スティーヴン・パーキンス

プロのジャズピアニストであり、メタラーでもある西山瞳さんのメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、2024年3月15日(金)に公開されるドラマーたちのドキュメンタリー映画「COUNT ME IN 魂のリズム」について。映画の感想を通じてドラムという楽器、ドラマーという人々、リズムやビートといった音楽要素に西山さんが迫りました。 *Mikiki編集部

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予告映像を見てから、これは絶対に観たいと思っていた映画「COUNT ME IN 魂のリズム」を、一足先に拝見しました。

ドラマーだけでなく音楽を愛する全ての人に見て欲しい、素晴らしいドキュメンタリー映画でした。

 

〈音楽の三要素〉は〈リズム、メロディ、ハーモニー〉ですが、〈メロディ、リズム、ハーモニー〉じゃだめなんです。〈リズム〉がまず第一

人を鼓舞するために、まずは太鼓を叩き、リズムを作る。

そこから同じ言葉を皆で発声し、抑揚をつけて唱和し、メロディーになっていく。

そのメロディが複数になり、ハーモニーになっていく。

ドラム=リズムを司る楽器は、一番プリミティブな楽器であり、律動として直接フィジカルに作用するものです。御託はいらない。ただ良いビートを作り、身を委ねるだけ。それは、音楽においてとても原初的な行為であり、神秘的ですらあります。

 

ロジャー・テイラー

「COUNT ME IN 魂のリズム」は、そんなリズムを司るドラマーという人たちについての、イギリス制作のドキュメンタリー映画です。

ロックバンドの華々しいドラマーが19人登場し、ドラムを始めた子供時代の話や、憧れのレジェンドについて、ドラムを叩いていてどういう喜びがあるのか、それぞれのドラミング同様にとても躍動感のある話が繰り広げられます。

登場するドラマーは、
イアン・ペイス(ディープ・パープル)
ニック・メイスン(ピンク・フロイド)
ロジャー・テイラー(クイーン)
スチュワート・コープランド(ポリス)
トッパー・ヒードン(ザ・クラッシュ)
ニコ・マクブレイン(アイアン・メイデン)
チャド・スミス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)
など。

名前を見ただけで、この映画、観たくなりますよね。

 

ドラムサークル

映画は、ドラムサークルから始まります。

ドラムサークルとは、皆で輪になって打楽器を叩くもので、私は参加したことはないですが、知り合いのミュージシャンがシェアするドラムサークルのイベント案内を、時々見かけることがあります。

サークルといっても、メンバーが固定される〈会〉という意味ではなく、物理的に輪になったり集合して、大勢で打楽器を即興で叩いていくもの。

ただ一緒に音を重ねることで、ビートと人間が繋がっていく、音楽以前にグルーヴを共有する喜びを感じる体験会とでもいうもので、この映画がドラムサークルから始まる時点で、伝えたいことは〈音楽〉以前の〈叩くということ〉〈体験〉〈ビートを紡ぐこと〉〈人と人でグルーヴを共有すること〉なのだと、わかります。

スティーヴン・パーキンス(ジェーンズ・アディクション)がドラムサークルの活動をやっているとは、知りませんでした。映画を見た後で、少し検索してみたら、こんな可愛い野外の映像もありました。