米・シカゴ出身の孤高のシンガー・ソングライター、リッキー・リー・ジョーンズの日本公演が、5月16日(木)にNHK 大阪ホール、5月17日(金)に東京・Bunkamura オーチャードホールで行なわれる。Billboard Live TOKYOなどジャズ・クラブにおける公演は2010年代に入ってからも何度かあったが、ホールでのコンサートとなるとかなり久しぶりだ。

79年に“恋するチャック(Chuck E’s In Love)”(同年の初作『浪漫(Rickie Lee Jones)』収録)で衝撃的なデビューを飾ってから今年でちょうど40年。本日5月15日(水)には新しいカヴァー・アルバム『Kicks』も日本先行でリリースされ、今回の公演はデビュー40周年に相応しく新旧の曲を織り交ぜたものになるに違いない。

というわけでここでは開催に向けて、リッキー・リー・ジョーンズが日本に到着した翌日(5月14日)に都内のホテルで行なった取材の模様のダイジェスト版を、いち早くお届けする(完全版は近日公開予定!)。

★来日公演の詳細は記事末尾へ

“恋するチャック(Chuck E’s In Love)”を演奏するライヴ映像
 

――ジャズ・クラブのようなインティメイトな空間で公演するのとホールで公演するのとでは、意識は変わるものですか?

「いい質問ね。ええっと、やってみないとわからない。それが私の答えよ(笑)」

――やる前の気持ちとしては、どうですか?

「やっぱり大きな会場のほうが興奮するのは確か。出ていく前のワクワク感が違うというか。でも単純に大きさで比較するのは無理があるわね。それは過去の作品と新しい作品を比較することと同じくらい難しい。なぜならその時々の状況によって変わるものだから。人生というのはそうやってその時々の状況でどんどん変わっていくものでしょ。だから会場の大きさだけで自分の意識や内容が変わるというものではないの」

――あなたはその日の会場の雰囲気だったり観客の反応だったりを見ながら、その場で演奏する曲を変えていくそうですね。

「ええ。まず初めの3曲はだいたい決めて臨むの。で、その3曲を演奏しながら、観客の反応や全体のフィーリングを感じて、それによって次にどんな曲をやるかを考える。例えば〈今夜のお客さんは前のめりな感じで座って聴いているのか、深く椅子に沈み込んで聴いているのか〉というのはわかるわけで、それもひとつの判断材料になる。そこで、こっちの曲にするか、あっちの曲にするかを瞬時に決めるのよ」

――それって演奏者みんなの息が合ってないとできないことですよね。今回はトリオ編成だそうですが……。

※クリフォード・ハインズ(ギター/ヴォーカル)、マイク・ディロン(パーカッション/ヴォーカル)とのトリオ

「そう。ここ2~3年、トリオでやってるの」

――トリオでやることの利点は?

「マネー(笑)」

――わははは。なるほど。ほかには?

「ヴィブラフォン奏者のマイク・ディロンがマルチ・プレイヤーで、いろんな楽器を弾けるのね。なので私とマイクとギタリストの3人いれば、アルバムの曲をほぼ再現できる。もちろん完全に録音ブツの通りではないけど、それを3人でどうやるかと試行錯誤するのがすごく楽しくて、その楽しさがまた観客にも伝わっていく。それがいいところね」

――マイク・ディロンは、新作『Kicks』をあなたと共同でプロデュースしていますね。彼と出会ったきっかけは?  また、どういうところがあなたと合うのですか?

「ニューオーリンズで4年前に出会ったの。地元のジャズ・グループで、マイクはジェームス・シングルトン(ベース)とジョニー・ビダコヴィッチ(ドラムス)と一緒に美しいインプロヴィゼーションを含んだジャズを演奏していて、私はそれに魅せられた。でも声をかけるのは勇気が必要で、ちょっとだけ時間がかかったんだけど、一緒にやってもらえないかと思い切って話してみたら、驚くくらい私に近い感覚を持っていたのね。一緒に演奏したら、すごく楽しかったわけ。

だから今回、アルバムも一緒にやってくれないかと話して。彼は若々しさと可能性を今回のアルバムにもたらしてくれた。そういうアプローチを私にしてくる人は、彼ぐらいしかいないのよ」

RICKIE LEE JONES Kicks P-VINE/Other Side of Desire Music(2019)

『Kicks』収録曲、アメリカのカヴァー“Lonely People”

 

リッキー・リー・ジョーンズがマイク・ディロンと共同でプロデュースを手掛け、現在彼女の住むニューオーリンズですべての作業を行ない完成させた新作『Kicks』は、前作『The Other Side Of Desire』から4年ぶり、カヴァー・アルバムとしては『The Devil You Know』以来7年ぶりとなるものだ。ジョーンズのカヴァー・アルバムはこれが5作目。そこで、こう訊いてみた。

――なぜあなたはカヴァー・アルバムを作るのでしょう。そのモチベーションとは?

「私の考え方としては、曲は曲であって、オリジナルだからどうとかカヴァーだからどうとかっていうのは特にないの。自分で書いていようが書いていまいが、曲は曲。そこで区別をしていない。思うんだけど、リスナーのほうがそういうことを区別するんじゃないかしら。もっと言うなら、マーケティングする側の人にとって、そういう区別が必要なのかもしれないわね。そういう区別をすることで、お金のまわり方も変わってくるのでしょうから。

でもミュージシャンは、自分が書いた曲かどうか、そんなに気にしてない。少なくとも私はそう。大事なのはその曲が好きかどうかだけでね。例えば“My Funny Valentine”を好きで歌いたいと思ったら、自分で書いた曲じゃないからお金の入りが少なくなるかなとか、そんなことはまったく考えない。そこにあるのは、好きな曲を歌いたいという気持ちだけなの。そもそも私はそんなにたくさん曲作りをするタイプでもないしね。もっとしてたら、もっとお金も入ってくるのかもしれないけど、いいのよ、そんなことは(笑)。♪マネ~(ピンク・フロイド“Money”を歌い出す)」

※リッキーのほかマイルス・デイヴィス、チェット・ベイカーらがカヴァーしているジャズ・スタンダード

このあと新作『Kicks』についてもう少し訊いたのだが、続きはまた後日掲載の完全版インタヴューで。まずは貴重なホール公演、お見逃しなく!

 


Live Information
リッキー・リー・ジョーンズ ジャパン・ツアー 2019

2019年5月16日(木)大阪・NHK大阪ホール
開場/開演:18:00/19:00
チケット:S席10,800円/A席9,800円(いずれも全席指定・税込)

2019年5月17日(金)東京・Bunkamuraオーチャードホール
開場/開演:18:00/19:00
チケット:S席10,800円/A席9,800円(いずれも全席指定・税込)

来日メンバー:
リッキー・リー・ジョーンズ(ヴォーカル/ギター/ピアノ)
クリフォード・ハインズ(ギター/ヴォーカル)
マイク・ディロン(パーカッション/ヴォーカル)

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リッキー・リー・ジョーンズからのメッセージ映像
 
日本公演トレイラー