ZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESS。かねてよりお互いの作品を通じて共演を果たしてきたこの3者が新ユニット=FNCYを立ち上げたのが2018年夏のこと。以来、配信シングルのリリースを重ねてきた彼らが、結成から約1年を経てファースト・アルバム『FNCY』を完成させた。

FNCY FNCY EVIL LINE(2019)

 「RINAさんと鎮座さん、俺と鎮座さんではコラボレーションしていたんですけど、3人が揃ったのは俺の“SEVENTH HEAVEN”(ZEN-LA-ROCKの2017年作『HEAVEN』の収録曲)が初めてで。あの曲の評判が良かったし、あれがきっかけで、3人でイヴェントに誘われることも結構あったんです。1曲しか持っていないのに(笑)。そういう経緯もあって、〈グループを組んだらおもしろいんじゃない?〉くらいのノリから始まった感じです。だからコンセプトを話し合ったりはしていないんですけど、気が合うことはわかっていたし、漠然と音楽的に共有しているものも多くて。それを少しずつ形にしていきました」(ZEN-LA-ROCK)。

 80sブギーにアプローチした“SEVENTH HEAVEN”がユニットの出発点だったこともあり、本作は80~90年代の多様なスタイル――ニュー・ジャック・スウィングや初期ハウス、オールドスクール・ラップ、ブラコンといったサウンドに対するオマージュが散りばめられた内容に。そのヴァラエティーに富んだビートの上で、3者がそれぞれのリリックをラップし、歌う。FNCYは3MCのグループであり、この絶妙な3人の取り合わせから生み出されるグループ・ラップならではの掛け合いが新鮮に響く。

 「とりあえず誰かがちょっとだけ歌を入れてくれたら、自分が何かを返して。そこにまた誰かが被せてきたものに対して、じゃあ次はこう歌ってみようとか……そうやって反応し合っていると、曲が完成しちゃうんですよね、グループって」(鎮座DOPENESS)。

 「私はずっとソロでやっているので、そのお互いで反応し合うことが楽しかったです。どっちが良いのかなと思った時に、客観的な意見がもらえるというのも良かった」(G.RINA)。

 プロデュースには、FNCYとも共振する80~90年代志向のサウンドで人気のマイダス・ハッチや韓国のクルー・8Ball Townに所属するブロンズ、3人とも制作中に愛聴していたというBTB特効が参加。一方で、トラック全般の舵を握るG.RINAは、楽曲ごとにさまざまな実験を投入し、サウンドを飛躍させていったと語る。

 「例えば“Train”はヒップ・ハウスですけれど、ジャングルなどでも定番のビートの〈アーメン・ブレイク〉を使ったり、折衷を試みながらどうヒップホップを作るかという実験でもあるんです。そういうトライアルを1曲ごとにしていきました」(G.RINA)。

 幅広い音楽のアーカイヴを引用しながら、そこに大胆なアプローチを重ねてみせるFNCYはどこか神秘的で、これまでにないフレッシュネスを湛えている。かつ、そのオリジナルなフォルムのサウンドは、トラップ以降のラップ・ミュージックの最前線ともごく自然に接続する手触りも備えているのだ。

 「若い子たちのヒップホップも超好きだし、相容れるし、影響も受けている。そういう大人たちがここにきてグループを組んで、作品も出すってこと自体が相当ヒップホップだと思うんすよね。同じような感覚でやっている人たちは、どこを見回してもいないし」(鎮座DOPENESS)。

 「いまのヒップホップを聴きながら、キャリアを重ねてきた私たちが自分たちなりのフィルターを通して出来たものがこのアルバムということだと思います。狙ったものではないし、純粋にヒップホップの気持ち。3人ではヒップホップの話ばかりしてるしね(笑)」(G.RINA)。

 


FNCY
MC/シンガー・ソングライター/ビートメイカー/DJなど、それぞれが多岐に渡ってソロ活動を行ってきたZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESSから成るユニット。ZEN-LA-ROCKの2017年作『HEAVEN』に収録された“SEVENTH HEAVEN”での共演をきっかけに、2018年夏に結成。以降はライヴを重ねながら、“AOI夜”“silky”“今夜はmedicine”“DRVN'”という4枚のデジタル・シングルと、7インチ・シングル『AOI夜/silky』を発表。ほか、土岐麻子のリミックス盤『TOKI CHIC REMIX』にも“Fried Noodles”のリミックスで参加している。“Train”の先行配信に続き、このたびファースト・アルバム『FNCY』(EVIL LINE)をリリースしたばかり。