TOKYO FMで毎週金曜の27~29時に放送中の番組「RADIO DRAGON-NEXT-」。モデルやブランド・ディレクター/デザイナーなどマルチに活躍し、音楽への造詣も深いことで知られる菅野結以がパーソナリティーを務める同番組は、〈すべての音楽の登竜門〉をコンセプトに2010年にスタート。以降リニューアルをしながらも独自の視点で主に国内のフレッシュな音楽を紹介し続けきた人気番組だ。

その番組内のコーナー〈Monthly Disc〉で11月の顔となっているのが、plentyの元ヴォ―カリスト/ギタリストであり、11月7日に初のソロ作『#1』を発表した江沼郁弥。Mikikiでは、コーナーで放送された江沼のトークの完全版をテキストにて独占公開中! オンエアされたトークはもちろん、泣く泣くカットされた発言もすべて公開しているので、ラジオと共に毎週必ずチェックしてほしい。では、11月16日に放送された第3週目のトークをお楽しみください! *Mikiki編集部

Monthly Disc:江沼郁弥(第3回/11月16日放送分)

TOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」をお聞きのみなさん、菅野結以さん。こんばんは、江沼郁弥です。

〈江沼くん的、秋に楽しみなものは?〉って(進行表に)書いてありますけど(笑)、自分は秋生まれなので、季節で一番好きだし、キンモクセイの香りも好きだし。あとサンマもすごく好きだったんですけど、この間食べたらまったく食べられなくなってたんですよね(笑)。30歳になって、ここにきて食べられないものが増えてきてるんです。魚がすごく臭く感じて、最近は〈妊娠してるんじゃないかな?〉って思ってるんですけど。サバも苦手になったし。まあでも、秋自体は好きです(笑)。涼しくなってくるしね。

 

――9月8日に開催した恵比須LIQUIDROOMでのライヴはどうだった?

ライヴは久々だったんですけど、何の告知もせずにやったんです。〈なぜ告知しないのか〉と驚かれましたが、驚きがあるっていいですよね。不親切といえば不親切でもあるけど、アートに関わっている以上、親切すぎるのもどうなのかなって最近は思うんです。かと言って、伝わらなかったらやる意味がないんだけど。その狭間で戦っていますね。個人的な目標としては、そういう凝り固まったセオリーみたいなものを疑って活動していきたい、というのはあるんです。ただライヴをやるんじゃなくて、これからもおもしろいことは、思いついたらやっていきたいです。いまはやっていける環境でもあるし。

 

――サポートメンバーの〈木〉について

LIQUIDROOMではキーボードとドラムをサポートで入れて、3人体制でやったんです。キーボードは(オヤイヅカナルくん。ドラムはナイーブくんで、ふたりとも〈木(KI)〉っていうバンドのメンバーなんですよ。まあ、〈(ナイーブ)from 木〉って書かれていてもよくわからないし、そもそもナイーブっていうのもよくわからないし、多くの人は一体何が何だかわからなかったと思います(笑)。木というバンド、すごくいいんですよ。一曲だけYouTubeにあると思うので、ぜひ聴いてもらいたいです。でも、YouTubeで〈木〉と検索しても、ホントの木の動画が出てきて、木、出てこないと思うんですけど。もしあれだったら僕URL送るんで、言ってください(笑)。

木の2018年の楽曲“ai ni iko”
 

木との出会いは、先に鍵盤のカナルくんと出会ったんだったかな。実は知り合うすごく前から〈すごい子がいる〉って話は聞いてたんですけど、自分は3ピース・バンドをやってたし、機会がなくて。で、バンドを解散して、一人でメソメソ作業をしてたので、外部の刺激が欲しい気持ちになって。この機会にと。

会う前にカナルくんに曲を投げて、まず遊び半分で音を入れてもらったんです。そしたらどえらいものが返ってきて。あ、先週流してもらった“soul”(『#1』)の、シンセの途中のソロの部分です。それを聴いて、〈ビビビ〉ときたんですよね。自分と年齢は二個しか違わないんだけど、雷に打たれたような気持ちになって。そのプレイの遠慮のなさというか……だって、ある種お仕事でもあるのに、依頼主から送られてきた曲で自分のソロを弾き倒すなんて。しかも最初爆音だったんですよ。エネルギッシュで、自信に溢れてるというか、彼のプレイにいい意味でショックを受けました。カナルくんて子はそういう子なんですよ。天才だと思います。

……関係ないんですけど、外に出て、そういう雷に打たれるように、アンテナを立てとくことだなと最近つくづく思うんです。自分がアンテナとなってみずから動いていくというか、そういうことをしないとダメだなって。自分に引っ掛かってくるものだけと接するんじゃなくて、自分から引っ掛かりにいかないとって。

というのもこの間、知り合いに誘われてスケーターがいっぱいいるイヴェントにいったんですよ、ピザ屋の。……あ、意味わかんないですね(笑)。簡単に言うと、若い子たちが集まって、ピザ屋でスケボーやるイヴェントだったんです。それが僕にとっては刺激的で。それはみんなお洒落なのもあるけど、外見だけじゃなくて内面から自信満々で。それがすごくショッキングだったんですよね。自分は自分にそこまで自信あるかな?って考えてしまった。もちろん、音楽は自信持ってやってるつもりだけど……すごいなと。自分も自信を持っていたいなって思ったんです。

……話は戻って(笑)、カナルくんがすごい人だという話ね。そう、カナルくんにアルバムを作るから手伝ってくれないかとお願いして、〈はい〉と言ってくれたのでやっていたんですけど、そのうち、自分もバンドをやってて今度ライヴをやるからきてください、と誘ってくれたんです。それが木だったわけですけど。

