カメラマン/音楽ライターとしてロック・カルチャーにその名を残すクボケンこと久保憲司さんの連載〈久保憲司の音楽ライターもうやめます〉が、名前を〈クボケンの配信動画 千夜一夜〉と変えてリニューアル! Netflixなど配信動画サーヴィスが普及し、もはやすべての注目作を観ること自体が不可能な現在、寝る間を惜しんで映画やドラマを楽しんでいるというクボケンさんが、オススメ作品を解説してくれます。

1回目となる今回は、K-Popの人気アイドル・グループ、BLACKPINKのドキュメンタリー「BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~」を紹介。世界のポップ・シーンを席捲している4人が、生い立ちや練習生時代を振り返りつつ、これまでの軌跡を辿ります。華やかなステージの舞台裏までを映したドキュメンタリーに、「最近までK-Popには興味を持てなかったんです」というクボケンさんは何を感じたのでしょうか? *Mikiki編集部

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Netflixオリジナルドキュメンタリー「BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~」独占配信中
 

K-Popの躍進に〈内田裕也さんは正しかったのかな〉と思う

妻が韓国語まで勉強しだしているクボケンです。

日本のアイドルにも、なんですが、これまでK-Popには興味なかったんです。でもBLACKPINK、BTSの躍進はすごいものがありますね。日本はなぜ、こういうことができなかったのかと残念に思います。

円が360円の頃は、1ドル稼げば今の3倍の価値があったんです(70年代の頃です、いつの話や)。日本もフラワー・トラベリン・バンドとかが海外で売れることを考えてたんですけどね。そうやって起こったのが、はっぴいえんど対フラワー・トラベリン・バンドのプロデューサー・内田裕也さんによる、かの有名な〈日本語ロック論争〉だったわけです。

子供の頃の僕は、完全にはっぴいえんど派で、〈日本人なんだから日本語でやるべきだろ〉と思っていたんですが、BLACKPINK、BTSの活躍を見てると、裕也さんは正しかったのではないかと思います。その前にABBA、カーディガンズ、ハイヴスなどがいたわけで、どんだけ苦労しても本場でも通用する英語で歌っていくべきだったのかなと思います。

 

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BLACKPINKやBTSは2020年代のビートルズ?

もちろん韓国のマーケットは5,000万人しかなく、世界に打って出るしか方法はなかった。日本は1億人いて自分たちの国だけでもやっていけるマーケットがあったので、そんなに無理して海外で売れなくてもいいと思う土壌があったのも問題だったのかもしれません。CDもアメリカの3倍の値段で売ることができてましたし。

日本が貧しい時は、レコードなんて、特にロックなんか一部の人間しか買わないから、食っていくためには海外に出るしか道はなかったんだと思います。でもはっぴいえんどなんかの人たちが日本人を相手にした今はシティ・ポップと呼ばれる音楽を作り上げ、それはいつしかJ-Popと呼ばれるようになって、海外に出なくても日本のマーケットを相手にするだけで大金持ちになる人が出てくるようになった。もちろん、日本人も金持ちになってたくさんの人たちがCDを買うようになったのも大きな理由でしょう。そして今、日本は経済的に停滞してしまって、日本だけを相手にしていては食べていくのが大変な時代になっているんだと思います。

そんな中でも海外でも成功を収めたPerfume、BABYMETAL、X JAPAN、数々のヴィジュアル系バンドなど偉大なアーティストはたくさんいます、しかし、日本人独自のスタイルを作るのではなく、本当に欧米のR&B、ヒップホップの土壌で頑張っているK-Popの人を見ていると応援したくなるのです。この感覚って60年代のイギリスの人が、なかなか本国のミュージシャンがアメリカで成功できず、やっとビートルズがブレイクしたのを見ている感じがするのです。ビートルズの前にクリフ・リチャードが惨敗していて、彼らもアメリカで悲惨な目になることがわかっていたから、チャートで1位になるまではアメリカには行かないと宣言していたんです。

ビートルズがアメリカを制覇していく様子は記録フィルムに残っています。このBLACKPINKのドキュメンタリーはまさにそんな感じなんです。今のロック・バンドって、BTSやBLACKPINKみたいに楽しそうじゃないんですよね。ロック・バンドがアメリカで成功しそうな時って、もうイギリスとヨーロッパを何回も回って疲れ果てていて、メンバー同士も顔を見るのも嫌という状況になっているのですが、BLACKPINKは本当にメンバー同士が助け合っているようで、見ていて気持ちがいいです。

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