革新的な存在感をシーンに刻んだブライトンの5人組がセカンド・アルバムを完成――環境を反映して自然体のままダイナミックに進化したサウンドの力強さはどうだ!

 UKシーンにおけるフレッシュな新進バンドたちの同時多発的な躍進が、批評家層や高感度なリスナーだけでなくコマーシャルなチャートをも賑わせたのは2021年のこと。そして、彼らの〈次の一手〉が昨年から今年にかけての数々の実りに繋がっているわけだ。そんな昨今の流れにおいて、2015年にブライトンで結成された5人組、スクイッドが最注目株のひとつであることは言うまでもない。高い前評判を裏切らなかった2021年のファースト・アルバム『Bright Green Field』は全英4位を記録し、2022年にはグラストンベリーにも出演。現在のUKシーンにおいて一定の地位を確立した彼らが、待望のセカンド・アルバム『O Monolith』をついに完成させた。ただ、その曲作りは、前作のレコーディングが終わった時点で早くもスタートしていたのだという。

 「ブリストルの小さなレコーディング・スタジオでほとんどの曲を書いた。その後すぐにツアーに出たりもしたから、1年くらいはかかったかな。記憶が定かじゃないけど、ファースト・アルバムのレコーディングが終わってすぐに新しい曲を書きはじめたのは事実だ」(オリー・ジャッジ、ドラムス/ヴォーカル)。

 「いくつかのアイデアはパッと閃いたものの、制作には本当に時間がかかった。ファースト・アルバムの時は自分たちが持っているすべてを入れて、今回はもっとたくさん曲があったけど、あえて収録しなかったものもある。というのも、今回はアルバムを〈簡潔なもの〉にしたかったんだ」(アーサー・レッドベター、キーボード/パーカッション/ヴァイオリン)。

SQUID 『O Monolith』 Warp/BEAT(2023)

 そうしたアイデアを楽曲の形へ整えていく場となったのは、それこそ『Bright Green Field』のリリース・ツアーだった。観客たちを前にしての演奏は、バンドにとって制作中の楽曲を試す良い機会になったというわけだ。

 「あのツアーがなければ、これらの楽曲は生まれなかった。オーディエンスはライヴをすごく楽しみにしていたから、どんな曲でも、たとえ未完成の状態でも演奏していいって思えたんだ。まだほとんど歌詞がない状態で、『O Monolith』の楽曲は80%くらいをどうにか演奏していった」(オリー)。

 レコーディングはウィルトシャーにあるピーター・ガブリエル所有のリアル・ワールド・スタジオで昨年4月に約2週間かけて行われた後、引き続きプロデュースを担うダン・キャリーのスタジオで仕上げられた。ミキシングはジョン・マッケンタイアが担当。エレクトロニックな導入からバンド・サウンドへ流れ込む冒頭の“Swing (In A Dream)”や、フォーク基調のパートから破壊的なパートへ至る“Devil’s Den”に顕著なように、今回は曲中にいくつもの展開が用意され、その場面転換を演出すべくパーカッション奏者のザンズ・ダガン、ヘンリー・テレット(ビンゴ・フューリーのドラマー)ら外部ミュージシャンも招かれている。ダンサブルな“Undergrowth”や大仰な“After The Flash”ではリアル・ワールドのロジャー・ボルトンによってフェアライトが導入。後者では前作の“Narrator”に続いてマーサ・スカイ・マーフィが歌い、オリーのパートナーだというナタリー・ホワイトランド(マイナー・コンフリクト)もハープを演奏する。さらに躍動的な終曲の“If You Had Seen The Bull’s Swimming Attempts You Would Have Stayed Away”にはシャーズのコーラスもフィーチャー。ノイ!やディス・ヒートを引き合いに出された登場時から比べれば目まぐるしい新展開にも思えるが、本人たちはこのように説明する。

 「時に人々は僕らのスタート地点を“The Dial”(2018年)と見る。でも僕らはそれ以前のバンド結成時をスタート地点としているから、そこからの積み重ねがあって現在がある。僕らのバンドは常に進化していて、いま通り抜けようとしている段階は新しい出発点というわけではなく、どちらかというと原点回帰に近いと思う。そういう意味では昔いた場所からそう遠くないところにいると言える」(アーサー)。

 「うん、僕らはいま、2015年にブライトンの小さなヴェニューでプレイしていたところに、当時よりももっと経験を積んで戻っている。そしてそれはとても良いことだと思う」(オリー)。

左から、スクイッドの2021年作『Bright Green Field』(Warp)、シャーズの2019年作『Find Sound』(Erased Tapes)、ビンゴ・フューリーの2021年のシングル“Big Rain”(Ra-Ra-Rok)