チカーノ・バットマン、エル・ミシェルズ・アフェア、79.5に参加していた女性シンガーたちが結成したNYのファンク・バンド。そう聞いただけで、現行のヴィンテージ・ソウル・ファンは色めき立ってしまう。2022年リリースのファースト・アルバム『Prism』で注目を浴びた彼女たちが、このたび矢継ぎ早にセカンド・アルバム『Silver』を送り届けてくれた。エル・ミシェルズ・アフェアのレオン・ミシェルズに重用されていたインド系イギリス人シンガー、ピヤ・マリクによるエキゾチックなヴォーカルを中心に、元79.5の黒人シンガー、ナイア・ガゼル・ブラウン、クラシックの素養も高い白人シンガー、サブリナ・ミレオ・カニンガムの歌唱が作り出すクロスオーヴァーなハーモニーを、4人編成のバンドがソウルフルにバックアップ。新作『Silver』は全16曲を収録。彼女たちのクリエイティヴィティーが溢れ出すままに音源に記録されていると感じた。UKツアー中の3人に行ったインタヴューでも、彼女たちの率直さが言葉の端々に滲み出ている。

 「3人の出自の違いは、間違いなくこのサウンドの核になっている。パッチワークのような美しさを生み出していると思う」(サブリナ・ミレオ・カニンガム)。

 「幼い頃は、家にあった古いボリウッドのレコードや、ラタ・マンゲシュカルなどインドの素晴らしい歌手の歌を繰り返し聴いていたわ。そのおかげで、自分のルーツと繋がることができたし、学校でみんながクールだって言っているやり方とは違う歌い方で自分の自由を掴みとることができた。レオン・ミシェルズと一緒にいた数年間の経験も大きかった。それは不完全であることを表現に採り入れていくってことかな。彼との仕事を通じて、私も古いレコードが好きになったし」(ピヤ・マリク)。

 「母がドライブ中に聴きながら歌っていたアレサ・フランクリンやアル・グリーンなど多くのヴィンテージ・ソウルを通じて、音楽が人をいい気分にさせる力を私も理解したんだと思う」(ナイア・ガゼル・ブラウン)。

 コロナ禍でかなりの部分をリモート環境で制作せざるを得なかった『Prism』とは違い、バンドと一緒にスタジオ入りすることで得られるアクティヴな発想が、アルバムを質量共に高めた。レコーディングでも彼女たちはアナログ・テープを使うことにこだわったそうだ。彼女たちが考える〈2023年のヴィンテージ〉という感覚はどんなものなのか。

 「いまは、新しい音楽と古い音楽を同じプレイリストで一緒に聴くことができるし、多くの古い録音に簡単にアクセスできるようになった。それはとてもいいこと。でも、私は〈ヴィンテージ〉や〈レトロ〉をジャンルとしてではなく、リスナー一人一人によって違う主観的な解釈だと考えている。アナログ録音をしているから、古さにこだわってると思われるのかもしれないけどね」(ピヤ)。

SAY SHE SHE 『Silver』 Karma Chief/Pヴァイン(2023)

 実際、彼女たちは過去を懐かしむのではなく、〈いま〉を向いている。2022年の夏にDJたちの間で話題になり、晴れて新作に収録されたシングル“Forget Me Not”のMVでは、NYの街にメッセージを貼りまくるゲリラのような演出が行われていた。自分たちの音楽が現代に向き合ったソーシャルかつポリティカルなものであることも彼女たちは恐れていない。60年代や70年代の流行を採り入れているのではなく、むしろ音楽が世界を変えようとしていた時代の気骨と連帯しているのだ。

 「私が大好きなレイモンド・ウィリアムズ(アメリカの評論家)の言葉に〈真にラディカルであることは、絶望を信じ込むのではなく、希望を可能にすることだ〉というのがあるの。私たちの作品にシリアスなメッセージが込められているとしても、みんなが聴いて楽しみ、前を向いて生きられるための音楽であるようにベストを尽くさないとね」(サブリナ)。

 


セイ・シー・シー
エル・ミシェルズ・アフェアのピヤ・マリク、サブリナ・ミレオ・カニンガム、ナイア・ガゼル・ブラウンという3人のヴォーカリストが率いるソウル・バンド。ダップ・キングスやオルゴンといったバンドに関わるメンバーがバックを務めている。2022年5月にカーマ・チーフからファースト・シングル『Forget Me Not / Blow My Mind』をリリースし、同年の10月にファースト・アルバム『Prism』を発表。セカンド・アルバム『Silver』(Karma Chief/Pヴァイン)を10月18日にリリースする。