©Matthias Heyde

ドイツを代表する室内合唱団、待望の日本公演~ベルリンRIAS室内合唱団への期待

 名前を聞かない日はない。

 ドイツ音楽界におけるベルリンRIAS室内合唱団とは、そのような存在だ。ドイツにとどまらず、〈ヨーロッパ〉音楽界といっても過言ではないだろう。筆者自身、事前に彼らが出演すると知らなかったケースを含め、ヨーロッパでいったい何度聴いたことだろうか。

 バッハ没後250年の2000年の受難週に、ベルリンのコンツェルトハウスで聴いた《マタイ受難曲》。モーツァルト生誕250年の2006年に、インスブルックの古楽音楽祭で聴いた《ドン・ジョヴァンニ》。南仏のエクサンプロヴァンス音楽祭で聴いたヘンデル《ベルシャザール》。いずれも作品の持つ力を思い知らされた感動的な公演だったが、どの場面にもRIASがいた。精緻で、透明感があり、一方でメンバーそれぞれの自発的な力も生かされた、美しくも雄弁な合唱。25人! という精鋭メンバーにもかかわらず、ヘンデルでは大伽藍のような重厚さと射しこむ太陽光のような明るさを兼ね備え、バッハではくっきりした輪郭と響きの美しさ、確信に満ちた音楽作りで魅了する。なにより、RIASはどんな作品のどの場面でも、命ある有機体として存在感を発揮していた。

 そのベルリンRIAS室内合唱団が、12年ぶりに日本にやってくる。今年で創設70年。ヨーロッパを代表する名門室内合唱団のひとつだが、そのポジションに甘えることなく常に前進を続けてきた。とりわけドイツで古楽がさかんになって以降の活躍はめざましく、革新的な演奏で古楽界を刺激し続けるルネ・ヤーコプスや、ドイツ古楽のスペシャリストで、2007~2015年までRIASの首席指揮者をつとめたハンス・クリストフ=ラーデマンといった指揮者や、ベルリン古楽アカデミー、フライブルク・バロックオーケストラといったドイツを代表する古楽オーケストラと共演を重ねている。その経験で培ったクリアでダイナミックな響きと自在な音楽作りは、RIASの強みのひとつだ。一方で彼らのレパートリーは、ルネッサンスから同時代ものまでおよそ500年を網羅する。まさにスーパー室内合唱団である。今回は36人で来日する。

 今回東京オペラシティで披露されるプログラムはすべてアカペラで、バッハの各モテットの間にメンデルスゾーンとブルックナーを配した、独墺系室内合唱団の〈王道〉と言うべきもの。昨シーズンから、イギリス生まれで、イギリス・ルネッサンスや現代ものにも強いジャステイン・ドイルが首席指揮者に就任、そのドイルに率いられての初めての来日になる。就任披露公演で大成功を収めたこのコンビで体験するアカペラの名曲は、鮮烈な記憶として心に残ることだろう。

 


LIVE INFORMATION

ベルリンRIAS室内合唱団
○11/2(金) 19:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール
出演:ジャスティン・ドイル(指揮) ベルリンRIAS室内合唱団
[曲目]
J.S.バッハ:モテット《主に向かって新しき歌をうたえ》BWV225
メンデルスゾーン:3つの詩編 op.78
J.S.バッハ:モテット《来たれ、イエスよ、来たれ》BWV229
ブルックナー:モテット集
 ロクス・イステ(この場所は神が作り給う)WAB23
 アヴェ・マリアWAB6
 キリストはおのれを低くしてWAB11
 パンジェ・リングァ(舌もて語らしめよ)WAB31&WAB33
 エッサイの株からひとつの芽が萌えいで WAB52
J.S.バッハ:モテット《イエス、わが喜び》BWV227

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