©Bruce & Martha Karsh

祝50周年! 初の主演映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」が、ブルーレイになって画質・音質ともにグレード・アップ!

 ビートルズを英国の人気ロック・グループから世界的な文化アイコンに押し上げる大きな力となった64年の初主演映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」(旧邦題「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」)が、映像とサウンドトラックの両方を徹底的にリストア処理し、画質、音質が格段に向上したブルーレイで発売された。50周年でもあり、英米では再び劇場公開もされている。

THE BEATLES 『A HARD DAY’S NIGHT』 バップ(2014)

 前年に英国で人気爆発。その年には米国に初上陸し、その国を〈征服〉する怒涛の勢いを後押しするための企画であり、芸術的声明は二の次でもよかったはずだが、完成作品はそれまでの音楽界のスター主演の映画、例えばエルヴィス・プレスリーの一連の映画などはまったく異なり、それ以降の映画と音楽の結びつきに非常に大きな影響を及ぼす画期的な作品となった。それはリチャード・レスター監督の功績で、アイドル映画にもかかわらず、白黒で録った映像には、特に手持ちカメラの使用やジャンプカットなどの編集に仏ヌーヴェル・バーグからの影響が指摘される。この半世紀に本作に敬意を払ったり、パロディーにしたりした映像をあまりにたくさん観てきたのでわかりにくくなっているかもしれないが、この映画は本当に斬新だったのだ。

©Bruce & Martha Karsh

 その内容は、主役のビートルズがあまりに忙しく、準備の時間がほとんどとれないので、本格的劇映画の撮影は困難な状況ゆえの苦肉の策として、彼らの1日を追いかけるドキュメンタリー仕立ての劇映画、モッキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)のはしり的なものになった。もちろん映画や演劇の世界には舞台裏の内幕を描く〈バックステージもの〉がジャンルのひとつとしてあり、その流れを引き継ぐとも言えるが、大きな違いもひとつある。本作ではそれぞれのキャラが立った4人の素顔と思われるものを覗く楽しみに加え、ビートルマニアと呼ばれた熱狂的な一大現象を描いてもいるので、観客はそこに自分自身の姿も発見できたのだ。真の意味で60年代という変革の時代を始めさせた事件のひとつが本作の公開と言われるが、それは若者に自分たちが新しい世代を形成していると実感させ、連帯感をもたらしたからだ。

 この映画を見た男の子たちは髪の毛を切るのをやめ、バンドを始めた。既にフォーク・ブームでギターを手にしていた人は、映画内でジョージが弾いていたリッケンバッカーの12弦をすぐに購入したロジャー・マッギンのように、アコギをエレキに持ち替えた。2014年に本作を初めて観る現代の若者もそこに封じ込められているビートルズとその世代の若者たちのエネルギーに間違いなく特別なものを感じるはずだ。