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【Pop Style Now】ロジック × エミネム、エド・シーラン × ジャスティン・ビーバーなど、今週のワンダフルな洋楽5曲

2019年5月3~10日

【Pop Style Now】ロジック × エミネム、エド・シーラン × ジャスティン・ビーバーなど、今週のワンダフルな洋楽5曲

田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野がこの一週間に海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する連載〈Pop Style Now〉。大型連休があり、2週間お休みしました」

天野龍太郎「連休中は何もやる気が起きなくて、2回観に行った『アベンジャーズ/エンドゲーム』について考えてました。物語とは別に、トラフィック、キンクス、ローリング・ストーンズ、ステッペンウルフなどなど、昔のロック/ポップ・ソングがうまく使われてるのが超よかったな~って感じ入ってます。もしかしてこれってネタバレになります?」

田中「大丈夫だと思いますが……。〈エンドゲーム〉は大傑作なのかそれほどでもないのか、いまだに判断がつきません。公開2週間後に出た『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の最新予告には超上がっちゃいましたけど。あ、〈エンドゲーム〉未見の方は予告編、要注意です。そんな感じでまだヴァケーション、っていうかMCU脳の我々ですが、気分新たにはりきっていきましょう」

天野「それでは今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

Logic feat. Eminem “Homicide”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉はここ一週間の話題をかっさらっていたロジックとエミネムの“Homicide”です。この曲を収録したロジックのニュー・アルバム『Confessions Of A Dangerous Mind』も先週発表されました」

田中「“Homicide”はロジックと彼が尊敬する先輩のエミネムとの共演曲です。今年2月に初めて会ったとき、ロジックは相当うれしかったみたいですね。それがきっかけでこの曲が生まれたのでしょうか?」

天野「〈Genius〉によれば、エミネムも以前からラヴコールを送ってたようで。こうやって2人のラップを続けて聴くと、ロジックがいかにエミネムのスタイルから影響を受けているのかが感じられます」

田中「サビでスクラッチの音を模して〈Chika-chika,  Slim Shady〉ってラップしてるところは、エミネムの名曲“My Name Is”(99年)からの引用ですしね」

天野「そうですね。ただ先輩後輩2人のバトルって考えると、ロジックの勢いのよさに軍配が上がります! でも、最近はやることなすことが裏目に出てた感じのあるエミネムも、ラップで威厳を示せたような気も……」

田中「“Homicide”の内容はリリシズムに欠ける若手ラッパーたちへの宣戦布告と言えそうですね。〈《あいつはクール、あいつは違う》なんていうクソみたいな高校生ラップには飽き飽きだ/あいつらはただの一人もラップをできないのか?〉とロジックはラップしてます。一方、エミネムのラップは語彙力などの面でやっぱり凄みを感じますね」

天野「確かに2人のスタイルは、最近のだら~んとしたラップとは一線を画するものです。ロジックは3月に小説『Supermarket』を発表してファンを驚かせましたが、同時に発表されたサウンドトラックがあまりにもへっぽこなサウンドで……(笑)。でも新作は素晴らしいので、『Supermarket』で気落ちしたファンもぜひ一聴を!」

 

Skepta “Bullet From A Gun”

天野「2曲目はスケプタの“Bullet From A Gun”。彼はUKのグライムを代表するラッパーですね」

田中「2000年代前半に活動をスタートしているので、もはや15年選手。2016年のアルバム『Konnichiwa』はUKチャートで2位をマークし、グライムの作品では最高記録らしいです」

天野「スケプタはドレイクとの親交も知られてますが、アメリカのラッパーと積極的に共演してることもあって、グローバルな存在感がありますよね。その一方でお兄さんのジェイミー(Jme)とグライム・レーベルのボーイ・ベター・ノウンを運営してます。アンダーグラウンドのグライム・シーンとポップ・シーンとを繋ぐ存在というか」

田中「この“Bullet From A Gun”は、5月31日(金)にリリースされる新作『Ignorance Is Bliss』からのリード曲。旧知の仲であるラグズ・オリジナルとスケプタ本人によるプロデュースです」

天野「ヒプノティックなシンセサイザーのフレーズが印象的ですよね。ビートそのものはシンプルで削ぎ落とされたものなので、スケプタのラップの巧さ、かっこよさを堪能できます」

田中「リリックは昨年生まれた娘や父親との関係について歌っています。〈子どもがいつまでも幼くないってわかるだろ?/そのとき、お前は悪魔と向き合う番がやってくる〉というラインは子を持つ人間として刺さりましたね。しっかりしないといけないな……」

天野「そのうち反抗期が来るぞってことでしょうか? がんばってください! アルバムについてスケプタは〈インターネットはすべてを政治的に正しく(politically correct)したが、芸術性を奪ってしまった。『Ignorance Is Bliss』は人生の陰と陽を扱っているんだ〉と語ってます。挑戦的な内容になってそうですし、楽しみですね」

 

Flying Lotus feat. Anderson .Paak “More”

天野「3曲目はフライング・ロータスがアンダーソン・パークをフィーチャーした“More”。5月22日(水)に日本で先行リリースされる新作『Flamagra』からのリード・シングルです」

田中「先月末に発表された、リトル・ドラゴンのユキミ・ナガノが客演した“Spotaneous”、オノシュンスケと共作した“Takashi”という2つの新曲も素晴らしかったですね」

