INTERVIEW

Serph × DÉ DÉ MOUSE――コラボEP『DREAMNAUTS』に吹いた清涼な風が、2人の鬼才を晴れやかに変えた

(左から)DÉ DÉ MOUSE、Serph
 

サンプリングや生楽器が織り成す緻密かつファンタジックなサウンドで多くの人を魅了する電子音楽界の魔術師、Serph。そして、印象的なカットアップ・ヴォイスをトレードマークに懐かしくも新しいダンス・ミュージックを生み出すクラブ・シーンの貴公子、DÉ DÉ MOUSE。お互い2000年代後半に注目を集め、鮮烈かつキャッチー極まりない作風によって、インストのエレクトロニック・ミュージックという分野の裾野を広げてきた両者が、2019年、ついにコラボレーションを開始。7月にリリースした配信シングル“Rainman”に続き、Serph & DÉ DÉ MOUSE名義によるコラボEP『DREAMNAUTS』を10月2日(水)にリリースする。

本EPには、2人の想像力が高次元で融合した美しくも力強い“Rainman”と幻想的に形を変えていくドリーミー・ブレイクビーツ“Ladyland”という2つのコラボ曲を収録。さらに、DÉ DÉ MOUSEの最新アルバム『be yourself』(2018年)表題曲をSerphがUKガラージ風に調理した“be yourself (Serph be higherself mix)”、逆にSerphの最新アルバム『Aerialist』(2018年)よりDÉ DÉ MOUSEがロウビートを当てがった“sparkle (DÉ DÉ MOUSE 滲む輝き mix)”という、お互いの楽曲のリミックスも実現している。加えてDÉ DÉ MOUSEが自身の代表曲“new town romancer”をリアレンジした“Newtown浪漫”、Serphが自身のプラネタリウム・ライヴの来場者特典のために制作した未発表曲“spica”が収められており、彼らの魅力を知るのに恰好の一枚と言えるだろう。

今回はそんな2人による対談を実施。出会いとコラボレーションのきっかけに始まり、それぞれの活動や音楽に対する考え方、共作を通じて気づくことのできた想いなどについて語ってくれた。これまでライヴなどの公の場では仮面を被って活動してきたSerphが、今回初めて素顔で登場したその理由を、ぜひ知ってほしい。

Serph & DÉ DÉ MOUSE DREAMNAUTS noble/not(2019)

近いようで会えていなかった2人

――そもそもお2人はいつ頃から交流があったんですか?

DÉ DÉ MOUSE「お会いしたのはすごく最近のことで。Serphさんが今年の2月にプラネタリウム・ライヴを開催されたんですけど、僕がそれを観に行ったときに紹介してもらったんです。で、僕が会った瞬間に〈一緒に曲を作りましょう!〉って言ったら、Serphさんも〈珠玉の一曲を作りましょう!〉と返してくれて。この出会いは運命だなと感じて、その場で打ち合わせの段取りも決めてしまったんです」

※2月8日にコニカミノルタプラネタリウム“天空” in東京スカイツリータウン(R)で開催されたイヴェント〈LIVE in the DARK〉
 
Serphのプラネタリウム・ライヴ〈LIVE in the DARK〉のダイジェスト映像
 

Serph「自分はデビュー前からデデさんのファンだったので、ライヴに来ていただいたこと自体が嬉しくて」

DÉ DÉ MOUSE「僕もずっと会いたかったから。僕がSerphさんのことを知ったのは2009年ぐらいなんだけど、その頃はMySpaceが盛んで、僕はポップでメロディアスなエレクトロニカを作る日本のアーティストを探してたんですよ。その流れでelegantdisc周りのものを聴いていたら、Serphさんの作品に出会った。そのあと、『vent』(2010年)を聴いた瞬間に抜きんでたものを感じたので、〈この人はどんな人なんだろう?〉って興味を持ったんです。そしたらあっという間に人気者になったので、ちょっと脅威を感じたりして(笑)。ただ、その頃のSerphさんはライヴをやってなかったので、なかなか出会う機会がなくて」

Serph「自分もデデさんの音楽は『sunset girls』(2008年)ぐらいの頃から聴いていました。声ネタの使い方が独特だったし、当時はいまみたいにポップなエレクトロニカのインスト作品が溢れてなかったので、すごいものに出会ったと感じましたね」

DE DE MOUSEの2008年作『sunset girls』収録曲“east end girl(keeps singing)”
 

――以前から近しいところにいながら、意外と接点はなかったんですね。

DÉ DÉ MOUSE「僕はなんだかんだでクラブとかフィジカルな現場を中心に活動してきたので、エレクトロニカのシーンとは近そうに見えて、実は大きな溝があったんです。エレクトロニカを好きな人は自分の家や生活のなかで音楽を聴く人が多いので、〈Serphは知ってるけどDÉ DÉ MOUSEは知らない〉という人が結構多くて。僕とはもう15年ぐらいの仲のworld's end girlfriendとSerphさんはレーベルのVirgin Babylonで繋がっているんですけど……」

――そういえばお2人とも、Virgin Babylon発のコンピ盤『ONE MINUTE OLDÉR - Virgin Babylon Records 5th Anniversary』(2015年)に楽曲を提供されていました。

Serph「こないだのミソシタのアルバム(2019年作『We are Virtual』)でも、お互い別の曲のアレンジで参加していて」

DÉ DÉ MOUSE「ニアミスはしてたんですけどね」

 

いま必要なのは団結を拒まない姿勢

――お互いの音楽について、どのような印象を抱いていますか?

