島根・出雲のレーベル、Local Visionsから松木美定のシングル『主観』がリリースされた。
松木美定(まつきびてい)は東京で活動するシンガー・ソングライター。彼のブログによれば、昨年、サキソフォニスト/トラックメイカーのmori_de_kurasuの活動に触発されて作曲を始めたのだという。〈松木美定〉というステージ・ネームは、〈高祖父の名前を音読みにしたもの〉だとか。
そんな彼が発表した『主観』は、3曲入りのシングル。1曲目の“シゴトップス”は、おそらく松木が初めて発表した曲だと思われるが、そんなことをまったく感じさせない優れたソングライティングにうならせられる。
ジャズ風の複雑な和声、巧みな譜割り、豊かなリズム――3曲に共通する要素から、北園みなみ(現・大沢建太郎)が“ざくろ”で登場した際の衝撃に似た感覚を覚える。本作はすでに崎山蒼志やimdkmといった耳の早い聴き手たちから称賛を受けており、誰かの変名なのではないかと疑ってしまうようなその完成度の高さから、〈趣味でシンガー・ソングライターをやっている〉という自己紹介すら疑ってしまうほどだ。
“主観”以外の2曲は楽譜がブログで公開されており、彼みずから無料で配布している。また、松木自身が描いているという、どこか鬼頭莫宏風のカヴァー・アートもユニーク。その独特な活動姿勢も実におもしろいと感じる。
松木美定の『主観』は、Local Visionsにとって5月にリリースしたi-flsのアルバム『not beautiful view』に続く新作だ。痛ましい事件に見舞われた京都アニメーションに支援金を寄付するなど、これまでと変わらない独立独歩のレーベルの活動に、これからも期待したい。