映画音楽史そのもの!

 ユニバーサルからサントラの名盤の数々が〈サントラ・キャンペーン2024〉としてリリース。バラエティに富んだラインナップで、これだけで映画音楽の歴史を俯瞰できるような充実した内容だ。例えばジョン・バリーが手掛けた〈007シリーズ〉(「ドクター・ノオ」から「ダイアモンドは永遠に」まで)。ニーノ・ロータ「ゴッドファーザー」。エンニオ・モリコーネ「続・夕陽のガンマン」といった古典的名作からは、映画音楽作曲家の黄金時代を堪能できる。ミュージカル作品も新旧織り交ぜてタイトルが並んでいるが、そんななかで「ロシュフォールの恋人たち」と、本作に影響を受けた「ラ・ラ・ランド」と聴き比べてみるのも面白いだろう。また、80年代以降、コンピレーション形式のサントラが人気になっていくが、そのルーツともいえる「アメリカン・グラフィティ」と90年代に大ヒットした「パルプ・フィクション」を聴き比べると、そこにDJ的な視点が共通してあることがわかったりもする。

 60年代以降、若者文化が映画に影響を与えるようになり、映画音楽をポップ・ミュージックの作曲家/アーティストが手がけるようになっていくが、そうした時代の移り変わりのを感じさせるのがバート・バカラックが手掛けた「明日に向って撃て!」であり、セルジュ・ゲスブールによる「アンナ」「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」といった作品だ。また、ヴァンゲリス「炎のランナー」、タンジェリン・ドリーム「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」といったプログレのアーティストによるシンセサイザーを使ったサントラも映画音楽に影響を与えた。そうしたなかで、ポップ・ミュージックの世界でデビューして、今では映画音楽の作曲家として高い評価を得ているのがマイケル・ナイマンだ。

 クラシカルな音楽をモダンなアプローチで聞かせて注目を集めたナイマンが、映画音楽の作曲家として知られるきっかけになったのは「英国式殺人事件」「数に溺れて」「コックと泥棒、その妻と愛人」といったピーター・グリーナウェイ監督のコラボレーションを通じてのこと。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品「ピアノ・レッスン」のサントラは全世界で大ヒットを記録した。3月には特集上映〈ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師〉。そして、「ピアノ・レッスン」の4Kデジタルリマスター版上映が予定されていることもあり(※2024年3月22日より上映中)、今回のキャンペーンはナイマンの音楽の魅力に改めて触れられる絶好の機会といえるかもしれない。