我らのミステリアス・スーパーヒーローH ZETTRIOが10月14日(日)に、昨年に引き続き〈秋の大感謝祭〉を開催。今年は〈IN KANAGAWA〉ということで、神奈川県・相模女子大学グリーンホールでの実施となった。
開場前からグッズ購入列には長蛇の列、ホールは人・人・人の超満員。なかには、H ZETTRIOのライヴではおなじみの鼻ペイントをした人や、メンバーのコスプレをした人も。こうして見ると彼らが老若男女、幅広い層から愛されているのがわかるが、今回は子供のファンが多いようにも見受けられる。そう、H ZETTRIOはいまや子どもたちにとってもミステリアス・スーパーヒーローなのだ。
舞台上はメンバー3人の持ち場がそれぞれ2階建ての作りになっており、1階にはグランドピアノ、黒のドラムセット、ウッドベース、2階にはキーボード&ショルダー・キーボード、白のドラムセット、エレクトリック・アップライトベースという構成。どうやらメンバーは1階と2階を行き来してパフォーマンスを行うようだ。客席にセッティングされたケミカルライトをポキッと折って準備したところで、開演時間。
突如、バック・スクリーンに宇宙の映像が流れると、どこからか飛来する赤・銀・青の鼻。映像に合わせてH ZETT NIRE(ベース/赤鼻)、H ZETT KOU(ドラムス/銀鼻)、そしてH ZETT M(ピアノ/青鼻)とそれぞれの名前が呼ばれると、3人のメンバーが登場する。譜面をヒラヒラさせて遊ぶM。演奏開始をいまかいまかと待ち構えるKOU。微動だにしないNIRE。すると祭は、大自然の映像をバックに“Make My Day”から幕を開ける。映像に合わせて3人は雄大かつ優雅に演奏するが、徐々に激しさを増していく。宇宙からやってきた3人は地球の大自然を経て、都会へ。そして遊園地の映像にスイッチするとベース・ソロ。宇宙から来たヒーローは、一気に身近な道化師たちに変貌するのであった。そのまま次の“Get Happy!”に突入すると、映像は夜空、そして花火へと変化。3人のスリリングな演奏に合わせ、オーディエンスは早速3色のケミカルライトを左右に振る。手数多めのピアノ・ソロでは、これまで座っていたH ZETT Mが立ち上がって演奏。これまた手数の多いドラム・ソロを経てフィニッシュする。
続いてH ZETT Mがステップを踏むと、突如速弾きがスタート。そのまま“炎のランニング”がスタートする。まるでおもちゃの行進のように曲は進行していき、ピアノを弾き終えたH ZETT Mは2階へ上がる・上がらないを繰り返して遊ぶ。それに合わせて「ヒュー!」と声をかける観客たち。ようやく彼が2階へ上ると、おもむろにショルダー・キーボードを持ち、ディレイの効いたフリースタイルなソロを披露。背中で弾いたり超速弾きを観せたりと、彼の芸に場内は大盛り上がり。かと思えば今度はNIREのフレーズをKOUがドラムスで追いかけるソロ回し。この間に1階に下りたH ZETT Mは続くピアノ・ソロでガーシュウィンの名曲“ラプソディー・イン・ブルー”をオマージュしたフレーズを入れたり、椅子を傾けて演奏したりと、またまたアクロバティックな演奏で観客を沸かせていた。続いては自己紹介がてらソロ回しをする“Trio, Trio, Trio!!!”。謎のリズムで観客に拍手を求め、それに合わせて「大感謝~」と歌い始めるH ZETT M。ちらちらとH ZETT NIREのほうを見ると、NIREは恥ずかしそうに低い声で「大感謝~」。「KOUさんも」と言うと今度はKOUがかわいい声で「大感謝~」。最後にH ZETT Mが「大感謝~」と歌い上げると、会場と一体となって「フー!」の掛け声と共にパフォーマンスをしていく。
ここで本日初めてのMCタイム。2階のH ZETT Mは「アリガトゴザイマス。高いところから失礼しております。もう泣いちゃってね」と冗談めいて話す。2階建ての舞台構造の説明をし、2台のドラムスを叩きまくりたいというKOUと、今年も大感謝祭をやるとは思っていなかったというNIRE。そしてトークは、トリオが日本の名曲を新解釈でカヴァーするtvkの番組「SPEED MUSIC - ソクドノオンガク」の話題になり、次はその番組でカヴァーしてきた楽曲のメドレーをやると説明。番組の映像に合わせてメドレーがスタートする。
