〈ロック史上もっとも見事な変質者〉と称される、80年代アンダーグラウンド・シーンのカルト・ヒーロー、GGアリン。93年に亡くなるまでの彼の活動と、現在の彼の家族――母親と兄の姿をとらえたドキュメンタリー映画「ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族」が、2月23日(土)から、シアター・イメージフォーラムほかにて順次公開される。

GGアリンは、ライヴで自傷行為を行って流血したり、汚物を撒き散らした状態でオーディエンスに襲いかかったりと、破滅的なパフォーマンスで知られるパンク・ロッカー。ヘロインのオーヴァードーズで不慮の死を遂げて以降も、生前のスカムな振る舞いと、音源として残した攻撃的なハードコア・パンクや生々しいカントリー・ソングの数々が、彼を伝説的な存在に変えた。

本作では、GGのバンド、マーダー・ジャンキーズのメンバーでもあり、彼の死後はその遺志を受け継いで音楽活動や汚物アートに勤しんでいる兄のマール・アリンと、子どもがどんな行動をした際にも温かい眼差しで支えてきた母親・アリータという2人の家族にフォーカス。彼らが強く生きる模様を収めた、まさかの感動ドキュメンタリーだ。

無類のキャラクターゆえに、GGアリンを扱うとなると過激な方向にスポットが当たりがちだが、「メイキング・オブ・ドッグヴィル~告白~」(2003年)ほか数々のドキュメンタリーを手掛けてきた監督のサミ・サイフは、〈家族の物語〉という主題をブラすことなく、誠実かつ優しいトーンで記録映画にした。海外の映画祭でも、予想外の感動に絶賛の声が相次いでいるという。筆者も試写で鑑賞したところ、GGの破天荒な生き様を受け入れ、彼の人生に尊厳をもたらそうと努める家族の姿に思わず涙してしまった。

この度、サミ・サイフ監督のインタヴューと兄のマール・アリンからのコメントを入手。ひとまずMikikiエクスクルーシヴの公開となるので、ぜひ下記を読んで、2月23日以降に映画館へと駆け込んでほしい!

 


(左から)サミ・サイフ、アリータ・ベアード、マール・アリン
 

サミ・サイフ監督インタヴュー(質問は配給会社によるもの)

――あなたの「ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族」はとても感動的な映画でした。題材がGGアリンなので観る前は構えていたのですが、鑑賞前と鑑賞後のギャップがすごいです。本作を作るきっかけなどを教えていただけますか?

「私はデンマークの小さな田舎町出身です。子供の頃、音楽はヒップホップを聴いていて、またアメリカのブレイクダンスやユースカルチャーについてのTV番組などをVHSでよく観ていました。これらのVHSのなかの1本にGGアリンが登場し、こんなものは観たことがなく、当時衝撃を受けました。

そして大人になってから、GGアリンにこんなに強く、賢く、美しい母親がいたという事実を知ったときは驚愕しました。まさに超現実的な感じです。その瞬間からすぐに映画を作りたい、作らなければならないと考えました。この世のものとは思えない、狂ったパンク・ロッカーと、とても穏やかで信仰深い母親、このコンビネーションにすぐ心を奪われ、無視することはできなくなりました。母親のアリータに直接会った瞬間、私は夢中になりました。ですので、あなたの言う〈鑑賞前と鑑賞後のギャップ〉という感覚は私も同様に経験したのです。そして、いい映画というのはわれわれを驚かせてくれるものだと信じています」

――撮影前と後で、GGの家族やGGについて、あなた自身にとっての新しい発見はありましたか?

「彼らがあんなに優しく素晴らしい人たちだったことに驚きました。またアリータが説明するような、GGがあんなにかわいい息子だったなんて誰が想像できるでしょうか? まあ、もっとも厳しくヤバい人は、同時にもっともソフトな人でもある、ということでしょうか」

――アリータとマールは作品を観たのでしょうか?

「編集が終わり、マールとはホテルの部屋でいっしょに観ました。映画の序盤ではマールは静かでしたが、進むにつれて笑うようになり、エンディングでは鼻をすすって目をこすっていました。愛する弟が甦ったかのように思って感極まったのでしょう。このように試写は成功し、マールはアリータに電話して〈作品は素晴らしい〉と伝えてくれました。アリータは元々GGの破天荒な行いの一部が映画に挿入されることを知っていたので〈作品は観たくない〉と言っていましたが、マールの報告にはとても喜んでいました。でも彼女はいまでも作品を観ていない」

――どんな映画が好きですか? また好きな音楽は何ですか?

「私が好きなドキュメンタリー映画はクリス・スミス監督の「素晴らしき映画野郎たち」(99)、ステファン・ヤール監督のモッズ三部作「Dom kallar oss mods(人は私と合わないと言う)」(68)、「EttAnständigt liv(上品な生活)」(79)、「Det sociala arvet(社会契約)』(93)、ヤン・トロエル監督の「理想の国」(88)などです。また音楽は基本的にはヘヴィー・メタルが好きです。マノウォーとか。他にはボブ・ディランやキャメルも好きです」

――将来的にやってみたい、夢のプロジェクトは何でしょうか?

「なんとかしていつかAC/DCのドキュメンタリー映画を作ってみたいです。バンドがもうツアーしなくなったいま、誰かがAC/DCの映画を作るべきだと思います」

――最後にメッセージをお願いします。

「日本の皆さま、私はこの作品が日本で公開されることをとても光栄に思います。皆さんが楽しんでくれることを願っております」

 

マール・アリン コメント
「監督のサミ・サイフと私はこのドキュメンタリー映画が可能なかぎり最高のものとなるよう共に頑張りました。結果についてはとても満足しているし、誇りに思います。監督は私たち――母親と自分の、弟GGアリンに対する想いをちゃんととらえてくれました。いままで観てくれた人々からは素晴らしい感想以外聞いたことはありません。ぜひご覧下さい」

 

Information
「ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族」
監督:サミ・サイフ「メイキング・オブ・ドッグヴィル~告白~」(2003) 「Tommy」(2010)
出演:アリータ・ベアード、マール・アリン、GGアリン(アーカイヴ映像)、マーダー・ジャンキーズ
2017年|デンマーク映画|74分|カラー|英語|DCP|R15|原題:THE ALLINS
キングレコード提供|ビーズインターナショナル配給
ⓒToolbox Film 2017
http://theallins.jp/
2019年2月23日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて
家族の愛と共に感動の公開!!