強靭で引き締まり、張り切った凛としたヴァイオリンの音色に圧倒された。バッハ『無伴奏ソナタとパルティータ』以来のヒラリー・ハーンのCDで、レーベルもDECCAから古巣のDGに復帰。『パリ』というタイトルから想像されるようなフランス音楽集とは一線を画し、この地で初演されたショーソン、プロコフィエフ、そしてハーンに捧げられたラウタヴァーラの作品を揃えた。世界初録音のラウタヴァーラ“2つのセレナード”が深淵な空気感で素晴らしい。これはプロコフィエフの協奏曲の第1楽章やショーソン“詩曲”の音楽にも通じ、ハーンの音楽の熟した深い呼吸の歌を堪能できる。円熟期に突入した今のハーンの姿を投影している。