100年以上の歴史を持つハンガリーの古豪オケ、コンチェルト・ブダペストを飛躍的に押し上げたケラー。自ら結成したケラー四重奏団はEratoやECMの諸盤で名高い。指揮者としての才腕も職人的、自家薬籠と言える弦の室内楽的テクスチュアの表出を堪能するのにブルックナーの第7番はまさに好適。しかも、修正前と修正後、2種の音源で比較するという、良質な高音質録音を輩出してきた独Tacetによる興味深い趣向。パッチアップも反映し仕上げられた修正後の演奏で清澄極まる純音楽的アプローチを感得する一方、綻びも若干ありつつ修正前の洗いざらしのような率直な響きに魅かれるのがまた一興だ。