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【Pop Style Now】TWICEの妹グループ・ITZYやレックス・オレンジ・カウンティ、ガンナなど今週必聴の洋楽5曲はこれ!

2019年2月8日~2月15日

【Pop Style Now】TWICEの妹グループ・ITZYやレックス・オレンジ・カウンティ、ガンナなど今週必聴の洋楽5曲はこれ!

田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、この一週間に海外シーンで発表された楽曲のなかから必聴の5曲を紹介する連載〈Pop Style Now〉。この一週間の話題といえばNUMBER GIRLの再結成……ではなく、ライアン・アダムスの件ですね」

天野龍太郎「前妻のマンディ・ムーアをはじめ、複数の女性が性的ハラスメントや精神的虐待を受けたと訴えました。新作がリリース中止になるなど、大変なことになっています」

田中「もうすぐ来日するフィービー・ブリジャーズもその一人なんですよね。彼女も先日、Instagramで声明を出していました。ライアン本人は一連の疑惑を否定しているようですが……」

天野「どうなんでしょうね。亮太さんもでしょうけど、自分も彼の音楽を愛聴してきただけにショックを受けています」

田中「ええ。ただ作品の価値とは別に、セクシズムやレイシズムには抗っていかなければいけないと思います。この問題は、またちゃんと扱いたいですね。それでは今週の〈Song Of The Week〉!」

 

ITZY “달라달라 (DALLA DALLA)”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉はITZYの“달라달라 (DALLA DALLA)”です! 昨年の12月にRed Velvetを選んで以来のK-Popの選出ですね」

田中「最近はK-Popの勢いがハンパじゃないですよね。昨年のBTS(防弾少年団)は象徴的でしたが、〈サマーソニック〉への出演も決まったBLACKPINKは〈コーチェラ〉を皮切りに北米ツアーをやるとか。アメリカのTV番組『レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』でのパフォーマンスも話題でした」

天野BLACKPINKの“DDU-DU DDU-DU”、最高なんですよね。肝心のITZYですが、彼女たちはTWICEの妹グループとして、この“달라달라 (DALLA DALLA)”でデビューしました。〈TWICE先輩はラブリーで美しいけど、私たちはガールクラッシュ(女性が見てもカッコいい女性)な魅力、明るく若いエネルギーを持っている〉と語ってます」

田中「確かにかわいらしいTWICEよりもパワフルな印象の5人ですよね」

天野「でも、最年少のユナは、まだ15歳とめちゃくちゃ若い。歌詞は〈大人になりたくない〉っていう内容なんですよね。もちろんそれだけじゃなくて、〈私は私なんだから〉と他人の視線やステレオタイプなイメージを拒否するリリックがカッコイイ。CLCの“No”にも通じるメッセージですね。曲名の〈달라달라 (DALLA DALLA)〉は〈違う違う〉という意味です」

田中「女性をエンパワメントするリリックなんですね。サウンド的にはK-Popらしいダンス・ポップ。サビのバンギンなシンセや抜けのいいビートは2000年代のエレクトロ・クラッシュを彷彿とさせます。太いワブルベースはアメリカでメインストリーム化したダブステップのものですね」

天野「ボーイズ・ノイズの曲みたいな瞬間もありますよね。印象的なメロディーのBメロや最後にだけ出てくるブリッジ、トラップ・ビートの上でラップするパートと、仕掛けも満載の一曲。K-Popはどんどんおもしろい曲やアーティストが出てくるので、これからも注視したいです!」

 

Rex Orange County “New House”

田中「続いてはレックス・オレンジ・カウンティの“New House”。みんな大好き〈みかんくん〉ことアレックス・オコナーくんによるソロ・ユニットの新曲です!」

天野「なんですか、その呼び方……? 彼の経歴などについてはコラム〈レックス・オレンジ・カウンティを知るための5項目〉を読んでいただくとして、ホントに人気がありますよね。〈サマソニ〉のライヴもすごい人でしたし」

田中「この〈レディング+リーズ 2018〉のライヴ映像とか、大合唱っぷりがハンパないですよ。みんな目をキラキラさせながら歌ってて、アイドル的な存在でもあるんだなーと」

天野「この“New House”はレックスからの〈ヴァレンタイン・ギフト〉として2月14日に発表されました。ベニー・シングスとの“Love Is Easy”ランディ・ニューマンとの“You’ve Got A Friend In Me“といった曲はありましたけど、ソロの新曲は2017年作『Apricot Princess』以来なんですね」

田中「ですね。この曲はアデルやマーク・ロンソンなどの作品に携わってきたベン・バプティが共同作曲者としてクレジットされています。とはいえ、鮮やかな転調と滑らかなメロディー・ラインは〈みかんくん印〉。良い曲だ~」

天野「(また言ってる……)ストリングスや管楽器のアレンジが、これまでよりも練られてますよね。ドラムのビートがない楽曲なんですけど、楽器の抜き差しや強弱のアクセントでダイナミズムを生み出してて、何度かハッとさせられました」

田中「歌詞は衒いのないラヴソングと取れるものです。コーラスの〈来年には同じ家で暮らしている僕らが見えるよ/きっと君は決心するさ〉って“結婚しようよ”ですかね……? ライヴで歌ったら、ひときわ黄色い声が上がりそう。アイドル性とアーティスティックな創造性がぶつかることなく融合していて、いまの彼はホントにビートルズみたいな存在だなあ……と思わせられた一曲でした!」

 

Gunna “Speed It Up”

