Photo by Makoto Ebi

セルジオ・メンデスも絶賛! ブラジルのミュージシャンズ・ミュージシャン~ギンガの美しいメロディ

 昨年4月の日本ツアーのとき、クラウド・ファウンディングでレコーディングしていったギタリストのギンガと歌手のモニカ・サウマーゾのアルバムがようやく流通しはじめた。正確にはこの二人にテコ・カルドーゾ、ナイロール・プロヴェッタという二人の管楽器奏者を加えたブラジルの4人のアルバムだ。

GUINGA,MONICA SALMASO,TECO CARDOSO,NAILOR PROVETA JAPAN TOUR 2019 MUSAS(2020)

 シンガー・ソングライターでもあるギンガの作る曲はどれも繊細な雲のようだ。くりかえしの多いフレーズから構成され、抑制がきいているが、メロディに浮遊感があり、終わり方も規則にとらわれない。どこか遠くまで航海して行って、戻れなくなった船のようだ。彼の音楽の前ではあれほど茫洋としたミルトン・ナシメントの音楽でさえすごくポップに思えてくる。それでいて少しも難解には感じさせない。

 冒頭の《タンガラ》はセルジオ・メンデスに捧げた曲で、彼も最新作『イン・ザ・キー・オブ・ジョイ』で取り上げている。ポップの極みというべき音楽をやり続けてきたセルジオ・メンデスにこんな曲を提供するギンガもギンガだが、受け入れる側も側だ。ま、両者のつきあいは28年前の『ブラジレイロ』からだから驚くべきことではないのだろう。懐が深いというか、先日セルジオ・メンデスに取材したらこう言っていた。「彼はミュージシャンズ・ミュージシャンで、ブラジルでも誰もが知っているわけじゃないけど、特別な、素晴らしい作曲家だ。以前、彼に『君の音楽は日本で受けると思う。日本人は君の音楽が好きだよ』って言ったら、不思議そうな顔をしていたが、そのとおりだろ?」

 モニカはアルトの声でうたいにくそうな曲をていねいにうたっている。曲によってギンガがリードを取り、あるいはコーラスをつける。管楽器の二人はフルートやクラリネットやサックスで静かにツボを押さえた演奏で加わる。ノイズ成分も品よく取り入れた室内楽的な演奏の中で、やはりセルジオ・メンデスがとりあげたことのある《エスコンジューロス》のような東北部風の曲がいいアクセントをつけている。