天野「ですね。この“More”については、まずミュージック・ビデオを観てほしいです。『カウボーイビバップ』や『サムライ・チャンプルー』などの作品で国際的に知られるアニメ監督の渡辺信一郎が手掛けてます。渡辺監督の『ブレードランナー ブラックアウト2022』でフライローが音楽を制作した縁からでしょうか」

田中「フライローは〈『スペース☆ダンディ』最高〉なんて言ってたらしいですし、相思相愛なんでしょうね。肝心のサウンドは、サンダーキャットによるものと思われるベースが聴けるスペーシーなイントロから、ローファイなビートにアンダーソン・パークがラップのような歌を乗せていくという構成になってます」

天野「実はそのイントロ、MVと配信のヴァージョンとでは違ってるので、ぜひ聴き比べてもらいたいですね。配信されてるほうはスピリチュアル・ジャズっぽいイントロなんです。MVのほうが曲が短いですね」

田中「へ~。ちなみに、前作『You're Dead!』のカヴァー・アートは駕籠真太郎の作品でしたが、今回は日本のグラフィック・デザイナー、GUCCIMAZEが手掛けてるとか。フライローの新作には日本のカルチャーへのリスペクトが感じられる側面もありそうですね」

天野「“Takashi”では彼が大好きな『ドラゴンボール』のSEが使われてましたし(笑)。主宰レーベルであるブレインフィーダーと日本との密接な関係についての記事もありますので、ぜひこの機会に読んでみてください!」

 

Jamila Woods feat. Nico Segal “BALDWIN”

田中「次はジャミーラ・ウッズの“BALDWIN”。この曲を収録しているアルバム『LEGACY! LEGACY!』も先週末にリリースされました」

天野「週末に何回か聴きましたよ! 素晴らしいです。ちなみに〈PSN〉では、この曲だけでなくそれ以前にリリースされた2曲のシングル“ZORA”“EARTHA”も取り上げてます。どんだけ僕たちはジャミーラの音楽が好きなんですか(笑)」

田中「確かに(笑)。でも、今回もめちゃくちゃ良いですからね。〈PSN〉的にはトランペット奏者のニコ・セガールが参加していることもトピック。ジャミーラ同様にシカゴ・シーンのキーパーソンで、彼の新ユニットであるインテレクシュアルも先日紹介しました

天野「ですね。この曲はパワフルなトランペットと分厚いゴスペル風のコーラス、柔らかい音色のシンセやモーグ・ベースを配した極上のジャジー・ソウルに仕上がってます。ビートはトラップ以降のフィーリングで、生っぽいウワモノとの対比が実にフレッシュです」

田中「新作は、アフリカ系やラテン系の偉人が各曲ごとにインスピレーション源となっているんですが、この“BALDWIN”はジェイムズ・ボールドウィンについて書いたもの。公民権運動にも深く関わっていた小説家/詩人です」

天野「2018年には彼の未完成原稿を基にしたドキュメンタリー映画『私はあなたのニグロではない』も日本で公開されましたよね。バリー・ジェンキンス監督の新作『ビール・ストリートの恋人たち』もボールドウィンの小説が原作です。同性愛者でありアフリカ系であるという自身のアイデンティティーに対する深い思索から書かれた彼の著作は、いま読み返されるべきものかもしれません」

田中「ジャミーラはボールドウィンについて〈白いアメリカを考えるうえでもっともエレガントな書物によって、私たちが暮らす社会を見直すレンズを与えてくれた〉と言及しています。僕たちも『LEGACY! LEGACY!』を聴くことでブラック・カルチャーを学びながら歴史や社会を見つめ直しているわけで、こうした文化の継承は素晴らしいですね。アルバム、ぜひ聴いてください」

 

Ed Sheeran & Justin Bieber “I Don't Care”

天野「今週最後はエド・シーランとジャスティン・ビーバーという2大ポップスターの共演曲“I Don't Care”です! ラテン・ビートが楽しいですね」

田中「ジャスティン・ビーバーって音楽活動休止したんじゃなかったでしたっけ……?」

天野ツアーがつらいという、ミュージシャンらしい悩みからそう決断を下したみたいですね。来日公演もキャンセルされましたし。繊細な人ですからね。でも、4月の〈コーチェラ〉ではアリアナ・グランデのステージに出て“Sorry”を歌ったり、新作が出るかもという話もあったり……真実はジャスティン本人のみぞ知る、です(笑)!」

田中「ともあれ、音楽活動への復帰は喜ばしいこと。この“I Don't Care”は“Shape Of You”などの特大ヒットで知られる説明不要のスター、エド・シーランとのコラボレーション・ソングです。エドはジャスティンに“Love Yourself”(2015年)を提供してるので、待望かつ久々の共演と言えそうですね」

天野ほとんどギターの弾き語りのようだった親密な“Love Yourself”と比べると、この“I Don't Care”はハッピーなポップソングですね。プロダクションはシンプルなので、2人の歌声が引き立ってます」

田中「ソカっぽいリズムがゴキゲンですね~。歌詞の内容もポジティヴなもの。サビでは〈僕のベイビーといるときは何も気にならなくなるんだ/悪いことはみんな消えていく/君といれば誰か他の人になったような気分/君がいればひどい夜も切り抜けられる〉と歌われています」

天野「これがジャスティンの心境ならいいんですけどね……と、エドよりもジャスティン寄りで聴いてしまいます。僕はジャスティンの完全復活を待ってますよ! ちなみに上の動画はMVのトレイラーなのですが、エドが大阪で撮ったもののようなので、完成版を早く観たいところです」

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