INTERVIEW

好奇心に従えば、自分の幅はもっと広がるはず――尾崎由香が語る、豪華作家陣と共に多彩な音楽性を『MIXED』した初アルバム

【特集:二次元以上。MIXED SUMMER】Pt.1

好奇心に従えば、自分の幅はもっと広がるはず――尾崎由香が語る、豪華作家陣と共に多彩な音楽性を『MIXED』した初アルバム

好奇心に従うことで、どんどん新たな領域へ

 TOKOTOKO(西沢さんP)、北川勝利(ROUND TABLE)、西寺郷太(NONA REEVES)、TAKAROT/FUNK UCH­INO、ミト(クラムボン)、沖井礼二(TWEEDEES)、Ryota Nozaki(Ja­zz­tronik)、40mP、buzzG、後藤康二(ck510)。このラインナップは、尾崎由香のファースト・アルバム『MIXED』に参加した作家陣だ。アニメ「けものフレンズ」のサーバル役など声優として活躍していた彼女は、昨年8月にNHK Eテレ「少年アシベGO! GO! ゴマちゃん」のオープニング・テーマとなったシングル“LET'S GO JUMP☆”でソロ・デビューし、12月にはドラマ「今夜、勝手に抱きしめてもいいですか?」のエンディングを飾った2枚目のシングル“オトシモノ”をリリース。ソロ・アーティストとして活動するにあたって、彼女は当初から「いろいろなタイプの楽曲を歌って、その色に染まりたい」という思いを抱いていたというが、ロック、ポップス、クラブ・ミュージック、ボカロ系など多様なフィールドのクリエイターが終結した『MIXED』は、旺盛な好奇心と共に幅広いジャンルの楽曲に挑戦してきた、最初の集大成と言えるだろう。

尾崎由香 MIXED ワーナー(2019)

 「以前からフェスに行くのが好きで、生のステージを観て好きになる音楽が多いんです。エレファントカシマシもそうで、フェスで初めて曲を聴いて、〈カッコイイ!〉って好きになって。ただ、自分がソロ・アーティストとして活動するにあたっては、自分が好きな感じの曲だけではなくて、普段は馴染みのないジャンルの曲にもどんどん挑戦して、それを吸収できたらいいなと思っているんです。もともと好奇心旺盛だし、例えば映画にしても旅行の行き先にしても、食わず嫌いしたくないんですよね。〈苦手かもしれないけど、思い切ってやってみよう〉という気持ちでいろんなものに触れることによって、自分の幅はもっともっと広がるはずだなって。そういう考え方は、今回のアルバムにも出ていると思います。まさにいろんな要素が〈MIXED〉されたアルバムですね」。

 日本のポップ・ミュージックにおいて確かな実績を積んできたクリエイターとの出会いは、シンガーとしての彼女のポテンシャルをさらに引き出した。例えば、チープシックなトラック、ラップを交えたメロディーラインがひとつになった西寺郷太による“恋のマメチシキ”、90年代の渋谷系を想起させるドリーミーかつアッパーな曲調がまさに沖井礼二製の“僕のタイムマシン”もそうだが、作家の個性が強く反映された楽曲とシンガー・尾崎由香のこれまでのキャリアを活かした表現力が融合することで、極めて魅力的なポップ・ケミストリーが成立しているのだ。

 「“恋のマメチシキ”のレコーディングのときは、西寺郷太さんに〈役を演じるように歌ってほしい〉と言われて。主人公は、自分の気持ちを上手く言えないけど、心のなかには強い気持ちを持っている文系女子。口ベタだから、言葉が絡まってラップになるんですけど(笑)、歌っていて楽しかったです。“僕のタイムマシン”はとてもお洒落な曲で、最初は〈大丈夫かな〉って不安だったんですけど、沖井さんに〈リラックスして歌うと良さが出ると思う〉と言ってもらって、肩の力を抜いて歌うことができました。沖井さんは私に〈僕〉と歌わせたかったみたいで。〈主人公になるのではなく、朗読するように歌ってほしい〉というディレクションでしたね」。

 

答えを見つけられるように

 『MIXED』は、その他の楽曲もそれぞれの個性に溢れている。TOKOTOKO(西沢さんP)が手掛けた1曲目の“ピュアで小悪魔”は、ホーンを取り入れた解放的なポップ・チューン。〈今日の私をピュアなんて呼ばないで/小悪魔してみたくて〉というフレーズは、彼女自身のリアルな思いとも重なっているという。

