INTERVIEW

Dos Monos『Dos City』 奇妙でアヴァンな東京のヒップホップ・トリオが描く、〈もうひとつのシティー・ポップ〉とは?

Dos Monos『Dos City』 奇妙でアヴァンな東京のヒップホップ・トリオが描く、〈もうひとつのシティー・ポップ〉とは?

 こんなにも奇妙だけど興味を惹かれる音楽に出会ったのは久々だ。Dos Monos。スペイン語で〈2匹のサル〉を意味する名前の3人組。なんでも〈サル2.0〉的な意味を含むらしいが、それも後付けで、名前の決め手になったのは音の響きの良さ。「3人ともメイン・カルチャーに対してズレを感じていて、そのズレやバグをおもしろがるのがコンセプト」(荘子it)との言葉通り、このたび登場した初のアルバム『Dos City』は、バグまみれのMVで話題を呼んだ“in 20XX”を筆頭に、フリージャズやプログレ好きだという荘子itの嗜好を反映したアヴァンなトラックと、3MCの織り成すフリーキーでアブストラクトなラップが、不思議なズレの感覚を湛えた一品になった。

Dos Monos Dos City Dos Monos/bpm tokyo(2019)

 「『Dos City』というタイトルは、チェコのミハル・アイヴァスという作家が書いた『もうひとつの街』という小説が元ネタにあって、古書店を訪れた男が本を開いたらサメが飛んでるシュールな世界に行ってしまう話なんですけど、実はそこは元いた(プラハの)街と表裏一体なんです。自分がふだん認識している世界の裏側にはノイズやバグがいっぱいあって、むしろそちら側のほうが本質的だったりする。それと同じで、自分が生まれ育った東京という街から生まれた〈もうひとつのシティー・ポップ〉、普通のシティー・ポップの裏側に広がっている世界、というのが『Dos City』のコンセプトなんです」(荘子it)。

 ウータン・クラン“Protect Ya Neck”に倣い、「〈お前の神経を掃除しとけよ、なぜなら俺たちがバグを浸透させるから〉っていう逆説的なイキリ表現」(荘子it)として改名のうえブラッシュアップされた“Clean Ya Nerves”(元々は“Cleopatra”として2015年に発表)など、アルバムには90年代のNYヒップホップや、荘子itが刺激を受けたというJ・ディラやマッドリブのテクスチャーを感じさせつつ、現代的なハイファイ感も備えた全13曲を収録(ミックスはIllicit Tsuboiが担当)。全員が結成と同時に始めたというラップも、哲学用語や歴史上の偉人名が頻出する荘子itのリリックを含め、各人の個性が見える独創的なものだ。

 「僕はところてんのようなラップがやりたいんですよ。ところてんは質量はあるけどカロリーはゼロじゃないですか。のどごしがいいだけというか。そういう、何かを積み重ねて100をめざしてる営みなんだけど結局はゼロでしかないものが、僕のめざしてる到達点なんです。“スキゾインディアン”の〈朱色に染まる肌色のピンク〉がまさにそうで、これは何か言ってるようで何も言ってない(笑)」(TAITAN MAN)。

 「世の中にあまり必要とされてないゴミみたいなものを使っていかにカッコつけるか、ということを主眼に置いてますね。でも、最後はどうしても悲しくなるというか。セルフ・ボーストしてるんだけど、同時に自滅もしてるみたいなのが多いです」(没)。

 「そこは3人とも一緒で、世代的にどうしても厭世的なことは出てきますね。20世紀的なインテリの人、映画も文学も哲学の領域もそうですけど、みんなあれだけ一生懸命考えても結局辿り着くのは厭世観で、僕は今回その20世紀の限界に挑戦したんですよ。21世紀的なことをやるには、20世紀にケリをつけないと先に進めないので。結局はDos Monosも厭世観が漂ってしまったけど、それをファッションにはしたくないし、そういう若者の達観や厭世観を売り物にするのはクソだと思うので」(荘子it)。

 中高時代からの気心の知れた仲間たちと共に、「サンプリングも含めて価値がスーパーフラットだし、音楽的にも身体的で、何でも放り込める」(荘子it)というヒップホップという表現を選択し、誰もが持っているはずながら普段は意識に上らないズレの視点を提案するDos Monos。『Dos City』を聴けば、いままで見たこともない世界が眼前に広がってくるかもしれない。

 「いちばん楽しみなのは誤読をされることですね。俺らは海外のレーベルと契約したこともあって、ともすればスタイリッシュな切り取り方をしてもらえますけど、そんなカッコいいものではなくて、このアルバムも言ってみればただの卒業文集なんです(笑)。それが外部に出たときにどういう誤読が発生するのか、そこにすごく興味があります」(TAITAN MAN)。

 


Dos Monos
荘子it(MC/トラックメイカー)、TAITAN MAN(MC)、没(DJ/MC)から成る東京のヒップホップ・ユニット。向井太一やDATS、yahyelらの作品にも参加する荘子itを中心に旧友が集まって結成される。2017年の〈フジロック〉でDATSのステージに荘子itとTAITAN MANが出演し、グループでは〈出れんの!?サマソニ!?〉のオーディションを経て〈SUMMER SONIC〉に出演。同年にはソウルでの初の海外ライヴも行う。2018年にはLAのデスボム・アークと契約し、初のMV“in 20XX”を公開。年末に配信リリースした“Clean Ya Nerves”も話題を集めるなか、このたび初のフィジカル作品となるファースト・アルバム『Dos City』(Dos Monos/bpm tokyo)をリリースしたばかり。

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