ワクワクしながら読み切った。これは仙台フィルの50年の歩みにつき、地元紙記者が約190人への綿密な取材に基づき、さらに50年遡ったその前史から描き上げた〈大河小説〉である。大正中期に始まる仙台のオーケストラ運動は志をもった音楽家たちにより創設と挫折を繰り返してきた。1973年に宮城フィルとして創設された仙台フィルも、幾度も苦境に陥った。しかし、火を絶やすまいとする楽員たちの熱意、演奏力の向上に力を尽くした福村芳一、芥川也寸志、外山雄三ら歴代指揮者たち、地元の音楽ファンと企業、自治体の支援により困難を乗り越え、遂に東北の音楽文化を象徴する存在として定着した物語は実に感動的だ!