天野「続いてはガンナの新曲“Speed It Up”です。ガンナは、いまもっとも勢いのあるラッパーの一人ですね」

田中「出身はアメリカ南部、ジョージア州カレッジパーク。93年生まれの、まだ25歳! 彼はヤング・サグのお墨付きだそうで、重要作『Jeffery』(2016年)にも参加してますね。所属レーベルはヤング・サグ主宰のYSLです」

天野「トラヴィス・スコットの大傑作『ASTROWORLD』(2018年)にも参加してますが、彼を一躍世に知らしめたのは、もちろん去年の大ヒット曲、リル・ベイビーとの“Drip Too Hard”でしょう!」

田中「ビルボードのホット100にずっとチャートインしてますもんね。そんなガンナはこの“Speed It Up”のリリースと共に新作EP『Drip Or Drown 2』のカヴァー・アートも公開しました。ガンナが水中で傘を差している写真がミーム化してますね(笑)」

天野「ニルヴァーナの『Nevermind』ですね。この“Speed It Up”という曲は、ものすごくいまのラップらしい曲で、最小限の言葉をパーカッシヴに発声するだけでラップしてます。〈Speed it up, speed it up〉〈Eat it up, eat it up〉と繰り返すだけのサビが象徴的ですよね。これはこれで現代のリリシズムなのかも?」

田中「トラップ以降のラップのエッセンスだけを抽出したような曲ですよね。聴いててクラクラしてきて、不思議な酩酊感があります。ダウナーなサウンドを作り上げているのは、“Drip Too Hard”も手掛けていたアトランタのプロデューサーであるターボです」

天野「“Speed It Up”や“One Call”が収録される『Drip Or Drown 2』は今週末、2月22日(金)にリリースです。聴き逃し厳禁な一作ですよ」

 

Dessy Hinds “Loose Ones”

天野「4曲目はデッシー・ハインズの“Loose Ones”。彼はプロ・エラに所属するラッパーです」

田中「ふむふむ。プロ・エラはNYのブルックリンを拠点にするコレクティヴとのこと。あっ、あのジョーイ・バッドアスが所属しているんですね!」

天野「そうです。ジョーイやCJ・フライ、カーク・ナイトなんかと比べると、デッシーはまだまだ知られてはいませんが、プロ・エラの初期の作品から参加しているメンバーなんです。で、最近ミーク・ミルの新作『Championships』に収録されている“Tic Tac Toe”の上でフリースタイルした曲を発表してて、そのラップのカッコよさに〈おっ〉って思ったんですよね」

田中「へー。そんななかでリリースされたのがこの新曲だったと。“Loose Ones”と同時に“Jungle”という曲も発表してますよね。どちらかというと、トラップ・ビートの“Loose Ones”のほうが彼の巧みなライミングやスムーズでメロディアスなフロウが引き立っているように感じました!」

天野「“Jungle”もパワフルでカッコイイんですけどね。ちょっとアヴァンギャルドなビートに、畳み掛けるような、デッシーの〈ビースト・モード〉な激しいラップが乗っかってて。“Loose Ones”で聴けるとおり滑舌もいいし、全然知られてないけど、すごいラッパーだなーと」

田中「いやいや。マジで2曲ともフレッシュでビックリしました。デッシー・ハインズ、今週この名前は覚えてほしい! ちなみに曲名の〈loose ones〉っていうのは貧しい地域で一本ずつ売っている煙草のことだとか。リリックに出てくる〈J・ホヴァ〉はNYの先輩、ジェイ・Zのことですね。さらなる成功への思いをラップした内容なんでしょうか」

天野「カヴァー・アートは3曲目があることを示唆してますし、これからまた新曲が出て、まとまった作品をリリースするのかもしれませんね。いずれにせよ、いま注目のラッパーとして彼には期待してます」

 

Quelle Chris “Guns”

田中今週ラストはクエール・クリスの“Guns”。彼はデトロイト出身、現在はNYを拠点に活動するラッパー/プロデューサーですよね?」

天野「ですね。彼の婚約者でもあるラッパー、ジーン・グレイとのコラボ作『Everything’s Fine』が昨年、高く評価されていました。ジャズやソウルをネタに使いつつ、実験的かつドープに仕上げたサウンドが魅力です。個人的には去年、愛聴した一作です」

田中「ジーン・グレイとのアルバムはジャケットも最高ですね。プレッピーな装いでかしこまった2人の表情がユーモラス。ラップ・プロパーじゃない自分にとってもハマりやすい作品でした」

天野「この“Guns”もおもしろい楽曲です。ジャジーなピアノのサンプル×崩したブレイクビートというトラックはめちゃくちゃクールだし、そこに声を何トラックも重ねてて、独特のサイケ感もあります」

田中「プロデューサーとしてクレジットされているクリス・キーズは、これまでのクエールの作品以外ではジョージア・アン・マルドロウなどの楽曲に参加してきたそうで。ストーンズ・スロウやブレインフィーダーとクエールを紐付けることで見えてくるものもありそう」

天野「タイトルのとおり、“Guns”は社会的なテーマの曲のようです。3月29日(金)にリリースされるアルバムも同名で、彼は新作についてのステートメントでこう言っています。〈『Guns』はサウンドやスタイル、テーマの武器庫だ。それは根本的に、僕たち自身も含めて、良きにつけ悪しきにつけ兵器化されうる物事についての作品になる。そこには僕たちが口にする言葉、恐れるもの、愛し方や生き方、摂取するもの、信じるもの、偶像化してしまう人――そんなものが含まれている〉」

田中「アルバム、かなり踏み込んだ内容になってそうですね。楽しみです!」

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