「ポス(ポストミレニアル)ギャル」として話題の安斉かれんが、タワーレコード限定で8cm無料シングル『世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた』をリリース。これを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈TOWER PLUS+〉の臨時増刊号〈別冊TOWER PLUS+〉を発行! ここでは中面に掲載されたインタヴューを転載いたします。別冊TOWER PLUS+は、タワーレコード全店にて配布中!
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安斉かれん 世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた avex entertainment(2019)

 平成の音楽史を語る上で欠かせない、歌姫たちの歴史。どこのレコード会社にもシーンを牽引するレベルの女性ソロアーティストが存在し、長年にわたってヒットチャートを賑わし続けた時代があった。ことエイベックスに関しては、小室哲哉プロデュース時代から引退まで後続に多大な影響を与え続けた安室奈美恵、心に闇を抱えた若者たちのカリスマとなって公私ともに音楽の世界に身を捧げた浜崎あゆみ、飾らない人間性と感情剥き出しの歌とパフォーマンスで共感を生んだ倖田來未など、女王の座に君臨するトップスターを輩出し続けてきた。

ここ数年はK-POPやアイドルの台頭と共にジャンルも音楽の楽しみ方も多様化し、若手の歌姫がシーンを席巻するケースは激減し、その変化に寂しい想いをしていたリスナーも少なくなかっただろう。

そして、時代は平成から令和へ。まだ何が流行り、誰が主役の椅子に座るのかも全く分からない状況下で、なんと元日にひとりの歌姫がメジャーデビューを飾った。しかも安室奈美恵や浜崎あゆみ、倖田來未をスターダムにのし上げたエイベックスからである。その名は、安斉かれん。ルックスも、ファッションも、5月1日にデジタルシングル・リリースされたデビュー作『世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた』の音楽性やミュージックビデオも、何もかもがエイベックスの歌姫たちの系譜と断言できる内容であり、しかしながら本人はあくまで自らの胸の内に溢れる想いを歌にしていくという、これからの時代を生きるメッセンジャー。人生初インタビューを務めさせて頂く機会に恵まれ、あれこれ話を聞かせてもらった上での印象は、限りなく〈純粋無垢〉だった。

「小さい頃から音楽が好きで、父に連れられて初めて観に行ったライヴがローリング・ストーンズだったんですけど、そのライヴにアルトサックスが出てきて、それに憧れて吹奏楽部に入って、サックスの大会にも出るようになったんです。それで〈私も音楽で生きていけたらいいな〉と思っていたんですけど、まさか歌手としてデビューする未来が待っているとその頃は思っていなかったので、正直驚いています。

錚々たる女性ソロ・アーティストの先輩方が歴史を作ってきたエイベックス。そこからこういう形でデビューする……みたいな気負い方をしてしまうと物凄いプレッシャーになってしまうから、そこは極力考えないようにしています。私が出来ることは、今頑張れることを頑張ることだけなので」

エイベックスの系譜と断言できる存在であったとしても、彼女はちっともビッグマウスではない。むしろ謙虚。今頑張れることを頑張る、それ以外のことは考えない。これは、彼女がポッと出の新人ではなく、恋愛や遊びを誰もが謳歌したいと思う青春時代をレッスンに注ぎ込み、デビューの確約はないながらも〈大好きな音楽の世界で生きていきたい〉一心でがむしゃらに生きてきた努力家だから。

アートワークを見る限りでは〈次世代ギャル(=ポスギャル)〉の筆頭で、イマドキの女の子の象徴と思われるかもしれないが、その実態は何を聞いても〈音楽が大好きだから〉と答えるようなピュアな精神の持ち主であり、エゴイスティックではない。

なお、16才のときに書いたデビュー作“世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた”は、音楽の世界で生きていく為のレッスンに集中するべく、友達と遊ぶことも一緒に卒業式に出ることも叶わなかった日々の中で、その行き場のない寂しさや悔しさを吐き出した楽曲となっている。

「みんなあると思うんです。劣等感や孤独感に苦しんだり、繊細ゆえに挫けそうになってしまうことって、絶対に誰しもにあることじゃないですか。生きていれば、日常的に起きること。だからこの曲は自分に照らし合わせて聴いて貰えたらなと思います。」

「ただ純粋にいつまでも歌を好きでいたい。1年後もこの先も音楽を変わらずちゃんと好きでありたい――」安斉かれんはエイベックスの系譜を継ぐ者ではあるが、その精神性は決して模倣者でもない。ただただ〈純粋無垢〉な自身の想いを表現する者。このかつてない組み合わせのハイブリッド新人が新時代に何を残すのか。今から楽しみで仕方ない。