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MINAKEKKEの音楽がいま鳴るべき理由――『OBLIVION e.p.』を最速で解説

MINAKEKKE『OBLIVION e.p.』特集

MINAKEKKEの音楽がいま鳴るべき理由――『OBLIVION e.p.』を最速で解説

東京を拠点とするシンガー・ソングライター、MINAKEKKEがおよそ2年5か月ぶりとなる新作『OBLIVION e.p.』を9月25日(水)にリリースする。共同でプロデュースも手がけるマルチ・プレイヤーの橋本竜樹、堀正輝(ドラム)、内藤彩(ファゴット)といった前作『TINGLES』(2017年)から引き続くレコーディング・メンバーに加え、加賀谷綾太郎(ヴァイオリン&ヴィオラ)、関口将史(チェロ)、そして池田若菜(フルート)を新たに招き、サウンドのニュアンスがいっそう豊かになったことを感じられる一作だ。エンジニアリング面では葛西敏彦(録音・ミックス)、風間萌(マスタリング)が手掛け、ソングライティングや演奏のみならず、サウンド面のクォリティーもあいかわらず研ぎ澄まされている。

前作で印象的だったのは、弾き語りのフォーキーなサウンドを骨格としながらも、ダークさを湛えた豊かな残響や、力強く楽曲を推進させるビートだ。ここしばらくジャンルを問わずリヴァイヴァルが盛んなゴスやインダストリアルにも通じるタイトさとヘヴィーさ、そして耽美的な歌声や詞がつくりだす作品世界、どれをとってもまさにいま(というか当時)鳴るべき音楽、と思えた。

2019年現在から改めて振り返っても状況は変わらないばかりかむしろ追い風が吹いているかのようでもある。ゴスがポップ、ロック、ヒップホップ等々、さまざまなジャンルを貫く共通語彙となりつつあるからだ。日本で言えば2019年の春にリリースされたTHE NOVEMBERSの快作『ANGELS』も記憶に新しいところ。

加えて、〈フォークでクラウトでニューウェイヴでシューゲイズなプログレッシヴ・ゴシック〉という惹句をそのまま体現したかのようなサウンドの折衷性は、MINAKEKKEの作品をより興味深く響かせる。ここでは〈クラウトで……〉の部分が存外に重要で、ダンス・ミュージックにもインダストリアルなサウンドにも接続可能なクラウトロックの硬質さや疾走感こそ、MINAKEKKEの魅力をかたちづくっているように思う。

 

それだけに、『OBLIVION e.p.』への期待は否応なしに高まっていた。実際に作品に向き合ってみると、小品(EPですから)ながらこの期待に応えるだけの一作だった。

MINAKEKKE OBLIVION e.p. SUZAK MUSIC/IDEAL MUSIC LLC.(2019)

本作は、先行リリースされた冒頭のM1“Luminous”が鮮やかに示すように、サウンドのヴォキャブラリーを増やしていっそう楽曲はドラマチックに仕上がっている。とはいえ、単に手数を増やした足し算というわけでは決してなく、むしろ〈引くところは引く〉美意識も感じられる。前作を特徴づける、空間を埋め尽くすような残響のかわりに、サウンドの間が雄弁に作品の世界を語っている印象だ。

具体的に“Luminous”に耳を傾けてみると、重ねられたヴォーカルのフレーズとエレピ、そしてベースとドラムだけで展開するヴァースに対して、音の壁が現出するコーラスのカタルシスが素晴らしい。低域をふくよかに満たすベース(おそらくシンセベース)も心地よい。細かいポイントとしては、最初のコーラスを締めくくるタイミングで鳴らされるファットなベースの一音に心掴まれた。

M2“Acid”は、じりじりと鳴るノイズや音飛びのなか、ストリングスのヒットを中心に組み立てられたビートレスの楽曲。パーカッションとメロディーの中間のような音づかいがユニークだ。あえてザラついた質感を強調し、いびつさも覚えるような仕上がりが施されたサウンドも、前作とは対照的に思える。

M4“Golden Blue”は5分45秒とEP中もっとも長尺ながら、エレクトロニクスを基調としたドリーム・ポップからシューゲイザーへ、そして木管が加わるクライマックスまでドラマチックな展開に思わず惹き込まれる。M3“Young & Shame”と並んで、前作で披露したMINAKEKKEのカラーを引き継ぎつつ、着実な洗練を聴くことができる。

白眉なのは、M5“Oblivion”。エレクトロニクスと木管、そして歌声が絡み合うオープニングから、呪術的な(あるいはインダストリアルを想起させる)三連のドラムが響くサイケデリックなサウンドが登場し、楽曲全体がそのまま疾走感あふれるハンマービートへとモーフィングしていく様がとりわけ素晴らしい。パーカッシヴな木管の響きも含めて、最初期のクラフトワークを思い出すクライマックスだ。

そして、こうした音楽的な語彙の多様さをひとつの作品にまとめあげるMINAKEKKEの歌声と世界が持つ魅力は何者にも代えがたい。次の一作への飛躍を早くも期待したくなる一枚だ。

 


LIVE INFORMATION

MINAKEKKE『OBLIVION e.p.』リリース記念 ミニライブ&サイン会
10月6日(日)HMV立川
開演:15:00

FM802 30PARTY Eggs presents MINAMI WHEEL 2019
10月14日(月・祝)

★ライヴ情報の詳細はこちら

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