〈伝説のバンドが復活〉と大きな話題をもって迎えられた第5期WANDS。約21年ぶりのオリジナルアルバム『BURN THE SECRET』をリリース後も第5期として着実に歩む中、ニューシングル『YURA YURA』がリリース決定! リリースにあたり、制作過程やバンドの在り方、心境の変化を上原大史、柴崎浩に聞いた。

WANDS 『YURA YURA』 D-GO(2021)


最初に聴こえてくるのは、〈気ままに YURA YURAと揺れながら/何も考えないでいよう〉というフレーズと、しなやかなグルーヴを感じさせるギター。冒頭10秒でグッと惹きつけられる、珠玉のロックナンバーだ。

WANDSからニューシングル『YURA YURA』が届けられた。表題曲“YURA YURA”は、TVアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマ。第5期WANDSと「名探偵コナン」のコラボは、『真っ赤なLip』(2020年1月)以来、2度目となる。

上原大史(ボーカル)「デモ音源を聴いたときから、すぐに〈めちゃカッコいい〉と思いましたね。派手さもあるし、しっとりした雰囲気と開放的な感じもあって。いろんな要素が散りばめられていてアニメの主題歌にも合いそうだなと思っていたら『名探偵コナン』のオープニングに決まって」

柴崎浩(ギター)「制作の段階では『名探偵コナン』の主題歌になることは決まってなくて、いつも通り、〈新しいことをやりたい〉という感じで作ってたんですよ。〈第5期WANDS〉がはじまってからまだ日も浅いし、自分たちも新鮮に感じる楽曲を届けていきたいので。上原のボーカルの表現も、ほんの少ししか出せてない気がするんですよね」

高度なテクニックとインパクトのある音像を共存させたギタープレイも素晴らしいが、“YURA YURA”の軸を担っているのはやはり、上原のボーカリゼーション。叙情的な手触り、ギラっと光る攻撃性、さらに官能的な雰囲気も漂わせる歌声からは、シンガーとしてのさらなる進化が伝わってくる。

上原「ようやく自分を出せるようになってきたのかなと。第5期の最初の頃は、〈WANDSが復活して、新しいボーカルになって。どんな感じだろう?〉と注目してもらってるのはわかっていたし、プレッシャーも感じていて。今振り返ってみると、正解がわからないままレコーディングに入ったところもあったんですよね。(歌に対する意識が)変わってきたきっかけは、〈JAPAN JAM〉(今年5月に行われたフェス)に出演させてもらったこと。開放的なステージで気持ちよく歌えたし、あとで映像を観返してみると、〈色濃く自分が出てるな〉と思ったんですよね」

柴崎「確かに“YURA YURA”のボーカルテイクは、かなり思い切りがいいですね。上原自身の表現が感じられてよかったです」

“YURA YURA”の作詞は、上原が担当。〈行き場のない絶望や涙〉、〈突き刺す劣等感〉というフレーズを散りばめつつも、大切な人とともに人生を歩んでいきたいという思いを描いた歌詞には、彼自身のリアルな感情も反映されているという。

上原「Aメロはあまりハッピーではない雰囲気で、サビに入った瞬間に開けて。そのニュアンスに合う歌詞を書きたかったんですよね。ちょうど自分もモヤモヤを抱えていた時期だったので、そういう気分を重ねているところもあります。歌詞を書くことで、自分の状況を客観的に捉えられることもあって。落ち込むような出来事があっても、いい歌詞が書けたら、〈あの経験も必要だったのかも〉と思えるんですよね」

さらに“Jumpin’ Jack Boy [WANDS第5期ver.]”(通常盤)、“MILLION MILES AWAY [WANDS第5期ver.]”(名探偵コナン盤)も収録。セルフカバーにおいても、第5期WANDSの表現の幅は確実に広がっているようだ。

柴崎「セルフカバーに関しては、〈原曲の雰囲気を残す〉と〈新しい感じがほしい〉のバランスが大事だと思っていて。“Jumpin’ Jack Boy”はオリジナルのイントロをなくして、アウトロに持ってくるという結論に至りました。“MILLION MILES AWAY”は基本的なアレンジはそのままで、音の質感を今の時代に合うように変えてます」

上原「セルフカバーでも、ちょっとずつ自分らしく歌えるようになってきたのかなと。原曲を超えることはできないし、マネもできない。だとしたら、他の人ができないこと、俺にしかやれないことで勝負するしかないので」

復活後初のアルバム『BURN THE SECRET』が各ランキングで上位に入り、前作シングル『カナリア鳴いた頃に』もスマッシュヒット。「名探偵コナン」と再びタッグを組んだ“YURA YURA”によって、第5期WANDSの存在感はさらに強まることになりそうだ。

上原「〈伝説のバンドが復活〉という盛り上がりも落ち着いてきて、これからは第5期WANDSの本当の実力が試されることになると思っています。ボーカリストとしてできることをさらに追求していきたいですね」

柴崎「90年代から応援してくださってる方が多いと思いますが、もっと広げたいですね。そういえばTwitterで〈名探偵コナンのオープニングいいな。WANDSっていうのか〕という人がいたんですよ。オリジナル曲をさらに増やして、今のWANDSを伝えていきたいですね」