それで下北沢でのライヴを観にいったら、めちゃくちゃかっこよくて。またそこでも雷に打たれたような感覚になりました。そのイヴェントで木はオープニング・アクトだったんですけど、ステージですらないところで演奏をしてて。ステージの下に簡易的に機材を並べて、キツキツの状態でやっていた。音はめっちゃかっこよくて、グルーヴもバキバキで、殴られてるような感じで衝撃的でした。そのドラムがナイーブくんだったんですね。それですぐに誘いました。

ナイーブという名前の謎は、僕もいまだにわかってなくて(笑)。彼はホントにナイーブなので、だからナイーブなんだと思ってますけど。〈ナイーブって呼んでください〉って言われたからそう呼んでるけど、実は本名も知らないんですよね。

ナイーブくんのドラムもすごいんです。生のドラムとサンプリング・パットを並行していて、それを何の違和感もなく叩ける。そういう人ってあまりいないんですよね、やっぱりドラマーは生のドラムを叩きたいし、そうじゃないとやりがいを感じないって人も多い。で、電子音で鳴らす人は機械で鳴らすし。それらを並行してできちゃうおもしろさ。あと、彼のドラミングには独特のリズムのヨレがあって、それも特徴。

 

――1月に開催する東名阪のライヴの展望

同じ3人体制でやろうと思ってます。内容は秘密ということで(笑)。もちろん『#1』からもやるんですけど、ただ収録曲をなぞるでもなく、新曲もあるのかないのか、はて。っていう感じに留めておいてほしいです(笑)。ぜひ、いらしてください。

 

――『#1』収録曲“black swan theory”について

江沼郁弥 #1 1994 Co.Ltd.(2018)

“flash back”をお送りしましたが、今週ももう一曲。この“black swan theory”という曲はLIQUIDROOMのライヴで急きょゲリラ的に発表した、CDとアナログ12インチの入った『Prototype EP』にも収録された一曲なんですけど。

この曲が出来たのはけっこう前だったと思うんですが、暗いところを低空飛行しているという漠然とした映像のイメージが元々あって、そのイメージを音にしていく作業だったというか…………うーん、曲の説明ってなかなか言葉にするのが難しいですね(笑)。年々ならなくなってるのかな? 考えものですね。

まあでも、とにかくそういうイメージが大元としてあったんです。そんな曲の作り方はこれまであまりなかったような気もしますが、音も歌詞も、そのイメージに近づけていく感じで作りました。『Prototype EP』に入っているテイクと『#1』に入っているテイクは違うんですよ。なので、そういう楽しみ方もできるかな。

別にぶったぎるわけではないんですけど、歌詞についてはよくインタヴューとかでも、その内容は真実なのかどうか、それはいま自分が思っていることなのかどうか、ということを訊かれるんです。答えとしては、もちろん嘘ではないんだけど、書いてるときにそれが自分の中での嘘かホントかっていうのはどちらでもよくて。それよりも、楽曲として本物にしたいという思いがある。日記を書くように書いているわけではないというかね。

plentyのときは、どちらかというと内側から出していくような感覚でした。でもそれは最初の頃ですね。後に、最終的にCDで出して人に聴いてもらうということに気付いたときに、個人的になりすぎているんじゃないか?と考えてしまう時期がくるわけです。そうやって徐々にやり方が変わったり、バランスをとったり。いろいろですね、歌詞の書き方は。

今作では、意思表明してる曲ももちろんあるけど、曲として、音楽として本当の姿にしていきたい。生みの親としてはそんな気持ちがあります。だから歌詞って書くのに時間がかかるのかな。もちろん、自分のためにやっていることだから自分が良くなきゃだめなんだけど。でも、それだけでもない。自分に対して懐疑的なところもあるんですよね。2年後も5年後も10年後も歌えるような曲にしたいって気持ちがやっぱりあるし、今は良くても来年歌えなくなるものはイヤだし。だから、自身を掘り下げていく作業になる。

要は、言いたいことを言うってだけじゃないということですね。そこも含まれてはいるけど、そのさらに奥を見ているというか。例えるなら……家を建てる感覚かな、建てたこともないんですけど(笑)。家は建てて終わりじゃなくて、そこでその先に住む人がいるってことを考える、みたいなことかもしれないです。そういうと、1週目で話した〈人の事は考えてない〉ってのは、実はそうでもないっていうことになってきますね。まあ、バランスをとってるということ、かな。というわけで、また来週。江沼でした。

 


★本トークはコチラから、オンエア日より1週間聴くことができます★

TOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」は毎週金曜日27時~29時に放送中。
※TS ONE(全国聴取可)にて毎週土曜日20時~22時で再放送有り。
https://www.tfm.co.jp/dragon/

 


Profile:江沼郁弥(エヌマ フミヤ
88年9月24日生まれ、茨城出身のシンガー・ソングライター。2004年に地元の同級生と共にロック・バンド、plentyを結成し、ヴォーカル/ギターを担当。2008年に上京、翌年にミニ・アルバム『拝啓。皆さま』でCDデビュー。2017年9月の日比谷野外大音楽堂公演をもって解散。翌2018年9月よりソロ活動を開始し、限定盤EP『Prototype EP』を発表。2018年11月7日にファースト・アルバム『#1』をリリース。

〈LIVE #1”〉
2019年1月15日(火)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2019年1月16日(水)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2019年1月23日(水)東京・渋谷WWW X
2019年1月24日(木)東京・渋谷WWW X
★ライヴ情報の詳細はこちら