バンド・スタイルでの活動を経て作り上げたソロとしての初作。旅するように重ねてきた人生を口ずさみながら、彼は見上げた空に何を見つけるのだろう?

人生は旅である

 小山田壮平が初のソロ・アルバム『THE TRAVELING LIFE』を発表する。2014年にandymoriが解散して以降は盟友の長澤知之らと結成したALでも活動する一方、自主レーベルのSparkling Recordsを設立し、2016年から弾き語りのツアーを開始。2018年にはライヴ会場限定CD『2018』を制作し、昨年は初のバンド・ツアーを成功させると、〈旅〉をテーマにみずからの人生観を綴ったアルバムを完成させた。

小山田壮平 『THE TRAVELING LIFE』 スピードスター(2020)

 「2018年にインドとネパールへ旅行に行ったときに、アジアを転々としながら生活をしている仲間たちと2週間くらい一緒に過ごして、彼らは人生が旅のようで、すごく羨ましいと思ったんです。でも、日本に帰って来てふと自分のことを考えると、日々出会いと別れがあるし、自分の心も移り変わっていて。もともと引っ越しが好きだから、2年の更新のたびに転々としていたし、去年の夏に17年過ごした東京を離れて、地元の福岡に戻ったりもしたから、そういう人生を振り返ると、自分も彼らと同じように旅をしてるようなものだなと思って。〈ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず〉っていう『方丈記』の一節はもともと自分の深い部分にあったし、旅先で書いた曲だけじゃなく、普段の生活のなかで出来た曲も入れることで、〈人生は旅である〉みたいな、ひとつの旅のようにいろいろな風景が現れる、鮮やかな作品ができるんじゃないかと思いました」。

 レコーディングには2019年のツアー・メンバーであり、2018年のインド・ネパール旅行にも同行していたというGateballersの濱野夏揶(ギター)と久富奈良(ドラムス)、〈あんまり主張はしないんだけど、やりたそうな雰囲気を出してた〉という藤原寛(ベース)が参加。よって、バンド録音の曲も多いのだが、本作はあくまでもソロ作であり、〈シンガー・ソングライター=小山田壮平〉の初めての作品とも言える。そこで、小山田が思う〈理想のシンガー・ソングライター・アルバム〉について訊いてみた。

 「長澤知之の『JUNK LIFE』、ジョン・レノンの『ジョンの魂』、あとはジョアンナ・ニューサムの『The Milk-Eyed Mender』とか(すべてファースト・アルバム)。〈1枚目のソロ・アルバム〉っていうのはあんまり意識しないようにしてたんですけど、でもタイトルに〈LIFE〉っていう言葉を使ったのは、自分の人生を表すようなものにしたいってどこかで思ってたんでしょうね。ただ、そっちに寄りすぎるのも自分のフィーリングとしては違うというか、単純に聴いて楽しいものでもあってほしくて、あんまり物々しくならないように、そこは考えましたね」。