もちろん第1部での高揚も素晴らしい。加えて第2部、独唱と合唱の敬虔な交唱の中でさざなみ、波紋の広がりのように弦管が紡ぐ美しいテクスチュア。とりわけ感銘深かったのは、佳境でキャロリン・サンプソンが幽明の深みをもって天上からたゆたい歌う栄光の聖母だった(トラック23)。その短くも永遠の高みへの導きに魅入られて歌うマリア崇拝の博士。オケと声楽を束ね、ヴァンスカが音楽の長大なうねりを波及させ合いながら絶やすことなく精妙に築き上げる“神秘の合唱”への道程は祈りの様相を帯びて実に美しい。ここにきてのマーラー・ツィクルスのさらなる充実ぶりは極まった感がある。残す第3番の登場が待ち遠しい。