原曲から打って変わって、おしゃれさとスピードを増した“中央フリーウェイ”(荒井由実)、荒々しい“ライディーン”(YMO)を経てH ZETT Mが2階へ行くと、歪んだ音色のキーボードで“ギザギザハートの子守唄”(チェッカーズ)や“ズルい女”(シャ乱Q)を弾き倒す。H ZETTRIO流に崩しても原曲が瞬時にわかるのは、それだけ名曲の持つメロディーに強さがあるということだろう。ちょっぴりしっとり、ちょっぴり激しい“もう恋なんてしない”(槇原敬之)、カートゥーン・アニメのような目まぐるしさの“恋のダイヤル6700”(フィンガー5)、爽やかなサンバで南国からの風を吹かせる“風をあつめて”(はっぴいえんど)と続けると、全員が2階へ。KOUはロッドで、NIREはエレクトリック・アップライトでそれぞれパーカッシヴな音を出すと、〈この曲は何だろう……〉と思わせるが、すぐにかなりアダルトになった“Automatic”(宇多田ヒカル)だとわかる。続いては激しすぎる高速沖縄ロックの“島唄”(THE BOOM)、ズッタズッタとハネたリズムからサビはさらに倍速で進む“Diamonds”(プリンセス プリンセス)、最後は“涙そうそう”(森山良子)を意外にも明るく、またしても高速沖縄ロックへと料理していく。3人はステージを上り下りして楽器を持ち替えながら、誰しもが知る日本の名曲たちの魅力をオーディエンスに提示するのであった。
11曲のメドレーを完遂し、「ちょっと待ってください。私のCPUはいっぱいいっぱいです」とH ZETT M。段取りを思い出すと、去年に引き続きゲストとしてパフォーマンス・チーム〈POI LAB(ポイラボ)〉を呼び寄せて、“Neo Japanesque”を演奏。POI LABは、振るとグラフィックが浮かび上がるグラフィック・ポイを自在に操り、曲に合わせてハートや鍵盤、炎や氷の模様を映し出していく。ベース・ソロで静かになるとポイはキャンドルへと変化し、観客のケミカルライトの効果も相まってムーディーな雰囲気を醸し出す。演奏が佳境に入るとポイの映す模様はメンバーの顔になったり、〈秋の大感謝祭〉と文字になったり……これぞ〈ネオ・日本式〉エンターテイメントだ。
POI LABの代表、Yuta氏が簡単に挨拶すると、“Neo Japanesque”で共演できた喜びを語る。そして、お客さんとも一緒にポイを回したいとも話し、来年開催が決定しているH ZETTRIOのイヴェント時に、1000人のお客さんとポイを回すことを計画中であると発表。
今日はそのデモンストレーションをPOI LABとするということで、トリオが用意したのは、2019年1月1日に配信リリースもされるという新曲“Journey”。静かに始まるこの曲は、青春時代を想像させるような爽やかなジャズ・チューン。曲の盛り上がりに合わせ、ポイのアーティスト集団、ポイコミュニティーのみなさんと色とりどりの無数のポイが登場し、曲に合わせてボイがゆっくりと弧を描いていく。新曲とポイとの相性はバツグンで、観客からは大きな歓声が沸き起こった。
H ZETT NIREが「ついつい(ポイを)見ちゃうよね。演奏に集中するのが難しい」と言うとH ZETT Mが「集中してくださいよ」。それに対して今度はH ZETT KOUが「さっきNIREのほうを見たら怒ってたよ」と言うと、NIREは「それは真剣だったんだよ」と場内を笑わせる。
そして夕焼けの映像をバックに郷愁を誘う“Den-en”、トリッキーでテクニカルな演奏から爽やかなメロディーへと移り変わる“Everything”、タイトル通り情熱的な変拍子曲“Passion”へと続いていく。“Passion”ではH ZETT Mのキーボード高速連打やヒジで弾くプレイも見せつけ、観客はその一挙手一投足に見入っていた。