DÉ DÉ MOUSE「僕はこうやって話もするようになったし、実際に一緒に曲を作って、音源のパラデータももらったけど、いまだにどうやって作ってるのかがわからないし、Serphの音楽は意味がわからないぐらい不思議なんですよ。きっと〈鶴の恩返し〉みたいに部屋にこもると悪魔みたいな姿に変わって、そこでアカシックレコードみたいなものを見ながらいろんなものを引っ張り出して作ってるんじゃないかなと思ってて(笑)。もうこの世のものじゃないし、この世の人ではないんですよ」

Serph「アハハ(笑)。確かに音楽をやってるときだけは、正気でなくなれるところがありますね。でも、僕からするとデデさんはダイレクトにファンと音楽を楽しむことができる人という印象があって、そこは自分との違いをすごく感じますね」

DÉ DÉ MOUSE「たぶんSerphさんは、自分のなかにちゃんとした世界があって、それを音にするタイプの人だと思うんです。ひたすら絵を描き続ける画家というか。僕はどちらかというと元々からっぽな人間で、憧れとか〈ちくしょう!〉という気持ちでがんばってる部分があるんですね。だから僕は外に出ていろいろ吸収するんです。例えば多摩川みたいに自分が好きな場所に何回も行くと、それまで見えなかったものが見えてきたりするから、それを自分のなかに入れて作品にする。ライヴを積極的にやってきたのも、僕は目の前の人が盛り上がっているのを見たときに得られる多幸感が強いからで。でも、Serphさんは外に刺激を受け取りに行く必要がない人というイメージなんですよ」

DÉ DÉ MOUSEの2018年作『be yourself』表題曲
 

Serph「これはそもそもの話になるんですけど、僕は感覚がすごく過敏で、物事を深刻に考えてしまう性質なので、知覚が広がり過ぎたことによる悪影響を受けずに生きていくために、いわばリハビリ的な意味で音楽を始めたんです。その結果、10年続けてこられて、それなりに音楽で人を喜ばせることができたと思うし、自分に自信も出てきて、頭を深刻に使いすぎる部分を音楽という器に凝縮させることでバランスが取れてきたんです。だからもう少し外に出ていきたいと思っていたタイミングで、ちょうどデデさんとの出会いがあって。本当に嬉しいことでしたね」

――それはSerphさんが近年ライヴ活動を活発に行うようになったからこそ生まれた出会いでもありますよね。

Serph「自分はいま38歳なんですけど、長生きしたところでせいぜいあと40年じゃないですか。それって僕にとっては短くて、年を取れば取るほど時間が経つのはあっという間だし、いつか消えてしまう、死んでしまうことが悔しいんですよね。だから後悔しないように、いまやれることはやっておこうと。そのやりたいことのなかには、1人の生身の人間として、ファンと音楽を通して高ぶりたいというのがあって。そこに大きな影響力をもって現れてくれたのがデデさんなんです」

Serphの2018年作『Aerialist』収録曲“sparkle”
 

DÉ DÉ MOUSE「嬉しい! 僕はあわよくばSerphさんの力を取り入れようと思って近づいた、汚いネズミなんですけど(笑)。でも、いまはアーティスト同士がいがみあう時代ではないと思うんですよ。昔は作曲サークルとかクラブで出会ったDJ同士の狭いコミュニティーがネット上にたくさんあって、みんながそれぞれの作品を互いに評価しあう感じがあったけど、ここ10年ぐらいは、自分だけ1人抜きんでようとするのではなくて、〈みんなでやろう!〉っていうクルー的な動きが強くなっている。日本もようやくコラボレーション文化みたいなものが一般的になったし、せっかくみんな楽しんで音楽を作ろうとしてるんだから、一緒に音楽を作ってお互いの存在をファンに知ってもらう試みがもっとたくさんあればいいなと思うんです」

――デデさんは今年6月にゲーム音楽の大家であるChip Tanaka(田中宏和)さんとのコラボEP『Pot of Peas』もリリースされていました。

DÉ DÉ MOUSE「日本のカルチャーというのはなかなか海外に届かなくて、評価してもらえるのはアニメとゲームが多いんです。だからいろんな国に〈これが日本の音楽カルチャーです〉というものを提示するためには団結する必要があると思うんです。そこは日本のクラブ・カルチャーやエレクトロニック・ミュージックの文化に足りないものだと思う。

僕らの世代でエレクトロニカを作っていた人というのは、孤独で他人と関わり合いを持たない、孤高の存在が多かったんですよ。僕もそれこそエイフェックス・ツインが好きで音楽を作ってる人とたくさん出会ってきたけど、そういう人は総じてあまり健全な性格をしていなくて(笑)。でもいまの日本の若い子はマジでクリーンだし、本当に音楽のことを真っ直ぐに考えてる。お酒もあまり好きじゃない子が多いし」

Serph「ナチュラルハイですよね」

DÉ DÉ MOUSE「だから、そのいい文化を取りまとめて海外に紹介するエージェントや組合みたいなものが必要だと思うんです。そのためにコラボレーションという手法は有効だと思うし、派閥とか音楽ジャンルとかは関係なく、トータルで日本のエレクトロニック・ミュージックを世界に届けていくきっかけのひとつになればという希望もあって。僕たち2人にとっても今回のコラボは、お互いのファンに知ってもらえるすごく大きなものだと思うし」

 

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