1894年11月13日、フランクフルトのシューマン邸で行われた、ブラームスのクラリネット・ソナタの私的な初演をCD上に再現したもので、歌曲のクラリネット編曲版やシューマンの作品も収録されている。吉田誠のクラリネットは、柔らかな音色の強弱や音の線の太さを絶妙にコントロールしながら、旋律を自在なイントネーションで表情豊かに歌わせており、その表現力は他に類例を見ないほど。しかもこれだけ個性的に振る舞いながら、音楽が自然に瑞々しく流れるのが素晴らしい。初演で作曲者が担ったピアノを弾く小菅優は、力強い技巧でクラリネットと五分に渡り合い、見事なコンビネーションを聴かせてくれる。