全員が2階へ上るとワウのかかったベースから、トリオのテーマ曲とも言える“Mysterious Superheroes”がスタート。H ZETT Mは演奏途中にサイレンのような異音のするシーケンサーを何度も押したり、またしても超高速の速弾きを見せたりと大暴れ。今まで以上に骨組みの少ない、よりフリースタイルなジャズを3人で披露する。H ZETT MとNIREが1階へ下りるとそのまま人気曲“What's Next”へとなだれ込み、またしても高速ピアノ・リフを披露。このフレーズだけでも大きな歓声が起こるが、希望感のあるサビと、3人による嵐のような演奏バトルを立て続けに繰り返すと、拍手喝采が巻き起こる。そのままH ZETT Mが階段を駆け上り、これまた人気曲でもある“Dancing in the mood”をラスト・ナンバーに迎える。情熱的でメロディアスなフレーズに合わせてKOUがスティックを左右に振り、それに追随して左右に動くオーディエンスのケミカルライト。3人が目にも止まらぬ手技を連続で繰り広げると、「ありがとうございました!」と手短に挨拶を済ませ、今日一番の大きな拍手のなか退場するのであった。
鳴りやまない拍手に応えて3人が再び登場すると、公演名になぞらえて「ありがとうございます。大感謝しております」とH ZETT M。来年元日の新曲“Journey”のリリース、J-WAVEで今日の密着取材の模様が放送されること、そして来月11月16日(金)の東京・福生市民会館公演から始まるホール・ツアーについて話すと、ちょっとおどけたお祭りソング“Smile”を披露する。メンバー3人と観客が一体となり、盛り上がっていくグリーンホール。最後に再びPOI LABとポイコミュニティーを招き入れると、H ZETTRIO×ポイのコラボと言えばこの曲、アーバンなメロディーとラテンなリズムの“Fiesta”を全員でパフォーマンス。観客全員でPOI LABの振り付けを真似し、情熱のダンスを踊るのだった。
ジャズという一見小難しい音楽ジャンルを、キャッチーなメロディーと巧みなテクニック、他ジャンルとの融合、そして舞台装置や映像、ポイとのシンクロで老若男女が楽しめるエンターテイメントに進化させ続けるH ZETTRIO。オーディエンスへの感謝を表しながらも、実はオーディエンス以上に3人が楽しんでいるのがよくわかる、あっという間の2時間超だった。次に彼らに会えるのは2018年を締めくくるホール・ツアー〈Feel Good !!! 18/19〉。すでにH ZETTRIOの虜なあなたも、未体験のあなたも、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。大興奮・大満足のエンターテイメントがそこにあることを約束する。
H ZETTRIO IN KANAGAWA ~秋の大感謝祭~2018
2018年10月14日(日)神奈川・相模女子大学グリーンホール 大ホール
セットリスト
1. Make My Day
2. Get Happy!
3. 炎のランニング
4. Trio, Trio, Trio!!!
5. 〈SPEED MUSIC ソクドノオンガク〉Medley
中央フリーウェイ(荒井由実)~ライディーン(YMO)~ギザギザハートの子守唄(チェッカーズ)~ズルい女(シャ乱Q)~もう恋なんてしない(槇原敬之)~恋のダイヤル6700(フィンガー5)~風をあつめて(はっぴいえんど)~Automatic(宇多田ヒカル)~島唄(THE BOOM)~Diamonds(プリンセス プリンセス)~涙そうそう(森山良子)
6. Neo Japanesque
7. Journey
8. Den-en
9. Everything
10. Passion
11. Mysterious Superheroes
12. What's Next
13. Dancing in the mood
~Encore~
14. Smile
15. Fiesta
〈Feel Good!!! 18/19〉
11月16日(金) 東京・福生市民会館 大ホール
12月1日(土) 沖縄・ミュージックタウン音市場
12月8日(土) 大阪・メルパルクホール
12月13日(木) 愛知・名古屋市芸術創造センター
12月15日(土) 福岡・都久志会館
12月22日(土) 北海道・札幌 道新ホール
12月24日(月・祝) 千葉・市川市文化会館 大ホール
★詳細はこちら