©Francis Fuego

多彩な活動で注目を集める俊英のセカンド・アルバム

 弓をとってはバッハのコラールのピアノ・トリオ版で堅実に存在感をしめし、ツマミを捻っては硬質なノイズを放つ多楽器奏者にして、演奏のみならず音楽祭やアート・プロジェクトなどの企画、制作にも積極的にかかわる英国のチェロ奏者の2作目のソロ。リリースはファーストと同じく、アンディ・ストットやデムダイク・ステアら、ダークなサウンドを旨とするマンチェスターの電子音楽レーベルで、近年は米国のダウンタウン系の作曲家メアリー・ジェーン・リーチの新作も手がけるなど、エレクトロニック・ミュージックとクラシカルな領域との往来に余念がない。本稿に述べるルーシー・レイルトンはその傾向を一身に体現する自在な越境者であり、エレクトロアコースティックの今日的展開ともいえる書法の一端はファースト『Paradise 94』に端的にまとまったが、本作においてそのフォルムはさらにいっそうひきしまっている。

LUCY RAILTON 『Corner Dance』 Modern Love(2023)

 ゆったりした弓のかえしによるドローンや抑制的な単音をつまびきながら注意深く聴き入るような作風は、キット・ダウンズやローレル・ヘイローとの共作でつちかった、音による他者との関係を彼女自身の内におりかえすかのごとき趣き。一方で、楽曲は周到な構造化をほどこしてあって、響きひとつとっても、擦弦音の変調やモートン・サボトニックの代名詞ブックラシンセの特長的なサウンドなどをきわめて効果的な配置しているのがわかる。8曲40分のどこにも弛緩する気配はないが、音響空間に緊張感みなぎる表題曲からはじめてのヴァイオリンの披露だという“Held In Paradise”、つづくモーター音のようなドローンたなびく“Rib Cage”から一転、にじみだす“Standing Cadence”の寡黙な美しさは特筆すべきであろう。それがゆえにその後におとずれる“Something In The Heavens”の不動と“Blush Study”の動の対比がきわだってくる。後者の声の使い方は次作以降への布石ともうつるがどうだろうか。