 「西沢さんPさんが私のことを調べて、イメージしながら作ってくれた曲ですね。私は〈おざぴゅあ〉という愛称で呼ばれることがあるんですけど、この曲のなかではちょっとした反抗心というか、〈ピュアなんて呼ばないで〉と歌っていて。私自身も年々、いい意味で自分のイメージを崩せたらいいなと思っているので、その気持ちに近い感じがあるかもしれないですね、この歌詞は。可愛いらしいところもあるので、歌いやすかったです」。

 Ryota Nozakiのペンによる洗練されたダンス・トラックと心地良く飛び跳ねるようなメロディーが印象的な“ice cream”は、自身が作詞を担当。〈あなたと一緒にアイスクリーム/もう何ていうか忘れたくないの〉という一節は、尾崎由香のパブリック・イメージに沿ったキュートさ、愛らしさをさらに増幅している。

 「アーティスト活動を始めたときから〈作詞もやってみようか〉という話をしていたので、アルバムの新曲でぜひやってみようと。歌詞はもちろん、日記も書かないので、〈どういう思いを歌詞にすればいいのかな?〉ってすごく模索しました。いろいろ考えたんですけど、〈カッコイイ〉と思われるような歌詞だったり、〈なるほど!〉と思われるようなものではなくて、自分が好きなものを〈好きだ〉と言える歌詞がいいなと思って。私、アイスクリームが大好きなんですよ(笑)。メロディーに言葉を乗せるのはすごく難しかったけど、〈アイスクリーム〉というワードがハマってからは2日くらいで出来ました。サウンドやメロディーがお洒落なので、歌詞の可愛さとのギャップを表現するのも大変でしたけど、愛着のある曲になりましたね。ライヴで歌うのはちょっと恥ずかしいかも。〈尾崎由香、こんなこと考えてるの?〉って思われるかなって(笑)」。

 さらに「疾走感があるロックな曲も歌いたかったから、この曲はピッタリでした。レコーディングのときもノリノリで、スタッフさんには〈いちばん声が出てる〉と言われましたね」というミトが書き下ろした“(you gave me...) My Brave Story”、「ソロ活動は〈ひとり〉でやるものですけど、ファンの皆さんに見守ってもらっていて。この曲の歌詞は私と応援してくれてる方々の関係を表しているし、聴いてくれる人の背中を押せるような曲だと思います」という後藤康二によるバラード・ナンバー“Dream On ~遠い日のあの空~”なども収録。こうした幅広いサウンドと、自身のキャラクターから派生した個性豊かな詞世界を歌で表現することによって、彼女はシンガーとしてのみずからのスタイルを掴みつつあるようだ。

 「最初は迷いがあったんです。これまではキャラクター・ソングを歌うことが多かったから、〈尾崎由香〉として歌うときのアプローチって何だろう?と考えて。それが、シングル、アルバムの制作を続けるなかでだんだん迷いがなくなってきて、いまは曲に対して〈こういうスタンスで歌おう〉と答えを見つけられるようになってきました。〈これが私の歌い方なんだな〉ということも何となくわかってきたし、レコーディングもすごく楽しくて。いい意味で遊べるようになってますね」。

 9月29日には東京・代官山SPACE ODDで初めてのソロ・ライヴも開催。「〈尾崎由香はライヴがいいよね〉と言われるようになりたい」と、彼女自身のモチベーションもさらに高まっている。

 「初めてのライヴなのでどうなるかわかりませんが、〈尾崎由香を観る〉というより、〈一体感があって楽しかった〉と感じてもらえるようなステージにしたいですね。思い切り動ける曲もあるので、まずはジムに通って、体力づくりから始めてます(笑)。今後は、やっぱりフェスにも出たいですね! 自分が観客として行ってたフェスに出られたら、感動して泣いちゃうかも。楽曲に関しても、さらにいろんなジャンルに挑戦したいです。エレカシさんのように、自分の強い思いを込めた熱量の高い曲もぜひ歌ってみたいです」。

尾崎由香の作品。

 


二次元以上。MIXED SUMMER
[ 特集 ]2019年の夏を彩るポップ・コレクション

★Pt.2 堀江由衣『文学少女の歌集』
★Pt.3 「戦姫絶唱シンフォギアXV」
★Pt.4 May'n“牙と翼”『YELL!!』
★Pt.5 今月の素敵音楽 from2Dao and more!

 

40周年プレイリスト
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