緻密からはほど遠い脚本。 画面から滲み出る低予算。 監督本人が製作体制の不満を露わにし本作を「私の映画ではない」と言い出す始末なのだが、そんなマイナス要素満点の本作はブライアン・デ・パルマの8年ぶりの監督作なのである。 ヒッチコック! 分割画面! スローモーション! 音楽ピノ・ドナッジオ! 映画祭憎悪! という、いつものデ・パルマのサスペンス映画だが、89分というタイトな上映時間も手伝ってか、デ・パルマ節自体を堪能するには絶妙のバランスになっている奇跡。クライマックスの闘牛場のシークエンス! その馬鹿馬鹿しさに大笑いしつつ、デ・パルマの一途な欲望の発露にファンは号泣必至だ!