昨年の冬頃のこと。「グループでやってきたことと、いまやりたいことのギャップが大きくなってきたのが理由のひとつ」と語る彼は、メンバーを含む周囲の人たちの生活や将来に対する考え方が時間の経過と共に変化していくなかで、「でも、俺は別に変えようとも思わなかったので」と、まるで日記を書くように日常的な思いを曲にする作業に没頭してきた。

 「俺は良くも悪くも超普通なんですよ。平和なところで育って、学生の頃はスポーツして。そんな俺だからこそ、自分がどう考えてるのかを客観的にディグったら、共感してくれる人がいるんじゃないかと思って。USのヒップホップみたいな煌びやかさとは違ったカッコ良さもあると思うから、着飾らないように自分のことを掘ろうと思って」。

 当初はラップもビートもすべて自作で固める予定だったものの、「それだと暗すぎて(笑)」ということで、結果的に完成した『The Beam』は、盟友VaVaやOMSB、JJJらのトラック提供を受けた前半戦と、完全に自作の楽曲が並ぶ後半戦の2部構成に。特に前半は先述の“Orange Sherbet”や、「Zeebraさんの“真っ昼間”みたいに何気ない日常を書こうと思った」という“サンビーム”など、どこか夏の甘い気怠さを想起させるような楽曲が並ぶ。低空を飛行するようにたゆたうフロウは相変わらず気持ち良く響いてくるが、なかでも唯一の客演となるPUNPEEのスムースなフックも絡む“BUDDY”は、親密な〈相棒〉感に思わずほころぶ逸品だ。

 「ゲストは入れないつもりだったけど、やっぱりずっと一緒に曲作りたかったし、このタイミングでお願いしたいって気持ちが出てきて。もともとPUNPEEくんにPVを見てほしくてTHE OTOGIBANASHI'Sが動き出したところもあるし。歌詞も俺の部屋に来てくれて一緒に作ったんです」。

 さらに、映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」から借用した〈夢ある若者〉と〈成功者〉の対話という題材が秀逸な“Beverly Hills”や、これまでの自身の活動を回想した“D.U.D.E.”など、本作の裏テーマだという〈過ぎた時間〉の重みと寂しさを描いた曲でメランコリックなムードを醸成していき、より内省的な後半戦へ。夢を諦めた地元の友人たちに宛てた“BLUE CITY”で、モラトリアムを抱えた自分を含めそれぞれの道に祝福を贈り、アルバム本編は“Magical Resort”で世知辛い現実から夢想のリゾートへと旅立って終わりを迎える。それはある種の現実逃避とも取れるが、BIMはそこに自分自身の生き方を見い出している。そう、何も現実を見ることだけが正しさではないし、正解はひとつじゃないのだ。

 「こういう言い方は安っぽくなっちゃうかもしれないけど、俺は本当にヒップホップがあって良かったって思ってて。自分は何に関しても1位になったことがないし、スポーツをやってて〈1位じゃなくてもアリ〉なんて感じたことはないけど、音楽は〈俺が好きなものが1位〉でいいし、そういうことが許されるものってあんまり多くないと思うんですよ。アメフトは俺の身長で勝負するのは難しかったけど、音楽はやり方次第でどうにかなる。勝ち負けじゃないんで」。

 


BIM
93年生まれ、神奈川は川崎市高津区出身のラッパー/ビートメイカー。高校生の時に友人のin-dらとラップを始め、THE OTOGIBANASHI'Sを結成する。グループでは2013年に『TOY BOX』、2015年に『BUSINESS CLASS』と2枚のアルバムを発表し、CreativeDrugStoreの中心人物としても活動。ソロでは『CONCRETE GREEN 13』に“出来ない男”を提供し、2017年1月にVHSシングル“6 Words Holiday”を限定リリース。並行してdooooやJAZZ DOMMUNISTERS、TWINKLE+、kZmらの楽曲にもラップやビートメイクで関わる。先行でMVを公開した“Bonita”も話題を呼ぶなか、このたびファースト・ソロ・アルバム『The Beam』(SUMMIT)をリリースしたばかり。

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