COLUMN

JOHN ELLIS & ANDY BRAGEN 『Mobro』

21世紀のジャズ・オペラ誕生

(C)Takehiko Tokiwa The Jazz Gallery NYC

 

 現代のニューヨークジャズ・シーンを支える重要な存在の、ジョン・エリス(ts,b-cl,vo)と、リブレット(音楽脚本)作者のアンディ・ブラゲンの3作目のコラボレーションの本作は、前2作同様にニューヨーク・ジャズの最前線の拠点“The Jazz Gallery”のコミッション・ワーク(委託作品)として2011年に発表され、大きな反響を巻き起こし、遂にアルバム化された。

JOHN ELLIS & ANDY BRAGEN Mobro Parade Light(2014)

 MOBROとは、Mobro 4000という、3,168トンのゴミを満載した運搬船で、タグボートに引かれて、ニューヨーク市近郊のロングアイランドを、1987年3月22日に、投棄先のノースキャロライナモアヘッド・シティに向けて出港した。しかしメタン・ガスが発生したために、投棄を拒否され、新たなる投棄先を模索して、中米ベリーズまで異例の航海をするが、どこにも受け入れられない。最終的には6,000マイルに及ぶ航海を経て、10月にブルックリンに帰投し、同地で焼却、出発地のロングアイランドで灰が埋められた。当時、様々な環境問題を提起した事件である。

【関連動画】ジョン・エリス&アンディ・ブラゲンによる2011年の公演「Mobro」
パフォーマンス&コメント映像

 

 アンディ・ブラゲンがゴミの視点から語る隠喩に満ちたストーリーを、若手シンガーのベッカ・スティーヴンスサシェル・ヴァンサンダーニジャナヤ・ケンドリックと、ウィントン・マルサリス(tp)のピューリツアー賞受賞作『Blood on the Fields』で主演を務めたマイルス・グリフィスが歌い上げ、9人の尖鋭的なプレイヤー達がジョン・エリスのアレンジで、あてのない、どこからも歓迎されない航海を、アンサンブル、インプロヴィゼーションが絶妙にブレンドされ、壮大なイメージで75分に渡って描いている。マイク・モレノライアン・スコットの2ギターのコントラスト、ギル・エヴァンス・オーケストラの中核を担った大ヴェテラン、ジョン・クラーク(horn)が、ホーン・アンサンブルに絶妙なスパイスを加える。21世紀のジャズ・オペラの誕生である。

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